まあ、せっかくのまとまった時間を家のことに使いましょう。
私は部屋の掃除をしたり、溜まったアニメを見たりする予定です。
特別急行列車というのがある。略して、特急列車である。
関東と関西を結ぶ東海道は、どんどんとその時間を縮めていき、大正時代になってからは、ほぼ半日で着くようになっていた。
朝に出て、到着は夜になる。
夏は日の出が早く、日の入りが遅い、外での活動時間が短い上に、雨もあまり降らないので困ったものだ。
まあ寝台がついているので、列車内では太陽光は避けられるけど、乗る時には注意が必要だ。
むーんむーん…と悩んでいると、研究員の一人に、そういう鉄道関係が大好きな奴がいて、日の入り前に九州方面に出発し、日の入り前に乗り換えて、東京方面の特急に乗るという無駄にめんどくさい案も出たのだが、研究員三人を追加して、木の板で私を日光から守る案に落ち着いた。
まあ、それも微妙なのは、わかってるよ!
一等寝台車を二枚用意し、例の研究員…名前は山本というみたい…と彼の実家のある関東へと向かう。
木の板の裏に隠れてコソコソと乗り込むのは、恥ずかしかったが、なんとか無事に特急列車に乗り込み、早速寝台の上側に上がりこむ。
梯子を使っての二段ベッドの上側って、なんかワクワクするよね?
山本君の方も、特急列車も寝台列車も初めてなようで、こちらも見るからに楽しそうにしている。…お金を払ったのは私だ、上側は渡さんぞ!
枕元の電灯をつけて、読書を開始する。
ガタンゴトンと揺れる列車内で寝転んで、優雅に読書というのも格別だ。
山本君は、せっかくだからと洋食堂車に行って、その後は最後尾にある一等展望車に行くと言っていた。…うぐぐ、私も優雅に、精養軒特製のケーキと紅茶を楽しみたいところではあるが、甘味を食べるのはまだできていない。むぅ、急がせるべきか?
そうそう、自然製薬株式会社のほうは、順調に業績を伸ばし、早くも日本第肆…コホン、四位の売り上げの製薬会社になっている。
その日暮らしで、家もないような鬼が多い中、まず間違いなく私が一番お金持ちな鬼だろう。
…ああ、いつでも猗窩座様との新居を購入する用意はあるのに、無惨様の理不尽な命令で、あっちへ行ったりこっちへ行ったりの根なし草のような生活をされているのが悩ましい。
(…ええ、それって、ううん、でも…)
私と猗窩座様の同棲は嫌だが、そばには居たいというジレンマに、同居人の幽霊も悩ましげだ。
そうだ、東京にも自然製薬の支店を出して、ついでに別宅も購入しておこうかな?
東京にも拠点があるのは、いろいろと便利だろう。私はあまり使わないだろうけど、猗窩座様がお使いになるのなら、それだけで十分価値がある。
うし、うさんくさい新興宗教問題が片付いたら、不動産屋に行くとしよう!
(…うーん、うーん…)
ふはははは、そこでハンカチを噛んで悔しがるがいいさ!
大正コソコソ噂話
「東京から下関まで走っていた特急寝台列車は、一日に上り下り一本ずつ出ていて
東京からの下りは、朝出て、関西に夜、下関に朝到着。上りが本文のように下関を夜出て
関西に朝、東京に夜到着になってたよ。
そして、この特急寝台列車は、別名で名士列車とも呼ばれていたよ。
一番早く東京と地方を結んでいたというのもあるけど、値段がお高いのが大きかった。
庶民には手が届かず、華族や国会議員、地方の名士しか利用できなかったみたいだね」