これまで応援ありがとうございました!
今日も今日とて、お茶会です。
黒い着物の無惨様、黒い着物の黒死牟様、朱い着物の私、そして、頂いているのはチョコラーテというチョコレートを使ったカステラで、合わせるのは当然のように紅茶です。もちろん、私が用意しましたよー。
とりあえず、みんな一切れずつ頂きます。
んー、さすがはパリの大博覧会にも出品されたカステラです。美味しいですねえ。紅茶もクピリ。
「…さて、何かわかったか?」
さてさて、お仕事のお話です。
「あの鬼…自らを称してヴァンパイアと言ってましたが、欧州は英国の鬼…の一種ですね」
「英国…ね。で、単独か? それとも群れか?」
「英国の…としては、単独です。はぐれと言ってもいいですね。
英国の鬼を作れる鬼…向こうではトゥルー・ヴァンパイアと言いましたか、そいつはかなり自由奔放な奴みたいで、英国内を転々としながら、気が向いたら食事をし、人を殺し、鬼を作ったようです。
今回の奴も、特に何かの目的をもって作られたわけでなく、まあだからこそ好き放題にやれてたわけですが」
だから、無警戒でいて、そのくせ弱かったわけだ。
「英国の… としては… とは…?」
「まあ、英国のはぐれ鬼が、ただ一体で日本まで来れるわけがなく…というわけで、英国のではない群れにくっついて、やって来たみたいです」
「ほう、どこのだ?」
無惨様のその問いに、フォークで差したチョコラーテを持ち上げる。
「今は長崎を本拠としてます、蘭国です」
蘭国…オランダと日本の付き合いは長い。
鎖国中の江戸時代においても、欧州で唯一貿易を許可されていた国になる。その際の玄関口となったのが、長崎は出島になる。
「そんなに前から居たのか?」
意外そうに無惨様が聞かれる。
「まあ、鬼…ヴァンパイアが日本に来たのは、最近みたいですけどね。特に、トゥルー・ヴァンパイアと呼ばれる個体まで来たのは、本当に最近のようで」
「ほう…」
私の言葉で、ピリッと空気が張り詰める。
「今、この国にいるのか」
怖いくらいの笑顔である。…うん、すごく怖い。
「というよりも… つるうばんぱいあというのは… 何体もいるのか…?」
トゥルー・ヴァンパイア…私が鬼を作れる鬼という説明をしたのだ、そんなのが何体もいるというのは、確かに驚くべきことだろう。
「…二十七体、それが現在確認されている数になります」
「…そんなに、か…」
無惨様のような鬼が二十七体…確かに、驚きだ。世界やばくね?
「”神敵二十七祖(トゥエンティセブン・サタン)”として、キリスト教の総本山…法王庁に登録されているみたいですね。
無惨様もひょっとしたら、二十八番目で登録されたりするんですかね?」
「ぞっとしないな」
考えたくもないというように、無惨様が切って捨てる。
ただ、私はこういうの、結構好きですけどね。なんというか、こう、くすぐられると言いますか。
「二つ名とかもありまして、なかなか趣がありますよ。
英国の鬼とかは、”第七祖(セブンス)”の”徘徊する災禍(ワンダリング・ディザスター)”とか呼ばれているみたいです」
「なるほど… おもむき… か…」
「番号が振られてますけど、生まれた順番というよりは、法王庁で確認された順番みたいで、まあ、それでも明確に格というのはあるみたいで…」
紅茶を口にして、舌をしめらせる。
「”旧十三祖(エルダー・サーティーン)”と”新十四祖(ニュービー・フォーティーン)”」
なんか、なんか! かっこいいよね!!
「…まあ、なんか、十三という数字に拘りがあったみたいで、十四祖以降の登録までに随分と期間があいたみたいですね」
十二とか十三という数字に拘る気持ちは、まあ、わからなくもないけどね!
「今、日本に来ている蘭国の真祖は、隣国の独逸の真祖ともめて…まあ、敗走してきたみたいでして、向こうでは有名な話のようですね。
独逸の真祖…”第五祖(フィフス)”の”魔王(エルケーニッヒ)”。
最近の英国では、”戦火の灯火(トーチ・オブ・ウォー)”とも呼ばれているようで、紀元前からいろんな戦争に関わっていると言われてて、世界大戦のきっかけを作ったとも、関係者の間では言われているそうで」
信じるか信じないかは、あなた次第!
「蘭国の真祖…”第十五祖(フィフティーンス)”の”復讐の十字架(クラウス・フォン・フラーク)”。
英国では、”血濡れの修道女(ブラッディ・シスター)”とも呼ばれてます。
こいつは”第五祖”の直系の血族らしくて、まあ、いろいろあるみたいですね」
無惨様と、珠世さんみたいな関係なのかもね。
「…ずいぶんと、いろいろわかったみたいだな」
「まあ、ずいぶんとおしゃべりなのは、間違いないですね」
実にこらえ性がない奴でした。
「…それでも、ま、一つだけはっきりしていることがあります」
「ん、なんだ?」
「…こいつらは、日本のことを…私達のことを、なめてます。…はっきり言って、馬鹿にしていますね」
弱かったくせに、負けたくせに、それでもなお、はっきりとわかる、侮蔑の感情。
「…ようは、極東のサル共が、どれほどのモノかと…」
「…ほう」
「ふむ…」
「ちょっとばかり、カチンと来ますよね?
目に物見せてやりましょう!」
というわけで、打ち切りマンガよろしく、俺たちの戦いはこれからだって最終回でした(爆)
正直、最終回って難しいです。
零余子日記で書きたいことは、大体書いたかなといったところで、終わりとさせてもらいました。
ではでは、ありがとうございました m(__)m