零余子日記   作:須達龍也

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キング・クリムゾン!



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 あれから、一年が過ぎた。

 

 上星卿の恩人という立場を得て、気に入られ、時には魅了も駆使しつつ、もうすっかりと卿の息子の婚約者という地位におさまっていた。

 ちなみに息子の譲三(じょうぞう)君は、まだまだ十歳のお子様です。魅了を使ってないのに、すっかり私の美貌にやられてます。

 いやー、まいったまいった。美しさは罪ですね。微笑みさえも罪です。

 

 ここでの生活は、まさに快適そのもの。

 さすがは華族様、ひっきりなしにお客様がやって来られます。もちろん、ありがたく血を頂きます。

 こちらから外に出る必要など皆無です。エサが向こうからやって来ます。まさに入れ食い状態です。

 

 私の血鬼術も進化しました。

 魅了をかけて血を吸って、その際に少量私の血を流し込みます。

 私の血は、あのお方の血と違って安心安全です。心臓に留まって、ちょっとした目印の役割を果たします。数百メートルくらいに近づけば、どこにいるのかわかります。

 それと、再度の魅了の触媒になります。目と目が合うだけで、簡単にすぐに魅了がかけれます。らくちんです。

 ただ、こちらだけが旨味を得ているわけではありませんよ。私の血には、その心臓の持ち主の自己治癒力とか、免疫力とかを高める効果があります。

 お互いに良い関係なのが、長く付き合えるコツなんですよ。

 

 もちろん、食事以外も完璧です。

 衣服だって、部屋にいるだけで、呉服屋が生地持ってやって来ます。ついでに血も吸います。

 住環境も言うことなしです。

 日の当たらない客室を、自室として頂きました。

 働かざる者、食うべからず…と、巷で最近言われだしておりますが、私は一切働きません。…もちろん、少しだけ心苦しいのですが、むしろ働いたら負けだと思って、その心苦しさに打ち勝っています!

 

 では、どうやって暇をつぶしているのかって?

 この家の書斎には、古今東西の珍本奇本が揃ってます。

 ベッドでゴロゴロしながら本を読んだり、備え付けの机でダラダラと日記を書いたりしています。あー、忙しい忙しい。

 

 そして、忘れてはいけない、素敵なものがここにはあります!

 

 

 なんと、この家にはお風呂があるのです!!

 

 

 私が生まれ育った家も立派だったのですが、田舎だったのでお風呂などついておりませんでした。

 夏は行水、冬はお湯で体を拭くしかなかったのですが、ここでは違います。

 庶民は銭湯に行くしかなく、公共の場に出られない私は、行水するしかなかったのが、ここでは違うのです!

 

 お風呂すごい、お風呂さいこー。

 

 こんな風に、素敵で無敵な一年を過ごしておりました。

 もちろん、これからの計画も万全です。

 上星邸へのお客様は、この一年で五百人を超えております。そしてもちろん、その全員に印をつけております。

 華族のお客様は、それ相応の家格や財産の持ち主です。

 何年か後に、上星邸を出て行った時には、彼らのお宅に訪問し、そのまま寄生…こほん、居候の予定です。

 

 完璧です。

 

 人生…いえ、鬼生がこんなに楽勝でいいんでしょうか?

 

「いいんです!」

 

 薔薇色の未来を夢見て、ベッドの上で仁王立ちし、高らかに笑っちゃいます!

 

 

「零余子ちゃん、大勝利ー!!」

 

 

 べべんっ!

 

 

 

「…楽しそうだな」




明治コソコソ噂話
「働かざる者、食うべからず…って言葉は、明治時代から使われるようになったらしいよ。
 割と最近だと思うよね。
 これは聖書に書かれている言葉だから、江戸時代は表立って使えなかったとも言えるかもね」

ちなみに、働いたら負け…は平成時代からですよ。
伝説のニートが使った言葉です。
それを百年以上先取りする零余子ちゃん、そこにシビれる! あこがれるゥ!
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