「がああああぁぁぁぁーーー!!!」
魅了の暴走をさせると、その瞬間に奇声を発することが多い。
脳内のスイッチを切り替える証なのだろうか、割と興味深い。
「さて、初手はどうくるかな?」
獪岳は大きく咆哮を上げるように奇声を発した後、脱力したように前方へと倒れ込んで…
…雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃(へきれきいっせん)…
ガキィィーン!!
「……いきなり来たね」
頸を狙って来た日輪刀を、こちらの日輪刀で受け止める。
「なんだいなんだい、あっさり使えるようになってるじゃん」
ギリギリとつばぜり合いをしながら、獪岳にそう声をかける。もちろん、それに応えられはしないんだけど…
…雷の呼吸 参ノ型 聚蚊成雷(しゅうぶんせいらい)…
互いに回り込もうと、日輪刀を打ち合いながら、その中心を入れ替えながら、回転を繰り返す。
この辺の流れは、前回の時と同じだ。
前と違うのは、獪岳のリズムが格段にスムーズに、速く、静かになっていることだ。
「いいじゃん、いいじゃん!」
…雷の呼吸 陸ノ型 電轟雷轟(でんごうらいごう)…
更に、更に、更に! どんどんと回転が上がってくる。
こちらは血鬼術による底上げで、反射速度と運動能力をかさ上げしているのだが、全集中の呼吸だけで、人の身でここまで上げてくるなんて…
「…あんた、まじで天才じゃん」
軽口と言うよりは、まぎれもない称賛と感嘆を込めて、そうつぶやいた。
ガガガガガガッッ…ガアアァンッ!!!
剣戟の音と言うよりは、まさに轟雷といった感じの音を立てて、距離をとる。
ぺろりと、唇を舐めて…
「…次、行くよー!」
…雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃…
開いた距離を、互いに一瞬で縮めて…
…二連…三連……四連……五連………六連………七連…………八連…
「はははっ! ほんとにさっきまで壱ノ型を使えなかったのかよ!? 着いてくるじゃんよー!!」
十三連で、なんとか獪岳を突き放すと…
「見せてあげる! 今の最強を!!」
…雷の呼吸 漆ノ型…
一息よりも短い時間…火打石を打って、火花が出るまでと同じくらいの時間…見るものからは瞬間移動したかのような速度で、獪岳の懐に飛び込んで…
…雷光…
…ズドンッッ!!
…居合抜いた柄頭で、獪岳の鳩尾を強打する。
「…っがはっっ!!!」
「…見せるって言ったのは嘘。…だって、その時は死んじゃうからね」
鳩尾を強打されたことで、呼吸ができず…つまりは呼吸法の底上げを失って、獪岳が気絶する。
「…想像以上、今すぐにでも柱になれるよ。お疲れ様」
獪岳が強くなったことを示す、再戦でしたが…
強くなったねえ、零余子ちゃん(ホロリ)
でも、半泣きでガクブルする零余子ちゃんも、久しぶりに書きたいなあw