…というか、思ったより長くなったというのが、正直な感想なんですけどw
今回は、零余子日記では初かもしれない、第三者視点でお送りします。
ガンッ…ギンッ…ガガンッ!!
「流麗!! 練り上げられた剣技だ。素晴らしい!」
拳打と剣戟、その打撃音に紛れて鬼の言葉が響く。
ダンッ…バシッ…ダダンッ!!
「名を名乗れ、お前の名は何だ!! 覚えておきたい!!」
鬼の誰何の言葉に、鬼狩りが返事をする。
「鬼に名乗るような名は持ち合わせていない。…俺は喋るのが嫌いだから、話しかけるな」
だが、その返答は剣戟同様に鋭く、にべもない。
ガガンッ!!
訪れる一瞬の空隙…
「…そうか、名前を知らないと恰好がつかないが、いい提案がある」
そこで、鬼が言葉をかける。
「お前も鬼にならないか?」
鬼の笑顔は、その提案がこの上ないと信じてのものだった。
「ならない」
それに対する答えは、これまで以上にバッサリとしたものだった。
「…あのお方は、今は鬼を増やすのに積極的ではないが、俺からの…いや、俺と零余子の推薦があれば、大丈夫だ」
鬼狩りの答えを聞いているのか聞いていないのか、鬼が更なる勧誘を行う。
「ならない」
鬼狩りの返事は変わらない。
「…なぜだ? ここまでの強さを得るために培った鍛錬努力は、相当なものだろう。強さを求めていないはずがない。強くなりたくはないのか?」
心底わからないとばかりに、鬼が疑問の声を上げる。
「…鬼になっては、意味がない」
鬼狩りの言葉も、鬼の疑問に正確に返しているとは言い難かった。
「…はて、…考えられるのは、鬼への恨みか、憎しみか?」
「………」
それに対する、鬼狩りの返事はない。言葉にするまでもないということだろう。
「…だが、それは違うぞ…」
その言葉を発する鬼の表情は、一変していた。
「…お前が恨んでいるのも、憎んでいるのも、鬼じゃない…」
「…かつての自分だ。…何一つ守れなかった、おのれ自身だ…」
「…っ!」
「…上には上がいる。今の自分の力では足りないかもしれない。守り切れないかもしれない! ああすればよかった、こうすればよかった! そんな後悔をしないために力を渇望しろ! 手段を取捨選択するなど、ただの贅沢だ!!」
それは軽い勧誘なんかではなかった。…慟哭? …懺悔? 魂から振り絞られたものだった。
「…お前は…」
「………俺は、何を言っているんだ?」
その言葉に、一番驚いているのは、言った当の鬼だった。
「…お前が鬼にならないというなら、それはもういい」
鬼が静かに構えなおす。
「…もう殺す。…お前が、あいつの前に立つかもしれない前に…」
その場へ、更なる乱入者…
…蟲の呼吸…蜂牙ノ舞…真靡き…
横合いからの、恐ろしい速さで繰り出された突きを、凄まじい反応速度で払われた右拳にて方向を変える。
ビッ…
右手の甲に、一筋の血がはしる。
…花の呼吸…伍ノ型…徒の芍薬(あだのしゃくやく)…
最速の突きの次は、連撃…一瞬の間での九つもの連撃にて、鬼を殺らんとする。
「…女か」
奥義ではなく、拳打で一つずつ丁寧に…だが恐るべき速さで払い落とす。
「退きますよ、冨岡さん!」
「わかった」
女は一当たりしての即決で、撤退を決め、男も即座にそれに対応する。
「…逃がすか」
…術式展開…終式…
「…ぐっ」
展開しようとした奥義は、かすかに感じたズレに阻まれる。
「…毒…か」
ギィリィィイィィ!!
毒の威力そのものよりも、毒であるということに、怒りが込み上がり…しかし、それをかみ殺す。
「…遅れました!」
「…敵は!?」
鬼狩りが撤退後に、阿修羅、山坊主がその場に到着し、その後…
「…猗窩座さまーー!!」
能天気な笑顔で右手をぶんぶん振りながら、楽しそうな声と共に女の鬼がやって来た。
それを目にとめ…
「…ふっ、無事で良かった…」
鬼とは思えないような、優しい笑顔を向けた。
猗窩座様、なんかいろいろ、変わって来てます。
鬼になった奴は幸せになったらダメなのか?…許せない気持ちはわかるんですけど
どんなになっても、幸せになりたいと願っても、いいと思うんです。