今後も宜しくお願いします。
「…久しいな、山坊主。まだ生きていたのか」
「…ふん、そっちこそ、まだ十二鬼月にいたのだな。まあ、ギリギリみたいだが」
うん、二人が旧交を温めています。
やめてよ、ここで戦わないでよ? …戦ってもいいけど、私を巻き込まないで!
「…んで、零余子。わざわざ何しに来たんだ? …こいつを連れて、喧嘩を売りに来たのか?」
「…こいつを相手に、あの術を使ってくれるのか? …だが言っておくが、素のままでもこいつには勝てるぞ」
二人ともやめて、なんかおなかが痛くなるから、本当やめて!
「阿修羅! あんたは勝手についてきただけなんだから、勝手に前に出ないの!」
「ぐっ、すまない」
とりあえず、まず阿修羅を黙らせる。
「ごめん、山坊主。本当に報告と、お礼の為に来ただけなんだ」
ぺこりと頭を下げる。
「山坊主のおかげで、こうして十二鬼月になれた。だから生きていられる。
だから、ありがとう!」
「ぬっ。…そうか、うん。…良かったな、零余子」
「へへへ。…うん、あともいっこ報告があるんだ」
「ん? なんじゃ」
「ちょっと、京都に行ってくる」
上星卿のお客様の中には、当然のように京都に親戚がいる人物もいる。
そのつてで一筆書いてもらい、そこを拠点に調査をする予定だ。
青い彼岸花が何を指すのかはよくわからないが、無惨様が必要とする以上、鬼関連には違いないだろう。
歴史上で有名な鬼と言えば、酒呑童子に茨木童子、役小角の前鬼後鬼、陰陽道で有名な安倍晴明も鬼を使役していたと聞く。いずれも京都周辺だ。
子供の頃から読んできた伝奇ものは、ほとんど京の都が舞台だった。行ってみたいと夢見ていた地に行けるのは、すごくわくわくする。
それに京都もたくさん温泉が湧いている。
休暇予定をつぶして行くんだ。ちょっとくらい楽しんでもバチは当たらないよね。
かつての日本の中心地、観光名所はたっぷりある。
歴史浪漫を感じながら、史跡を巡りたいなあ。…ああ、出歩けるのが日が暮れてからというのが、実に残念だ。
雨がしとしと降る、絶好のお天気の日に出発だ。
馬車を出そうかという上星卿のご好意を辞退して、噂の鉄道に乗ってみる。
神戸から大阪へは約半刻ほど、大阪から京都へも一刻かからずと、大体一刻半もあれば到着する。明治と言えば鉄道! 乗らない手はないよね。
阿修羅は走った方がめんどくさくないと、少し嫌がったが、だったらついてこなくていいと言えば、しぶしぶ従った。
しとしとと雨の降る、灰色の世界の中、もくもくと煙を吐いて進む蒸気機関車。
私の中の文学的感性が刺激される。
三宅花圃(みやけ かほ)や樋口一葉(ひぐち いちよう)にだって、負けてませんよ。ちょっと小説でも書いてみようか。
鬼の少女と人の男、種族と時の流れの違う中での恋愛模様とか、どうよ?
いやいや、鬼の少女と鬼を殺す剣士との、悲恋の物語とかも、なかなかいいよね。
はたまた、鬼の少女と、鬼の大頭目との恋物語…うん、それはないな!
流れる景色を見ながら、物思いにふけるのは、実にぜいたくな時間だね。
列車はやがて、大阪駅へと到着した。
明治コソコソ噂話
「三宅花圃(みやけ かほ)は女性初の近代小説を書いた人だよ。
樋口一葉(ひぐち いちよう)は五千円札にもなった女流作家。
明治時代を代表する女流作家と言えば、この二人だよね」