零余子日記   作:須達龍也

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本誌鬼滅、現代は二部なのか、エピローグなのか?
それとも、まさかのキメツ学園なのか?



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「…儂が人間だった頃は、あの廃寺…当時はちゃんとした寺だったわけじゃが、そこの坊主をやっていた。記憶はなかったが、あそこを根城にしていたんじゃ、何か離れがたいものがあったのかもしれんな」

 

「いつくらいの話だ?」

 

 阿修羅がもうすっかりと、山坊主の話を聞く体勢に切り替わっていた。

 

「お前とさほど変わらんな。幕末のごたごたで、世の中は荒れ放題じゃった。

 儂は寺にみなしごを集めて育てておった。まあ言っても、なんとか食わせるだけで精一杯じゃったがな」

 

「俺なんかと違い、立派なもんじゃないか」

 

「…じゃが、そんな生活も長くは続かなんだ。

 元が維新志士か幕府側かは知らんが、落ちぶれて野盗になった連中に、寺を襲われた。…ちょうど儂が、村に食料をもらいに降りていた時じゃった」

 

 山坊主の言葉に、後悔の念が乗っているのを感じる。

 

「…儂が居たところで、どれだけのことができたかはわからん。単に死体が一つ増えただけにしかならんかったかもしれん。…じゃが、それでも、せめて一緒に死んでやることはできたとも言える」

 

「…山坊主…」

 

「…子供らのなきがらを埋めた後、寺に残してあった槍を一本持って、奴らのあじとに乗り込んだ。勝てるとも思わなかったし、生きて帰るつもりもなかった。

 ただ、儂の怒りをぶつけたかっただけじゃ」

 

 話の内容のわりに、山坊主はただ淡々と話す。

 

「…二、三人は殺したと思うが、それからはよく覚えておらん。記憶が戻ったわりに、あやふやなもんじゃな。

 奴らは十人以上いたから、ひょっとしたらあと数人ばかりは殺したかもしれんが、儂は奴らに殺された。

 …そして、奴らの残りはあの方に殺されたんじゃろう。

 鬼となっての最初の記憶は、血だまりの中で悪鬼となった儂が笑っておったところじゃった」

 

 

 それが、人だった山坊主の最期であり、鬼になった山坊主の最初なわけだ。

 

 

「…それからは、あの廃寺に籠り、やってくる野盗、単に近くに来ただけの人間、区別なく殺して喰った。逃げも隠れもせずに、あの廃寺に居たからのう、そろそろ来たじゃろう鬼殺隊の柱に殺されていたはずじゃった」

 

 一番最初に山坊主の噂で、そういう話を聞いた。いよいよ柱が赴こうとした時には、忽然と姿を消していたと。

 

「…まさにその時、あの方に声をかけられ、十二鬼月入りを果たしたわけじゃ。その後は各地を転々としながら、青い彼岸花を探してたんじゃが…」

 

 そこで、山坊主が阿修羅を見る。

 

「…十二鬼月から落ちたら、まあ、どうでもいいと思われたんじゃろうな、好きにしろと言うことで、またあの廃寺に戻って来たということじゃ」

 

 無惨様の勝手気ままな命令のせいとは言え、そのおかげで山坊主は何十年と鬼殺隊に目をつけられながらも、ここまで生き残れたとも言える。

 

 

 …もっとも、そこまでは…とも言える。

 

 

「…後は、妙な鬼っ子が山に来てからは、いろんなことがあったのう」

 

 山坊主が優し気な表情で、こちらを見詰めて来た。

 

「…お前さんとのいろいろは、思い出した人間の頃の子供らと過ごしたものに、よく似ていた。ぎゃーぎゃーと騒がしかったが、とても楽しかった」

 

 

 …なんだろう、これ…

 

 

「…阿修羅と同様に、感謝の気持ちはもちろんあるんじゃが、…それよりも儂は、阿修羅の墓の前でお主と話したのもあったからの…」

 

 

 …阿修羅の話も、山坊主の話も…

 

 

「…お主にまた、寂しい気持ちにすることが、申し訳なかった。それだけを謝りたかった…」

 

 

 …こんなの、まるで…まるでっ!

 

 

「…すまんかったのう。…それに楽しかった。嬉しかった。ありがとうなあ」

 

 

 

 …遺言じゃないか…

 

 

 

「そんなの駄目っ! そんなことが聞きたいわけじゃないっ!!」

 

 私はあわてて嫌な流れを止める。

 二人と最後の挨拶をするために、方相氏を呼んだわけじゃないんだ!

 

「方相氏!」

「なんじゃ?」

「少しの間ってどれくらい? 三百年くらい?」

 

「「ぶふぉっ!」」

 

「…くくく」

 

 私の問いかけに、阿修羅と山坊主が揃って変な咳をし、猗窩座様が楽しそうに笑う。

 

「かかか、ずいぶん図々しいな。…さすがにそれを、少しの間とは言わんわな」

 

 方相氏が渋る。ここまでしたんだ。もっとサービスしろ!

 

 

「…わかった。三百年で、三万圓出す!

 京都で方相氏が祀られている、吉田神社に寄付する!!」

 

 

「…ちなみに、三万圓ってどれくらいの価値じゃ?」

 

 乗って来た!! やっぱりこいつ、割と俗物だ!!

 

「…京都ででっかい家が建てれるくらい」

 決して安くはない。でも、今の私だったら、無理すれば出せなくはない額だ。

「…まあ、良かろう。三百年な」

 

 勝った! …買った…の方かもしれないけど。

 

「…三百年後、また応相談ってことで」

 

 

 方相氏と、がっしり握手をする。商談成立だ。

 

 

「…えっと、これって」

「…どうなったんじゃ?」

 

 

「…くくく、お前らは方相氏に売られ、零余子に買われちゃったんだよ」

 

 

 

 …まあ、そういうことに…なるのかな?




大正コソコソ噂話
「大正元年の一圓の貨幣価値は、令和元年の一万円くらいになるかな。
 三万圓は、大体三億円くらい相当ってことで、結構奮発したよ。
 さすがに私のポケットマネーでは厳しいので、自然製薬の方から…ね。
 業務上横領? …ちゃ、ちゃんと会計には記載したから、大丈夫! …だよね?」
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