ただ、今回の話を書きたくて、第二部を書き始めたとも言えます。
拳と剣を交える。
言葉すら混じらない、純粋な技比べ、力比べ。
集中する。…集中しているはずなのに、心が深く、深く潜っていくように感じる。
…そうだ。かつて、こんな風に拳を交わした。
そこには、殺意も、敵意も、なんの邪気もない、ただ純粋に、高みを望んで…
ああ、それは亡くした記憶だ。忘れ去った過去だ。
…違うな…
…ただ、思い出したくなかったんだ…
「鬼を配置した覚えの無い場所で、鬼が出たとの大騒ぎ。わざわざ出向いて来てみれば…ただの人間とはな。何ともつまらぬ」
潜る、潜る…
「誰かが井戸に毒を入れた…!! ……さんやお前とは直接やり合っても勝てないから、あいつら酷い真似を」
潜る、潜る、潜る…
「お前がまた捕まったって聞いて、親父さんが首括って死んじまった。死んじまったよォ!!」
…ああ、やっぱりろくなもんじゃないな…
こんな世の中は糞くらえだ。どいつもこいつもくたばっちまえ。
「お前、筋がいいなあ。大人相手に武器も取らず勝つなんてよ、気持ちのいい奴だなあ」
誰だコイツは…俺は何を見てる? 俺の記憶なのか?
「罪人のお前は先刻ボコボコにしてやっつけたから、大丈夫だ!」
…炎の呼吸 肆ノ型 盛炎のうねり(せいえんのうねり)…
…破壊殺 乱式…
ああ、少し似ているな。きっかけは、お前か? …いや、違うよな。
…何かあっても、俺が必ず守ってやるさ…
…俺は誰よりも強くなって、一生あなたを守ります…
…口先ばかりで、何一つ成し遂げられなかった。
何ともまあ、惨めで、滑稽で、つまらない話だ。
…炎の呼吸 壱ノ型 不知火(しらぬい)…
…鈴割り(すずわり)…
パキィン…
「…何もかも失くしたのに、また性懲りも無く、守りたいものができたんだ。
…全然似ていないんだけど、笑った顔だけは、ちょっとだけ似ているんだよ。
……恋雪」
「…見事だ!」
どちらの命にも届いていない。ただ刀が折れただけ。…それでも、これで決着。
「あっ、かっ、ざっ、しゃまーーー!!!」
突如現れては、しがみついてくる。
「ふへへへへーーー」
「…しょうがないやつだな」
「…煉獄さん」
「おおっ、胡蝶か! やっぱり生きていたか!」
零余子と一緒に来たのであろう、蟲柱の女が杏寿郎に声をかけていた。
「…やっぱり、とは?」
「…なんとも言葉にしにくいのだが、なんとなくそう思ったのだ!」
はっはっはと、杏寿郎がカラリと笑う。
…どうだろうか? …慶蔵さんに、似ているようで、そうでもないような…
「…上弦の零がまだポンコツなので、私から説明します」
「そうだな、ありがたいぞ!」
「…今の鬼殺隊が潰れてしまった後に、新しい鬼殺隊を作ります。今の鬼殺隊と違うところは…
…悪い鬼だけを倒す組織になります」
「ほう!」
「…正直、どうなるのかはまだ全然わかりません。ですから、煉獄さんにも手伝って欲しいです」
何か吹っ切れたのか、ずいぶんとぶっちゃけた発言だ。
「うむ! 弱き者を助けると言うならば、力を貸そうとも!」
「はい! それだけは、間違いありません」
「ふひひひひ…」
こいつは、本当にすごいな。ポンコツなのに、いろいろと変わっていく…変えていく力がある。
見詰めていると、こちらを見返してきた。
…そして、ゆっくりと微笑んで…
「…お疲れ様でした。……狛治さん」
「…!!!! …ああ、ありがとうな」
猗窩座様に、幸せになって欲しかったんだなあ。
零余子日記の、メインヒロインですからねw