…でも、ここがエタる分岐点と思って、頑張ります!
「…よーし、よし…」
のたうちまわる阿修羅の頭を、後ろから撫でてあげる。
「がぁぁあああぁぁぁぁーーーーーーーーーーー!!!!!」
「…わっ、わわわっっ…」
撫でていた腕を取られ、あっという間に組み伏せられてしまう。
せっかく手伝ってあげようというのに、なかなかの仕打ちじゃないでしょうか?
ぎゅっ…
「…大丈夫、大丈夫だよ」
暴れる阿修羅の頭を抱きかかえる。
目から、耳から、鼻から、阿修羅の心臓の中に留まっている私の血に、働きかける。
無惨様の血の接待、少しだけ手伝ってあげるよ。
「…大丈夫、大丈夫…」
優しく頭を撫でながら、そう囁いてあげると、段々と阿修羅が大人しくなる。
「…そう、ゆっくり…ゆっくり、ね…」
「…はぁー、ふぅー、はぁー…」
阿修羅の呼吸が落ち着いてくる。…胸元にかかる息が、ちょっとこそばゆい。
「…よーし、よし、いいこだねえ…」
ポン…ポン…と、背中を叩く。
…どれくらい、そうしていただろうか。
「…あー、零余子…」
阿修羅から声をかけてきた。
「…んー?」
「…すまん、もう大丈夫だ」
私が手を離すと、ゆっくりと離れる。
「…ありがとう。なんとかなった」
こちらを見ずに、お礼を言ってくる。お礼は目を見てすべきじゃないですかね? …まあ、いいですけど。
「まあ、こっちも、阿修羅にお願いしたいことがあったからね」
「なんだ?」
「阿修羅には、ちょっと神戸に戻って欲しかったんだ。
あの柱の目的が山坊主っぽかったんで、ちょっと警告に行ってほしくてね」
「…なんで、それがわかった?」
阿修羅がやっとこっちをまっすぐに見てきた。
「えーと…あれ? …なんでだろ? …でも、多分そんな気がするんだよ」
柱には逃げられた。魅了をかけることはできなかった。…うん、そのはずだ。
「さすがにあいつがそのまま行くことはないと思うけど、代わりの鬼殺隊…ひょっとしたら、別の柱が向かうかもしれない。
…このまま山坊主がやられちゃうのは、さすがにちょっと、いやだなあって思うんだ」
「…まあ、奴では柱には勝てまい」
自分なら大丈夫なように話す姿に、少し笑ってしまう。今回は、すっごく運が良かっただけだと思うんだけどね。
「わかった。あいつに伝えに行こう」
「うん、お願いね」
そこで、あっと思う。
「…絶対に、煽っちゃあ駄目だからね」
「…ど、努力しよう」
…大丈夫かなあ?
「…神戸、ですか?」
琵琶の君が、話しかけてきた。
「…はい。…ひょっとして、阿修羅を山坊主のところに送ってくれるんですか?」
琵琶の君が、コクリと頷いてくれた。
「助かります。ありがとうございます」
「…そっちの護衛は、大丈夫か?」
心配そうに阿修羅がそう聞いてきた。
「…んー、多分…大丈夫」
なんとなくだけど、私一人のほうが見つからない気がする。
「…じゃ、お願いね」
「わかった」
べべんっ!
阿修羅の足元にふすまが現れて、開いて、阿修羅が落ちて…パタンと閉まった。
いつ見ても、便利な血鬼術だなあ。私も欲しい。
琵琶の君は十二鬼月ではないけど、重要度は多分、私達よりもずっと上だろう。
「…あなたは」
「ん?」
「…異常な鬼ですね」
「へっ?」
べべんっ!
ポテッと、ホテルのベッドの上に落ちる。
「…なんか、ひどいことを言われたような…」
…ベッドの上だとわかったせいか、急激に睡魔が襲ってきた。
「…おやすみなさい」
「…くぅ」
柱には逃げられたけど、無惨様からは褒められたし、血ももらえた。
良かった良かった…と、のほほんと零余子ちゃんは考えてます。
気分がいいので、阿修羅にはちょっとしたサービスくらいの軽いノリでやってます。