ここからなんとかできるのか、無惨様なら、無惨様ならきっとなんとかしてくれるw
泣いたら、少しスッキリした。
自分の能力は変えられないし、これまでの自分を助けてくれた、大事なものだ。
それに、あくまでも魅了はきっかけだ。
心を完全に操るものじゃないし、記憶を完全に入れ替えるものでもない。
もっと言えば、私がみんなを好きなこととは、まったく関係ない!
それが、一晩ならぬ…一昼寝て、折り合いをつけた結論だ。
それとスッキリついでに、能力の応用も思いついた。
自分の能力と向き合った結果としての思いつきだから、今回のことは実にタメになったと思う。
男子三日会わざれば、刮目して見よ…そんな言葉をフッと思い出した。
昨日とはまるで別人、迷いが吹っ切れたのか、自信に満ち溢れた目をしとる。
「体調は万全なようじゃの」
「おかげ様で」
軽口を叩きあいながら、互いに所定の位置につく。
ぶるり…と武者震いが起こる。いい勝負ができる予感がする。…きっと楽しい戦いになる。そのことが確信できた。
「行くぞ!」
先手必勝! いつものように一息で間合いを詰め、金棒を振り下ろす。
ドコォッ!
もはや戦闘開始の合図ともなったような、粉砕爆破の術を駆使し、零余子へと石つぶてを放つ。
石つぶてを、最小限の動作で避けたり、両手の十手で軽くあしらったりと、実に自然で悠々としておる。
あのバタバタと、高すぎる身体能力に振り回された動きをしておったあやつが、実に成長しておる。いっぱしの戦士になっておるじゃあないか。
「くくく…」
怪訝そうな顔をする零余子…こやつは気づいてないかもしれんが、顔と目を見たら、大体何を考えておるのかよくわかる。まるわかりじゃ。
自分は冷静ですよ…と、そう思い込んでおることも、まるわかりで実に面白くて、かわいい奴じゃ。
儂の振るう金棒を、躱し、いなし、そらす。…そうして、こちらに飛び込む機会をうかがっておる。
警戒しているのは、儂の不動金縛りの術。…逆に言えば、それ以外はもう警戒に値しないのだろう。
こやつは、いずれ必ず十二鬼月に入るのは間違いない。現状でも、下弦の陸には勝てる気がする。…その将来が、未来が見たくなる。
ゆえに、こそ。…破って見せよ!
コォオォォーン!
「不動金縛りの術!」
零余子の小刻みに動く足さばきを見切り、完璧な瞬間に合わせた。
これ以上なく、綺麗に決まった!
にぃっ…
「っ!?」
零余子が笑ったことに慌てた。
動けないはずの零余子に、懐に潜り込まれたことに焦った。
金棒を持ち上げようとした、その動き出しを十手で抑えられた。
トンッ…
もう一本の十手が、頭に突き付けられた。
「…私の、勝ち!」
勝気そうなその笑顔を最後に、パチッと意識が落ちた。
「…要はね、魅了の応用なのよ」
正座をしている山坊主を相手に、解説をする。
顔がにやける。いつもの冷静さを取り繕えない。…でも、しょうがない。嬉しいんだもんね!
「不動金縛りの術は、完全に決まったと思ったんじゃがのう」
うん、実に良い質問ですよ!
「最初に戻るけど、私の魅了って、視覚と聴覚と嗅覚から何かの信号を送って、要は相手の脳に勘違いさせてるわけなのよ。多分、そんな感じ」
「ふむ」
「山坊主さんには、魅了は通じなかった。なんか、気合で返された感じだったけど」
「うむ。なんか、かどわかされそうな気がしたからの」
うんうん、実に良い話の流れですよ。
「そう、多分魅了の能力だと、そういった警戒を引き起こしちゃうんだと思う」
「…それで、応用か」
「能力に名前を付けるとしたら、幻惑とか、幻影とか、そういった感じになるかな」
脳に勘違いさせるところまでは、魅了と同じ。
その後に、私を好きだと思い込ませるのが魅了で、そのまま別に何もしないのが幻惑になる。
「なるほどのう、気づかなかったのう」
「うん、そんなに実像と異なるような幻惑じゃないからね。せいぜいが数センチのズレ…ほんの刹那の時間のズレというくらいのものだと思う」
本当に、ほんのわずかなズレでしかないけど、その刹那のズレが、ギリギリの勝敗を分ける。
「…それで、不動金縛りの術は、ズレてしまったのか」
ちょっと落ち込んでいる山坊主には申し訳ないが、まだあったりする。
「あと、不動金縛りの術も、大体わかっちゃった」
結構な衝撃発言を言ったと思うのだが、山坊主はただ、そうか…と、答えただけだった。
「あれ、最初は私、音波か、衝撃波か、どっちかかなって思ったんだけど。
…電気だよね、あれ」
「なんでわかった?」
激高するでもなく、静かに聞いてきた。
「うん、きっかけは十手。昨日の戦闘の時に、なんかパチッとしたことがあったから」
「ふふっ、最後のは儂の術の応用じゃったか」
まだ説明してないのに、わかっちゃったみたいだ。
「そうだね、山坊主さんの不動金縛りの術の真似っこだよ」
山坊主の不動金縛りの術は、棍棒で地面を小突いた際に電気を発生させ、相手の足元から流して全身をしびれさせるというものだと思う。
利点は、この術にさんざん負けた私が一番知ってる。
難点は、発動の瞬間を合わせるのが難しいのと、それなりの電力がいること。
私が最後にやったのは、もっと単純だ。
足からじゃなく、頭に直接電気を流しちゃえっていう乱暴なものだ。
利点は、そこまでの電力はいらないのと、ほぼ確実に相手の意識を飛ばすことができること。
難点は、頭に直接か、間接かで触れないといけないこと。
「武器は、手に入れたようじゃの」
「うん、ありがとう、山坊主さん」
ついに、山坊主に勝ちました。
このSSを書いている身としては、原作の零余子ちゃんと同程度の実力になったと思ってます。
…原作の零余子ちゃん、実力よくわかんないんですけどねw
数字が上だからと、累くんより強かったとは思えない。