世界が狭くなって便利になった反面を見せられてますね。
「…今、恐怖したな…」
その言葉を聞いた瞬間…
「あああぁぁぁぁーーーー!!!!!!」
…悲鳴があがる。恐怖からじゃなく…いや、それもあったが、むしろそれは生存本能とでもいうべきものからだ。
「…どうしたっ!?」
山坊主が肩をつかんで揺らしてくる。…違う、体がガクガクといつの間にか震えていた。
…今、何かが体から抜けそうになっていた…
それが何かはわからない。そんな経験はない。…だけど、それは取り返しのつかないものだと思われた。
…恐怖したら、魂が抜ける…
話に聞いたら、馬鹿らしいと思うだろう。
ばかばかしい。そんなことがあるわけがない。そもそも魂ってなんだって…
「…ひぃぃ、ダメダメ、考えるな」
考えると、また恐怖がぶり返しそうになる。
やばい、まずい、ビビりの私には最悪だ。
「猗窩座様っ!」
「おうっ!」
思わず叫んだ私に、猗窩座様が力強く応じてくれる。
「阿修羅、どいてろ」
その言葉と同時に…
…破壊殺・脚式・流閃群光(りゅうせんぐんこう)…
猗窩座様の怒涛の蹴り技が、方相氏をずるずると二メートルほど後ろに下がらせる。
そして、後を追うように、その懐奥深くにまで踏み込んで…
…終式・青銀乱残光(あおぎんらんざんこう)…
超至近距離で爆弾を爆発させたかのように…いや、私は見たことがないけど、夜空を彩る特大の花火の爆発を、地上に顕現させたかのようだった。
「やったか?」
山坊主が誰にともなく、そうつぶやく。
猗窩座様の向こう…頭一つ分は高かった方相氏の仮面が…ない。
仮面どころか、頭自体が…
…方相氏の上半身が吹っ飛んでいる!
「…やった…」
思わずあがりそうになった歓声は、不自然に浮いているものを目にして、止まる。
…右手? …そして、それが持っているのは…
チーン…
浮かんでいた右手が、五鈷鈴を鳴らした。
音もなく、黒い服を着た上半身が生えてきて、宙に浮かんだ右手とつながり…仮面をつけた頭まで復活した。
「猗窩座様、鈴をっ!」
「おぉっ!!」
…破壊殺・滅式…
猗窩座様の拳が、ただ一点、奴の持っている五鈷鈴だけを、何度も叩き…
…壊した…
「…ふむ」
奴は鈴をなくし、砕かれた右手を持ち上げ…
…どこか、虚空へと突っ込んだ。
「…そんな…」
「…ばかな…」
…虚空から引っ張り出したのは、五鈷鈴を持つ右手だった。
…破壊殺・滅式…
再度繰り出された猗窩座様の拳は、周囲に赤いものをばら撒く。
「…ぐっ…」
…猗窩座様の両の拳は、その破壊力ゆえに砕け、血で真っ赤に染まっていた。
「…形代を、より堅くした…」
なんでもないことのように、奴はそう言った。
勢いが欲しい…