零余子日記   作:須達龍也

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せっかくの休みになっても、どこかへ出かける気になりませんね。
自粛で出られないんじゃない、出なくてもいいんだと考えましょうw

零余子ちゃんも、出たいなー、太陽とか浴びたいなー、残念だなー…と、ゴロゴロしてますw



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 ザー…ザー……

 

 雨の音で、目を覚ます。

 カーテンをめくると、土砂降りの大阪の街が見える。

「いい天気だねぇ。私の日ごろの行いのおかげだね」

 

 コンコン…

 

「開いてるよー」

 

 ガチャ…

 

「…失礼する」

 入って来たのは予想通り…というか、把握していた通り、阿修羅だった。

「…あらら、ビショビショだ。…お風呂入る?」

「問題ない」

 髪の毛から水滴をポタポタ落としながら、阿修羅は平然としている。

「しょーがないなー。そこに座って」

 阿修羅を椅子に座らせると、後ろからタオルでゴシゴシと頭を拭く。

「ホテルの人に、イヤな顔されなかった?」

「…知らん」

 これは、されたな。…まあ、床を濡らされたらイヤだよね。

「山坊主には伝えてくれた?」

「ああ」

「逃げてくれそう?」

「……たぶん」

 

「んーーー…」

 

「…私と零余子の二人がかりでも、幸運に恵まれなければ勝てなかった…死んでた…と、ちゃんと伝えた」

 静かな声で、阿修羅がそう言った。

 

 …あんなに張り合っていた山坊主に、そう言ってくれたんだ。

 

「…うん、ありがとね」

 

 

 

 

 

 今朝はホテルから大阪駅まで、まっすぐ向かった。…昨日の今日だし、さすがに観光はまた今度にしよう。

 

「…ん?」

「…どうした?」

「いや、別に…」

 列車に揺られながら、違和感…というか、魅了にかけた人物がいるなと感じていたのだけど…

 

 …あれぇ、誰だろう?

 

 列車に乗っている私と、ほぼずっと一定の距離を保ったまま、東の方角にいる人物。…おそらく、私の乗った列車の、一つか二つ前に出た列車の乗客なんだろう。

 ただ、確かに魅了にかけた感じなのに、誰だかわからない。…こんなことは初めてだった。

 

「…もやっとするなあ」

 

 私達は京都駅で降りたのだけど、謎の人物はそのまま東へと遠のいていく。

 気にはなったけど、さすがに追っかけていくわけにもいかない。ひょっとしたらこのまま東京まで行ってしまうかもしれないのだ、ちょっと寄り道には遠すぎる。

 

 

 

 

 

 私達がごやっかいになる京都での拠点は、三条卿のお屋敷になる。

 家系図を辿れば、やんごとない方の名前も出てくるという、お公家様のお屋敷だ。

 京都でいろいろと調べ物をする以上、そういった家柄は非常に役に立つだろうという発想であって、そのお屋敷にお風呂がついているというのは、あくまでも付加価値に過ぎないのですよ、ええ、そうなんですよ?

 

「…それで、どういった予定なんだ?」

 

「…あまりにも手掛かりが少ないからねえ。人海戦術しかないでしょ」

 

 

 手あたり次第に魅了していくしかない。…でもまあ、ある程度は経済的に余裕があって、頭がいい人物に限るべきだろう。

 

 

 

「…とりあえず、京都帝国大学は、全部押さえるつもりだけどね」




鳴柱の成宮透さんは、零余子ちゃんの知覚領域を超えて、あじとへと向かってます。
本拠地に戻ったら、お館様に柱を辞すことを話す予定です。

桑島慈悟郎さんのように、育手にでもなろうかな…と思いながら、列車に揺られてます。
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