零余子日記   作:須達龍也

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そろそろ、那田蜘蛛山編も終わりそうです。
…というか、思ったより長くなったというのが、正直な感想なんですけどw

今回は、零余子日記では初かもしれない、第三者視点でお送りします。



那田蜘蛛山8

 ガンッ…ギンッ…ガガンッ!!

 

「流麗!! 練り上げられた剣技だ。素晴らしい!」

 

 拳打と剣戟、その打撃音に紛れて鬼の言葉が響く。

 

 ダンッ…バシッ…ダダンッ!!

 

「名を名乗れ、お前の名は何だ!! 覚えておきたい!!」

 

 鬼の誰何の言葉に、鬼狩りが返事をする。

 

「鬼に名乗るような名は持ち合わせていない。…俺は喋るのが嫌いだから、話しかけるな」

 

 だが、その返答は剣戟同様に鋭く、にべもない。

 

 

 ガガンッ!!

 

 

 訪れる一瞬の空隙…

 

「…そうか、名前を知らないと恰好がつかないが、いい提案がある」

 

 そこで、鬼が言葉をかける。

 

 

 

「お前も鬼にならないか?」

 

 

 

 鬼の笑顔は、その提案がこの上ないと信じてのものだった。

 

「ならない」

 

 それに対する答えは、これまで以上にバッサリとしたものだった。

 

「…あのお方は、今は鬼を増やすのに積極的ではないが、俺からの…いや、俺と零余子の推薦があれば、大丈夫だ」

 

 鬼狩りの答えを聞いているのか聞いていないのか、鬼が更なる勧誘を行う。

 

「ならない」

 

 鬼狩りの返事は変わらない。

 

「…なぜだ? ここまでの強さを得るために培った鍛錬努力は、相当なものだろう。強さを求めていないはずがない。強くなりたくはないのか?」

 

 心底わからないとばかりに、鬼が疑問の声を上げる。

 

「…鬼になっては、意味がない」

 

 鬼狩りの言葉も、鬼の疑問に正確に返しているとは言い難かった。

 

「…はて、…考えられるのは、鬼への恨みか、憎しみか?」

 

「………」

 

 それに対する、鬼狩りの返事はない。言葉にするまでもないということだろう。

 

「…だが、それは違うぞ…」

 

 その言葉を発する鬼の表情は、一変していた。

 

「…お前が恨んでいるのも、憎んでいるのも、鬼じゃない…」

 

 

 

「…かつての自分だ。…何一つ守れなかった、おのれ自身だ…」

 

 

 

「…っ!」

 

 

「…上には上がいる。今の自分の力では足りないかもしれない。守り切れないかもしれない! ああすればよかった、こうすればよかった! そんな後悔をしないために力を渇望しろ! 手段を取捨選択するなど、ただの贅沢だ!!」

 

 

 それは軽い勧誘なんかではなかった。…慟哭? …懺悔? 魂から振り絞られたものだった。

 

 

「…お前は…」

 

 

「………俺は、何を言っているんだ?」

 

 その言葉に、一番驚いているのは、言った当の鬼だった。

 

「…お前が鬼にならないというなら、それはもういい」

 

 鬼が静かに構えなおす。

 

「…もう殺す。…お前が、あいつの前に立つかもしれない前に…」

 

 

 その場へ、更なる乱入者…

 

 

 

 …蟲の呼吸…蜂牙ノ舞…真靡き…

 

 

 

 横合いからの、恐ろしい速さで繰り出された突きを、凄まじい反応速度で払われた右拳にて方向を変える。

 

 ビッ…

 

 右手の甲に、一筋の血がはしる。

 

 

 

 …花の呼吸…伍ノ型…徒の芍薬(あだのしゃくやく)…

 

 

 

 最速の突きの次は、連撃…一瞬の間での九つもの連撃にて、鬼を殺らんとする。

 

「…女か」

 

 奥義ではなく、拳打で一つずつ丁寧に…だが恐るべき速さで払い落とす。

 

「退きますよ、冨岡さん!」

 

「わかった」

 

 女は一当たりしての即決で、撤退を決め、男も即座にそれに対応する。

 

 

「…逃がすか」

 

 

 

 …術式展開…終式…

 

 

 

「…ぐっ」

 

 展開しようとした奥義は、かすかに感じたズレに阻まれる。

 

「…毒…か」

 

 ギィリィィイィィ!!

 

 毒の威力そのものよりも、毒であるということに、怒りが込み上がり…しかし、それをかみ殺す。

 

「…遅れました!」

 

「…敵は!?」

 

 鬼狩りが撤退後に、阿修羅、山坊主がその場に到着し、その後…

 

 

 

「…猗窩座さまーー!!」

 

 

 

 能天気な笑顔で右手をぶんぶん振りながら、楽しそうな声と共に女の鬼がやって来た。

 それを目にとめ…

 

 

 

「…ふっ、無事で良かった…」

 

 

 

 鬼とは思えないような、優しい笑顔を向けた。




猗窩座様、なんかいろいろ、変わって来てます。

鬼になった奴は幸せになったらダメなのか?…許せない気持ちはわかるんですけど
どんなになっても、幸せになりたいと願っても、いいと思うんです。
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