鬱展開にお付き合い頂き、ありがとうございました。
「…猗窩座、さま…」
私が呼びかけると、こちらを横目で伺って、優しく微笑んでくれた。
「…ふぇぇ…あがざざまぁ…」
止まっていた心が、動き出したように感じる。
(狛治さん!)
幽霊の後押しも受けて、そのまま猗窩座様に抱き着く。
「…まいったな」
そう言いながらも、抱きしめ返してくれる。
「…家でやれ!」
…当たり前だけど、怒られた。
べべんっ!
動き出した感情が、猗窩座様を前にして、私にひらめきを与えてくれた。
それは、危険ではあるが、試してみたいことだった。…そして、時機もちょうど良かった。
「…猗窩座様、一つ、試したいことがあります!」
それは、お願いというよりは、宣言に近かった。
だから、猗窩座様は苦笑しながらも、頷いてくれた。
深夜、研究所の地下室に二人で…二人きりで、密会をする。
(二人きりではないです!)
すかさず幽霊の突っ込みが入る。前だったら、舌打ちでもして返していただろうが、…でも、この幽霊…恋雪の存在が、私にこれを試そうと思わせたんだ。
「猗窩座様、やります!」
「おう、いつでもいいぞ」
猗窩座様の心強い返答を受けて、右手に用意していたものを鳴らす。
チーン……チーン…
ここは岡山の備中鍾乳穴ではないが、あいつは新月の晩に鳴らせとしか言わなかった。…だから、大丈夫なはずだ。
フッ…
煌々とついていた、地下室の明かりが消える。
チーン……チーン…
青い鬼火が現れて、辺りを青く照らす。
ここはもう、研究所の地下室じゃない。…まぎれもない異界だった。
チーン……チーン…
暗闇の中、ずるりと現れるのは、黄金の仮面を被った黒衣の大男。
「かかか、久しいな、鬼擬きども」
私がこれまでに会った中で、最強の敵…方相氏を呼び出すことに成功した。
…でも、本当に用があったのは、方相氏じゃない。
「…山坊主! 阿修羅! ここにいる!?」
ここは彼岸だ。遥か昔に亡くなった恋雪の魂だって、ここにはあった。山坊主の、阿修羅の魂がここにいてもおかしくない。…いるはずなんだ。
「…ねぇ、応えて、応えてよ!」
本当はわかっている。たとえここに居てくれたとしても、応じることなんてできないんだってことは。…そもそもが、本当に居てくれるかも…
「かかか、儂を呼び出すことの方がついでとは、なかなか面白い奴じゃ」
「…ねぇ、方相氏、ここに山坊主は、阿修羅はいてくれる? …教えて欲しい」
答えてくれるかはわからない。…でも、この場でそれがわかりそうなのは、方相氏だけだった。
「そいつらは、こないだの残りの鬼擬きのことか?」
方相氏の言葉に、頷いて返した。
「それは運がいいのう、奴らは儂の贄じゃからの。儂に引き寄せられて、それ、そこにおるぞ」
「本当っ!? 山坊主っ! 阿修羅っ! 聞こえてるっ!?」
方相氏に肯定され、自信をもって呼びかける。
「…ねえ、私のそばに来てよ! 恋雪みたいに、私の中に来て! そしたら、…そしたら、またお話しようよ!」
「……こゆき?」
「かかか、さすがに三つは入るまい。器が壊れるかもしれんぞ」
「…少しの間でも、わずかな時間でも、会いたいよぉ…」
どうしたら魂が入るスペースができるかはわからない。…とりあえず、詰める! 恋雪ももっと詰めて!
(ええ、…ど、どうすれば…)
「かかかかかっ、せっかくじゃ、さーびすしてやろう」
チーン……チーン…
方相氏が、いつの間にか手にしていた五鈷鈴を鳴らすと、ぬるりと新しい方相氏が二人現れた。
「儂の形代を、少しだけ貸してやろう」
「…これは!」
「…喋れるのか?」
動いて、喋る、新しい二人の方相氏…ううん、会いたかった二人に、無我夢中で飛びつく!
「山坊主! 阿修羅!」
「「零余子っ!」」
方相氏も零余子ちゃんには優しいw
人外を惹きつける零余子ちゃんの魅力、そこにシビれる! あこがれるゥ!