零余子日記   作:須達龍也

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重めのシリアスがまだ続きます。
申し訳ないですが、零余子ちゃんと一緒に乗り越えてください。



64

 阿修羅が死んでも、世界が止まるわけではない。

 

 日々は流れていく。

 その流れの速さに、戸惑うこともあるけれど、少しずつ、ちょっとずつ、前に向かうしかない。

 

 私がぼんやりとしていても、研究は進んでいく。

 

 古文書の解析はほぼ終わり、青い彼岸花の再現は、代替品などを用いて研究を進められている。

 

 

 私は、それを横目に、甘いものを食べたりするだけだった。

 

 

 

 

 

 ある日、赤紫色をした、彼岸花ができた。

 

 

 二株だけできた、その彼岸花は、偶然の産物だった。…研究室ではなく、いつの間にか庭に咲いていたのだ。

 阿修羅の墓のそばで、いつの間にか生えていたそれは、阿修羅からの贈り物のようにも思えた。

 

 

 その赤紫の彼岸花を注射した鬼の右腕は、四半刻ほどの間、日の光の下で焼け落ちなかった。

 赤い彼岸花をわずかに赤紫色にした成分は、日の光に対して有効であることがここに示された。

 

 

 面談時に、無惨様が引きちぎられた左腕でも、同様のことを試してみたところ、同じく四半刻ほど日の光の下で蠢いた後、燃え尽きたのが確認された。

 つまりは、血の濃さに関係なく、同じ効果があることが示された。

 

 

 

 無惨様は上機嫌になったし、研究所の他のメンバーも沸き上がったが、私自身は戸惑いの方が大きかった。

 

 いろんな出来事が、私を置いて進んでいくようで、何とも言えないもやもやした気持ちを抱えていた。

 

 

 

 

 

 …誰かに甘えたかった。

 

 …私に優しい誰かに、ただただ側にいて欲しかった。

 

 大きく転換した研究が、慌ただしく動いているのを尻目に、東京出張の予定を入れた。

 それでも、問題はなかった。…笑っちゃうことだが、青い彼岸花の研究に、あまり私は必要なかったから。

 

 

 関東方面に行く際には、鬼狩りの様子をうかがう必要があった。

 阿修羅の件を聞いて以来、行ってなかった藤の家紋の家に向かう。

 何度も何度も嫌な話を聞かされた場所なので、正直なところ、行きたくはなかった。…今回だって、憂鬱な気分で重い足を進めた。

 

 

 …それを虫の知らせというのなら、そんな虫は潰してしまいたい…

 

 

 

 

 

 ………山坊主が、……死んだ………

 

 

 

 

 

 …もういやだ…何も聞きたくない…何も知りたくない…

 

 

 …私一人では、受け止めきれない。…この悲しみを分け合える、誰かがもういない…

 

 

 

 ………世界は、どこまでも残酷だ………

 

 

 

 

 

 

 

 べべんっ!

 

 

 想定以上に、ひどい様子だった。

 私に気付いて、伏せていた体をのろのろと動かし、正座をする。

 心ここにあらずどころか、魂すらもないのではないかと感じてしまう。

 

「……無惨さま…」

 

 声をかけあぐねていると、零余子が口を開いた。

「…なんだ?」

 

 

「…下弦の鬼は、…何の為にいるのでしょうか?」

 

 

 その言葉には、何の感情も乗っていなかった。

「…それは…」

 

「…ただ、鬼殺の剣士を柱にするためだけに、存在するのでしょうか?」

 

 下弦の鬼の殺されるペースは、確かに異常だった。

 今の鬼殺隊の実力が高いのか、それほど弱くもない下弦の鬼達が、バタバタと殺されている。

 

 

「…十二鬼月に、下弦は必要なんでしょうか?」

 

 

 下弦の肆である零余子の、その言葉は非常に重い。

 捨て鉢になったのならまだわかるが、そこには単純な疑問しか感じ取れない、こころがどこかに抜け落ちたかのようだった。

 

「…不要というわけではない。お前がいるし、累もいる」

 

「…累くん…大丈夫かなぁ…魅了の強化をした方が…ああ、でも…それは、あんまり効果ないか…」

 ぶつぶつと言っている零余子は、もう既に壊れてしまったのではないかと、本気で思わせた。

 

「…ふぅ」

 

 息を一つつき、鳴女に合図を送る。

 

 

 べべんっ!

 

 

「…現状、下弦の鬼達がバタバタと殺されている。関西にいるお前は大丈夫だとは思うが、護衛をつけることにした」

 

 

「…え?」

 

 

「…下弦の肆の護衛、確かに承りました」

 

 

 

 零余子の隣で正座していた猗窩座が、頭を下げて、そう応じた。




ほぼゼロになった零余子ちゃんのライフを、なんとか回復させるため
ヒーローでヒーラーの登場です。
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