零余子日記   作:須達龍也

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生存報告!

いやあ、すっかり遅くなってしまいました。
完結に向けて、いろいろ考えてましたら、筆がびっくりするくらい進みませんで…思考の袋小路に入ってました。
起承転結の、結がやっぱり一番難しいですね。

そうそう、アニメ遊郭編終わりましたね。
声優さんの演技と、映像のクオリティの高さで、ただただ最高でした。
特に、堕姫と妓夫太郎、すごく良かったです。こんなん、絶対泣くって。


鬼側の事情1

 あのお方の継子…それは私の…私だけのもののはずだった。

 

 

 

 そもそもが、上弦の零という十二鬼月をも超える最上の存在であるにもかかわらず、鬼殺隊などという些事に関わる必要性など、どこにもありはしないのだ。

 あのお方の憐憫で存続が許されたというのに、更には柱として関われなどと、図々しいにも程がある。

 蟲柱の面の皮の分厚さには、呆れるほかない。…やはり、あの時にとことんやり込めるべきだったんだ。

 

 

 …頭の中で、さんざんにこき下ろしながら、あのお方には欠片も伝わらないように、分割して思考する。

 

 

 そうして、医務室に寝かされている男に視線を落とす。

 

 名前は…確か、獪岳とか言っただろうか。

 あのお方の仮の姿である、鳴柱の成宮未来の継子となった男。

 悔しいことに、戦闘力では圧倒的に負けている。つい先ほど闘技場にて見せた力は、十二鬼月の上弦にまで届くかもしれない。

 

 あのお方の後任の、下弦の肆…その身分が、分不相応な自覚はある。実力的には、結や綏と同じくらいだろう。

 えこひいきのごり押し十二鬼月という蔑称も、事実であると甘んじて受け入れ、その地位に見合うように努力してきたつもりだ。

 

 

 ただ、今、こうして、実際に、私と同様にあのお方の継子という立場のこいつを前にすると、言いようのない気分にさせられる。

 

 

「…いっそ、殺してしまいたい」

 

 思うだけでなく、口にもする。…ただ、できるのはそこまでだ。

 あのお方の…零余子様の思惑を、私が砕くなど、ありえないことだ。

「…ん」

 吐息をもらし、瞼がぴくぴくと動く。もうすぐ目覚める証だ。

「………ここ…は」

 まだぼんやりとしている獪岳の視界に、割り込む。

 

「…おはよう」

 

 

「…かっ! 下弦の肆!」

 

 

 ベッドから飛び起きるように、私と距離を取る。…さすがの速さだった。

 

「零余子様に、あんたの様子を見るように言われてたからね」

 

 …嘘だ。いや、正確には正しくない。誰かに見させておけと言われたが、私が見ているようには言われてはいない。

 

「…むかご? ……ああ…」

 日輪刀を探すように右手をさまよわせた後、なんとなく状況を理解したように獪岳がつぶやいた。

「…未来のこと…か。…上弦の零…だったんだな」

 仮の姿の名前とはいえ、呼び捨てにしていることに、ムッとする。こいつにもいろいろと感慨がありそうだが、私がそれに付き合う必要などない。

 

「…とりあえず、起きたようだから連絡する」

 

 右手の人差し指を額に当て、目を閉じる。

「…零余子様、宜しいでしょうか?」

 心を繋げるように意識して、呼びかける。

(……ん、おー、長子ちゃんか)

 思考に割り込んでくるように、あの方の声が聞こえる。

「…獪岳が目を覚ましました」

(…おっけー、これからそっちに行くよ)

「…お待ちしております」

 

 目を開けると、獪岳がきょとんとした顔をしているのが見えた。

 

 

「…ふふん」

 

 

「いやいや、なんでドヤ顔」

 

 

 

 

 

 

 

「やーやー、獪岳起きたって」

 

 医務室に、そう言いながら入る。

「…上弦の零…未来なのか?」

 複雑そうな顔で、獪岳がそう聞いてきた。

 

「ああ、この顔での自己紹介はまだだったね。鳴柱…成宮未来とは仮の姿。しかしてその実体は、上弦の零…零余子ちゃんでしたー!!」

 

 きらーんと、ポーズを取ってそう言ったんだけど、あんまり反応はよろしくない。

 

「…上弦の零が、未来…そして、鳴柱…か。……逆に、いろいろと腑に落ちたよ」

 信じたくはないが、まあ信じざるを得ないという感じか。

「…それで、これからどうしようって、つもりなんだ?」

 諦観の中で、一縷の望みにすがるような瞳で、そう聞いてきた。

 

「んー、特には。私の邪魔をしないようなら、鬼殺隊はこのままあり続けるよ」

 

 …まあ、このままというのは、嘘なんだけどね…

 

「獪岳を鳴柱に就任させるっていうのも、方針としては本当だよ」

「…そう、なのか?」

 感情が揺れ動いているのが、その瞳に表れている。…わかるよ。…肯定、されたいんだよね。

 

「そうそう、壱ノ型、習得おめでとー! 実力的にはもう、いつでも柱になれるよ!」

 

 私がそう言ってあげると、獪岳の目から涙が出て来た。

 

 

「…あ、…あれ? …ああ、ありがとう…」

 

 

 なんで泣いているのか不思議なのか、涙を拭うでもなく呆然とした表情のまま、そう返して来た。

「蟲柱には、二年はやって欲しいとは言われているけど、獪岳が今すぐに柱になりたいなら、私は引退してもいいしさ。…まあ、先に柱就任の条件をこなさないとね。とりあえず下弦の陸いっとく? 壱でもいいけど」

「あ、いや、いきなりはちょっと…」

 

 そこで、思い出す。

 

「そういや、上弦の陸が空いてるんだった。鬼になったら、そっちにもなれるよ。なっとく?」

 

「いやいやいやいや!」

 

「空いてた上弦の伍には、陸がそのまま上がったんだけど、今度は陸が空いちゃってさ。下弦の壱を上げるのは、ちょっと…って感じだし。実力的には累くんがなれば丁度いいんだけど、すっごい嫌がられてさあ。じゃあ、長子ちゃんどうって聞いたんだけど」

 

「…もうその話は勘弁してください」

 げっそりとした顔で、長子ちゃんがそう言ってくる。

 

「なんだろ、言ってて、こうピーンとして来たんだけど、獪岳が上弦の陸って、アリじゃね?

 うん、うんうんうん。バッチリはまるよ! こう、その絵がしっかりと思い浮かぶよ!!

 

 

 …まだ、さすがに映像にはならないけどさ」

 

 

「…さすがに、それは勘弁してくれ。喜んでくれている先生を、悲しませたくはないからさ」

 

 そう、しっかりと断られた。

 まあ、ここで獪岳を鬼にしたら、次の鳴柱候補が思い浮かばないしな。

 

 …というか、連座切腹案件だったりするのか?

 

 やだねえ、やだやだ。古臭い組織だよ。

 

 

「そういやさ…」

 

 

 獪岳が話を変えるように、そう切り出して来た。

 

 

「あの、毛色が違った、横浜の鬼…あれのことも、知っているんだよな?」

 

 

 

「…横浜の鬼?」

 

 

 

 …いや、知らんけど…




完結への方向性としては、まあ、行き当たりばったりで、なるようになるように、気楽に行きましょうとなりました(爆)
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