もうちょっと、さくっと書ける予定だったのになあ。
柱合会議…それは、鬼殺隊当主と柱による、鬼殺隊が今抱えている課題と、今後のこれからを話し合う、重要な会議である。
「…それでは、柱合会議を始めようか」
庭を一望できる場所に、娘たちの手を借りて座した男…産屋敷耀哉が、そう口を開いた。
「まずは、聞いている者も多いとは思うが、那田蜘蛛山についてだ」
庭で集まっている柱達も、二人を除いてかすかに反応する。
「事の始まりは、那田蜘蛛山にて多数の人間が行方不明になっているとの話があって、その調査及び解決のために、隊士を派遣した」
そこで沈痛な表情を浮かべる。
「…ただ、私の見積もりが甘く、烏たちからもたらせられた報告は非常に厳しいものだった。十二鬼月の存在をほのめかす報告自体はなかったが、いると想定して義勇としのぶにすぐに行ってもらった」
「そこからは私が」
胡蝶しのぶが、そこからの話を引き継いだ。
「隠部隊を率いて後から来るようにカナヲに指示を出した後、冨岡さんと二人で那田蜘蛛山に向かいました」
「……」
しのぶがチラリと伺ったが、冨岡義勇はまっすぐ前を見たままで、特に補足事項はないようだ。
「到着した那田蜘蛛山の様子は、…ひどいものでした。二十人近かった隊士のほとんどは死亡か、蜘蛛になりかかっておりました」
「…蜘蛛になる?」
聞いていなかった…というか、まず聞くことはない状態に、不死川実弥が聞いた。
「…毒、です。特殊な血鬼術と組み合わされていて、その毒を食らってしまうと蜘蛛のような体に変化してしまいます。更には、脳にも障害が出てしまうようです」
救えなかったことへの悔しさが、言葉ににじみ出ていた。
「その毒も、例の十二鬼月の…どいつかの仕業か?」
胸糞が悪いという感情のまま、実弥が聞く。
「…さて、記憶の混濁の薄かった者の記憶では、蜘蛛の体を持つ鬼の仕業らしく、その鬼自体は、二本の刀…それも、違う色の日輪刀を持った隊士に首を刎ねられて死んだ…とのことです」
「…違う色? お師匠様のでも借りていたんでしょうか?」
甘露寺蜜璃が小首をかしげながら聞いた。
「…だったら、良かったんですけど。…それはまた、後程…」
言葉を濁した。
「…その後、冨岡さんと二手に分かれたのですが、…少し嫌な感じがしたので、カナヲに隠部隊から離れて、すぐに来るように烏を飛ばしました」
「…そして、下弦の肆に会いました」
「ほう! 成宮さんが言っていた十二鬼月だな!」
煉獄杏寿郎が聞き覚えのある鬼に、反応して言った。
「…俺の記憶では、そいつは確か、お前が殺したんじゃなかったか?」
伊黒小芭内が、頭に指を当てて記憶を探るように尋ねた。
「…致死量の毒は打ち込んだので、おそらく…という言い方だったはずです。断定はしませんでした」
反論はするが、弱弱しいものになる。しのぶ自身も、そう思っていたからだ。
「…でも、所詮、下弦の肆でしょ」
時透無一郎がめんどくさそうに、そう言った。
「…何が…とは、はっきり言えないが、かなり危険な感じがした…」
しのぶの言葉に、みんなが黙る。
「…成宮さんがそう言った意味、今ではわかる気がします」
「へぇ、下弦とは思えないような、ド派手なことをしやがったのか?」
宇髄天元が興味深そうに聞いてきた
「…そうですね。どこかで聞いた下弦の壱のような鬼…を、二体連れていました」
「…よく、わからないな」
悲鳴嶼行冥が、そのまわりくどい言い方に、疑問を呈した。
「一体は、腕は二本でしたが、侍のような鬼で、こいつが二本の色違いの日輪刀を持っていました」
「蜘蛛鬼を殺したって奴か!?」
「おそらくは」
実弥の疑問に、うなずいて返した。
「もう一体は、僧兵のような恰好の金棒を振り回す鬼でした」
「…その鬼!?」
「…腕は二本でしたが…って、そういう意味か!?」
小芭内と実弥が、驚きと怒りの声をあげる。
「…俺たちが殺し損ねたと言いたいのか?」
「…ふざけるなよ、確認もしねぇで、適当な報告をあげたとでも言うつもりか?」
二人の声は、怒りを超えて、殺気すら孕んだものになっていた。
「…もちろん、そんなことはありえないでしょう。…それに、その二体は鬼なのかも怪しいものでした」
「どういうことだ?」
行冥が聞いた。
「…僧兵の鬼の胸を刀で貫いたのですが、感触が肉ではありませんでした。…何と言いますか、重くて粘る泥沼に突きこんだような感触で、どれだけ硬かろうとも、肉の体では決してありえないものでした」
「…下弦の壱を生き返らせた? …いや、それとも、鬼に似た何かを作り上げる能力なのか? …どちらにせよ、下弦の持つ能力とは思えないな」
耀哉が独り言のようにつぶやく。
「…その二体に加え、下弦の肆にも、私の毒は通じませんでした」
しのぶが悔しそうに、そう報告した。それは、できれば隠しておきたい事実のはずだ。しのぶを柱にまで押し上げた力…それが、上弦ですらない下弦にも通じなかったという事実は、柱失格の烙印を押されても仕方がなかった。
「…報告ありがとう。それはつらかったね」
「…いえ、それが事実ですから」
耀哉の言葉に、静かに返した。
「それから、カナヲの助けを受けて撤退、冨岡さんの方へ向かいました」
実は、兄と父はいらないなあ…と思った、悪い子の仕業でした。
なんて、悪い子!