小粒な割に味も濃いし、腹持ちもいい。ダイエットにもいいんじゃないのと思う。
その後は、いつものように部屋に送ってくれるのかと思ったら…
「…あなたに話がある方が、部屋の外でお待ちです」
誰だろう? まあ、昨日は入れ替わりの血戦したあと、私はすぐに消えたからなあ。
のんきに考えながら、ふすまを開けて部屋の外に出る。
見知った顔がいる。…右目に”×”がされた”下陸”の文字…元下弦の陸だ。
ほほう、昨日の仕返しですかな?
私ってば、ついさっき無惨様の血を分けてもらったばかりで、昨日よりも強くなってますよ。余裕で返り討ちですよ?
元下弦の陸が右手を前にだした。
ん? 握手とか?
「っ!!」
直後、奴の指が六尺くらいまで伸び、ぐにぐにと気持ち悪く動き出した。
…ほ、…ほほう、…なるほどなるほど。そっちも強くなったと言うわけですな。
体調が万全ならば、お相手するのもやぶさかではないんだけど、なんかおなかが急に痛くなった気がしているので、またの機会にしてもらえないかな。残念だなあ。うん。
そんなことを思っていると、奴は右手の指を元通りにして、頭を下げてきた。
「ありがとう! お前のおかげで強くなれた」
「えっ? …ああ、うん。どういたしまして」
本当にお礼に来ただけのようだった。…ふー、あせったあせった。
「十二鬼月からは落ちてしまったが、更に実力をつけて戻ってくるつもりだ」
「うん、そうなんだ。…ええっと…」
…名前、知らないわ。
「…指剣鬼(しけんき)だ。名前も覚えてないとか…」
申し訳ない。覚える必要性を感じなかったもので。
「試験機ね。うん、覚えておくよ」
「…なんか、違う発音に聞こえる。指に剣の鬼で、指剣鬼だからな」
「あー、うん、知ってた知ってた」
無惨様、まんまな名前すぎでしょう。
「…まあ、それだけだ。じゃあな」
指剣鬼はそう言って、私が居た部屋へと入っていく。
…ああ、なんでかなと思ったら、琵琶の君に送ってもらうんだな。
そこで、ふと気づく。
「…あれ? 宣戦布告もされてない?」
十二鬼月に戻るってことは、入れ替わりの血戦を挑むってことで…実質、今一番弱い十二鬼月って、私だよね?
なったはいいけど、入れ替わりの血戦を挑まれまくるのは、だるいなー。
…んー? もういいかなー、落ちても。…次で負けると色々言われそうだから、三回目くらいで負けよう。うん。
「雑魚との話は終わった?」
「ふぇ?」
目の前には、あやとりをしている累君がいた。
「…雑魚って、…まあ、うん。終わったよ」
累君には、昨日も血戦前に話しかけられていた。
私は血戦後にすぐいなくなったから、わざわざ今日来てくれたのか。それは申し訳なかったな。
「…昨日の血戦見たよ。うん、そうだね。…ちょっと感動したよ」
「えっ、そう? ふひひ、それはちょっと嬉しいな」
「あの、…えっと、…あの雑魚を使ったやつ」
ああ、累君もこれ、指剣鬼の名前を覚えてなかったな。
「あんな雑魚が、それなりに強くなったのに、びっくりしたよ。…それで思ったんだ」
「雑魚鬼でも、僕の力を分けてやれば、それなりになるかもって」
「んんー?」
何の話なのかな?
「参考になったよ。じゃあ、それだけ」
それだけを言うと、累君も部屋へと入っていった。
あれだな。会話をしに来たんじゃないな。言いたいことだけ言いに来た感じだ。
累くんは、かなりフリーダムでゴーイングマイウェイなイメージです。
そして、それが許される特別な存在。
昭和まで生き残れてたら、ヴェルタースオリジナルとか、もらえますねw