零余子日記   作:須達龍也

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こんな二次創作を書いているので、気持ちが鬼寄りになっているんですけど…

それでも、本編はハッピーエンドにならないと、非常にしんどいです。
ワニ先生、勘弁してください。



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 その一報は、今までで一番衝撃的だった。

 

「…うそ…」

 

 聞こえているのに、その言葉の意味がわからない。…いや、意味はわかっているけれど、頭に入ってこない。

 

 

 下弦の壱…止水様が、鬼殺の剣士に殺された。

 

 

 信じられなかった。

 

 止水様は、下弦の鬼の中でも別格だった。

 七十年以上、下弦の壱に君臨し、下弦においてその力は頭抜けており、まさに上弦の漆のようなものだった。

 

 止水様を殺したのは、柱ではなく、水の呼吸を使う剣士だったとのこと。…つまり、止水様と同じ呼吸ということだ。

 そのことは、相性とかでなく、実力で止水様が負けたことを示している。

 

 

 そのまま、藤の家紋の家を出る。

 

 

 あの止水様が負けた? …柱にもなってない剣士に?

 

 実際にその実力は見たことはなかったが、阿修羅も山坊主も、その強さをいつでも言っていた。そこには悔しさでなく、敬意と憧憬があった。だから、すんなりと信じられた。

 

 

 足元が揺らいでいるのを感じる。

 

 

 なんとなく、安心していたところがあった。

 

 止水様、阿修羅、山坊主、それに累君は大丈夫だと思ってた。…だって強いから。

 私も大丈夫だと思ってた。…だって鬼の気配が薄いから。

 

 鵺さん、大太さん、指剣鬼くんは、残念だけど、弱かった。…だから仕方ないって、そう思ってた。

 

 

 …でも、そんなのは、ただの楽観的な考えだったのだ。

 

 

 下弦最強の、止水様だって殺される。…それが、現実なんだ。

 

 

 

 それに、何よりも、ペースが異常だ。

 

 

 

 山坊主が下弦の肆だった頃の十年間で、下弦の陸が五回変わった。…つまりは、二年に一回、それも下弦の陸だけだった。

 それが、今や、一年に一回以上! それも、下弦の陸だけではない、参も、弐も、壱だって殺された!!

 

 

 

 …下弦の鬼って、何のためにいるんだろう…

 

 

 

 この件で、無惨様からの呼び出しはなかった。

 

 

 

 

 

 …駄目だ。気が重い。息抜きがしたい。気晴らしがしたい。

 

 久しぶりに山坊主や阿修羅に会いたい。累君は…別にいいや、いつもこっちを怒らせにくるし…まあ、向こうが会いたいなら会ってやらなくもないけど…ああ、とにかく、一人はしんどい。

 

 

 

 それは、そんな時だった。

 

 

 

「備中鍾乳穴(びっちゅうかなちあな)だと?」

 

「はい。平安時代に書かれた”日本三大実録”にも記されている、日本最古の鍾乳洞です」

 私の出生地からもほど近い岡山にあります。まあ、近いけど行ったことはないんですけどね。

「それで、そこがどうした?」

「…ええと、ですね。前にお話しをした青い彼岸花の記述がある古文書なのですが、そのうちの一点、ええと、何と申しますか…一番、胡散臭い感じのするものにはなるのですが…」

 その古文書は、安倍さん家から見つかった、それなりに格式があった古文書とは、一線を画していた。

 

 ”吉備黄泉路行(きびよみじこう)”という名前のそれは、現在の岡山辺りの風土記というか、伝説を書いたもの…というか、古いからありがたいだけの、トンデモ小説もいいところだった。

 

 青い彼岸花の記述があった古文書は、私から言わせれば、全部胡散臭いんですが、そいつは中でも飛びっきりに胡散臭かった。

「…その中で、備中鍾乳穴について書かれたものの中で、そこを黄泉比良坂(よもつひらさか)であると書いてありまして…」

 

 黄泉比良坂…死者が住む黄泉の国と、生者の住む現世をつなぐ道とされる場所で、各所でここがそうだという伝承が残っている。説としては、出雲のほうが吉備よりも強いんだけど、まあ、近いっちゃあ近いけど。

 

「…まあ、その備中鍾乳穴の最奥は地下水というか、川で堰き止められている…られていた?…らしいのですが、新月の晩…丑三つ時に、その川の向こう側が現れると…」

 自分で言ってて、胡散臭いことこの上ない。

 なんで時間によって、出たり現れたりするんだと、科学的におかしいよね。

「…その川こそが、三途の川であり、その向こう側が黄泉の国…地獄である…と、そして、その彼岸には青く輝く彼岸花が咲き乱れている…と、そう書かれておりまして…」

 

 正直、割と早めに判明していた内容ではあったのだが、あまりの内容の胡散臭さと、岡山まで行くの面倒臭いなという思いから、ちょっと放置していた奴だったりする。

 

「…わかっております。可能性なんかほとんどない胡散臭い話だということは、重々承知しております。…ただ、小骨のように頭の隅に残るくらいなら、一応確認はしておきたいと思いまして…」

 研究員の川口氏が、行きたい行きたいと駄々をこねていたのもあるし、ちょっとした息抜きにもなるだろう。

 

「…何もないとは、思うのですが、何かあったときの為に、助っ人を…山坊主と阿修羅をお借りできますれば…と、お願い致したく存じ上げます」

 

 そう! せっかくだから、久しぶりに山坊主や阿修羅に会いたいなって思ったのですよ。

 

「…眺めるだけならば問題はないが、地獄に足を踏み入れれば、地獄の鬼や、亡者、醜女(しこめ)などに襲い掛かられるそうで、まあ、ありえないとは、思うのですが…」

 

 たまには気晴らしに、みんなと観光旅行もいいよね!

 

 

「…新月は、三日後…か。あいわかった」

 

 

 やったね! 無惨様の許可も下りたよ!

 

 

 

 …山坊主と阿修羅の他に、なんで猗窩座様もいらっしゃるのですかね?




駄々もれな心の中で、割と欲望に忠実な零余子ちゃんなので…
無惨様に嫌がらせをされるのも、仕方がないねw
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