零余子日記   作:須達龍也

148 / 148
今回の話をもって、零余子日記最終回になります。
これまで応援ありがとうございました!


鬼側の事情4(最終回)

 今日も今日とて、お茶会です。

 

 黒い着物の無惨様、黒い着物の黒死牟様、朱い着物の私、そして、頂いているのはチョコラーテというチョコレートを使ったカステラで、合わせるのは当然のように紅茶です。もちろん、私が用意しましたよー。

 とりあえず、みんな一切れずつ頂きます。

 んー、さすがはパリの大博覧会にも出品されたカステラです。美味しいですねえ。紅茶もクピリ。

 

 

「…さて、何かわかったか?」

 

 

 さてさて、お仕事のお話です。

「あの鬼…自らを称してヴァンパイアと言ってましたが、欧州は英国の鬼…の一種ですね」

「英国…ね。で、単独か? それとも群れか?」

「英国の…としては、単独です。はぐれと言ってもいいですね。

 英国の鬼を作れる鬼…向こうではトゥルー・ヴァンパイアと言いましたか、そいつはかなり自由奔放な奴みたいで、英国内を転々としながら、気が向いたら食事をし、人を殺し、鬼を作ったようです。

 今回の奴も、特に何かの目的をもって作られたわけでなく、まあだからこそ好き放題にやれてたわけですが」

 だから、無警戒でいて、そのくせ弱かったわけだ。

 

「英国の… としては… とは…?」

 

「まあ、英国のはぐれ鬼が、ただ一体で日本まで来れるわけがなく…というわけで、英国のではない群れにくっついて、やって来たみたいです」

「ほう、どこのだ?」

 無惨様のその問いに、フォークで差したチョコラーテを持ち上げる。

 

「今は長崎を本拠としてます、蘭国です」

 

 蘭国…オランダと日本の付き合いは長い。

 鎖国中の江戸時代においても、欧州で唯一貿易を許可されていた国になる。その際の玄関口となったのが、長崎は出島になる。

「そんなに前から居たのか?」

 意外そうに無惨様が聞かれる。

「まあ、鬼…ヴァンパイアが日本に来たのは、最近みたいですけどね。特に、トゥルー・ヴァンパイアと呼ばれる個体まで来たのは、本当に最近のようで」

 

「ほう…」

 

 私の言葉で、ピリッと空気が張り詰める。

「今、この国にいるのか」

 怖いくらいの笑顔である。…うん、すごく怖い。

「というよりも… つるうばんぱいあというのは… 何体もいるのか…?」

 トゥルー・ヴァンパイア…私が鬼を作れる鬼という説明をしたのだ、そんなのが何体もいるというのは、確かに驚くべきことだろう。

 

「…二十七体、それが現在確認されている数になります」

 

「…そんなに、か…」

 無惨様のような鬼が二十七体…確かに、驚きだ。世界やばくね?

「”神敵二十七祖(トゥエンティセブン・サタン)”として、キリスト教の総本山…法王庁に登録されているみたいですね。

 無惨様もひょっとしたら、二十八番目で登録されたりするんですかね?」

「ぞっとしないな」

 考えたくもないというように、無惨様が切って捨てる。

 

 ただ、私はこういうの、結構好きですけどね。なんというか、こう、くすぐられると言いますか。

 

「二つ名とかもありまして、なかなか趣がありますよ。

 英国の鬼とかは、”第七祖(セブンス)”の”徘徊する災禍(ワンダリング・ディザスター)”とか呼ばれているみたいです」

「なるほど… おもむき… か…」

「番号が振られてますけど、生まれた順番というよりは、法王庁で確認された順番みたいで、まあ、それでも明確に格というのはあるみたいで…」

 紅茶を口にして、舌をしめらせる。

 

 

「”旧十三祖(エルダー・サーティーン)”と”新十四祖(ニュービー・フォーティーン)”」

 

 

 なんか、なんか! かっこいいよね!!

 

「…まあ、なんか、十三という数字に拘りがあったみたいで、十四祖以降の登録までに随分と期間があいたみたいですね」

 十二とか十三という数字に拘る気持ちは、まあ、わからなくもないけどね!

「今、日本に来ている蘭国の真祖は、隣国の独逸の真祖ともめて…まあ、敗走してきたみたいでして、向こうでは有名な話のようですね。

 

 独逸の真祖…”第五祖(フィフス)”の”魔王(エルケーニッヒ)”。

 

 最近の英国では、”戦火の灯火(トーチ・オブ・ウォー)”とも呼ばれているようで、紀元前からいろんな戦争に関わっていると言われてて、世界大戦のきっかけを作ったとも、関係者の間では言われているそうで」

 信じるか信じないかは、あなた次第!

 

「蘭国の真祖…”第十五祖(フィフティーンス)”の”復讐の十字架(クラウス・フォン・フラーク)”。

 

 英国では、”血濡れの修道女(ブラッディ・シスター)”とも呼ばれてます。

 こいつは”第五祖”の直系の血族らしくて、まあ、いろいろあるみたいですね」

 無惨様と、珠世さんみたいな関係なのかもね。

 

「…ずいぶんと、いろいろわかったみたいだな」

 

「まあ、ずいぶんとおしゃべりなのは、間違いないですね」

 実にこらえ性がない奴でした。

 

「…それでも、ま、一つだけはっきりしていることがあります」

 

「ん、なんだ?」

 

 

「…こいつらは、日本のことを…私達のことを、なめてます。…はっきり言って、馬鹿にしていますね」

 

 

 弱かったくせに、負けたくせに、それでもなお、はっきりとわかる、侮蔑の感情。

 

 

「…ようは、極東のサル共が、どれほどのモノかと…」

 

 

「…ほう」

「ふむ…」

 

 

 

「ちょっとばかり、カチンと来ますよね?

 目に物見せてやりましょう!」




というわけで、打ち切りマンガよろしく、俺たちの戦いはこれからだって最終回でした(爆)
正直、最終回って難しいです。
零余子日記で書きたいことは、大体書いたかなといったところで、終わりとさせてもらいました。

ではでは、ありがとうございました m(__)m

▲ページの一番上に飛ぶ
Twitterで読了報告する
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。