これで良いのか悪いのかw
「ああああああああああああああああああああぁぁぁ」
喉が熱い。お腹が熱い。心臓が熱い。全身が熱い。
「あああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ」
じたばたと暴れる。手足の縄はいつのまにかちぎれている。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
祭壇から転がり落ちる。痛みはない。ただただ全身が焼けるように熱い。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
地面を転がりまわる。火のついた体を地面で消そうとしているように。ただ、火は外ではない、中で燃えている。
「……つ、き…」
いつの間にかずれていた目隠しの向こうから、月が見えた。
焼けるような熱さが、急速に感じなくなった。
「…満月」
生まれて初めて見るお月様は、すごく綺麗だった。
手を伸ばしても届かない。それがすごく寂しかった。
「…なんだ」
男の声がする。
「…人間の女のガキだと期待したら、鬼じゃねえか」
先ほどの男とは違う声だ。
がっかりだ。女のガキは特に旨いっていうのに。
昨日まではなかった、木の台のそばに転がっていた女。てっきり生贄かなんかの女のガキかと期待したが、同族だった。
ひょっとしたら、鬼でも女のガキはうまいかもしれないが…そこまで考えて、首を大きく振る。
「別に飢えに飢えているわけでもなし、他にも食いものは村にいくらでもある。そんな危ない橋を渡れるか」
自分に言い聞かせるように、言葉に出して言う。
同族喰らい…そこには、生理的忌避感があった。あの方の呪いもあるかもしれない。
喰わない。…いや、喰えない。
「…ねぇ」
そんな中、寝転がって空に手を伸ばしていた、同族の女のガキが声をかけてきた。
「なんだ? 腹が減っているのか? ここは俺の縄張り予定だが、一匹くらいなら構わねえぞ」
数日前に何人か喰ったから、今の俺は寛容だった。…それこそ、あまり人を食ってなさそうな同族の女のガキに一人くらいは譲ってやってもいいくらいには。
わずかに身を起こした女が流し目でこちらを見ながら言った。
「…ねぇ、抱っこして」
蕩けるような顔で、そんなことを言ってきた。
ゾクリとした。たまらない色気を感じた。こんな年端もいかぬガキにだ。
「…あ、ああ」
ふらりと、女のガキに近づく。
嬉しそうに笑って、両手を広げて待っている。
ドクドクと心臓が脈打つのを感じる。なくなったはずのそういう欲が残っていたのだろうか?
疑問を感じながらも、優しく同族の女を抱き上げる。
ふわり…
いい匂いがした。頭の中が蕩けるような匂いだ。何の匂いだろう? …そんなことをボンヤリと考えていると、首筋からプツリという音が聞こえた。
首筋に噛みつかれた。でも痛くない。むしろ気持ちよかった。ゾクゾクが止まらない。立っていられない。
ああ、でもこの子を落としちゃあいけない。
血を吸われながら、落とさないように膝をつく。
「…けぷっ」
かわいらしいゲップの後、傷痕をチロリと舐められた。…快楽で遠のく意識が、最後に認識したのは…
「…ごちそう様でした」
ちょっと追加説明。
同族喰らい、最終試験の場所である藤襲山で日常的にされているので、できないわけではないです。
ただ藤襲山ではたくさんの鬼が、鬼だけで生きているので、同族喰らいは仕方なく起きていると思われます。
極限状態だからこそで、基本的には生理的嫌悪があって、できないと考えます。
この鬼はその生理的嫌悪、生理的忌避感を、無惨様の呪いと勘違いしているだけで、同族喰らいをしても呪いは発動しません。