まあ、無惨様は上弦とも会議にはならないんですけどね。
基本、パワハラ会議にしかならないw
今日も今日とて、お茶会です。
黒い着物の無惨様、黒い着物の黒死牟様、朱い着物の私、でも、頂いているのはカステラで、合わせるのはお紅茶です。私が用意しましたよー。
和やかな雰囲気で始まったんですが、私の一言で、一気に悪くなってしまいましたよ。
「鬼殺隊潰すの、やめませんか?」
「…あ゛ぁ?」
うわっ! こわっ!!
「…どういうことだ? お前じゃなければ、とりあえず殺していたところだぞ」
とりあえずでは殺さないけど、殺さないとは言ってない!
「話を! 話を聞いてください!」
おなかがきゅ~~~っとなる。久しぶりの感覚だが、嬉しくもなんともない。
「…言ってみろ」
激烈に怒ってる。…まあ、わからなくはないんだけど。
「鬼殺隊を潰すと、雑魚鬼が図に乗ります」
「…うん?」
「雑魚鬼が図に乗ると、日本の文明とか文化が壊れます。それは避けたいです」
「…ん~~」
「わかり… づらいな…」
とりあえず、話を聞いてくれそうなくらいには、怒りが治まって来ているように感じた。
「えっと、まず雑魚鬼…というか、鬼が怖れるものは、三つあります」
話を聞いてくれる態勢になったのを感じて、最初から話をします。
「これは鬼の死因と言いかえてもいいです。その数を三つもあると思うか、三つしかないと思うかはそれぞれですけど、…私は三つしかないと考えてます」
右手の人差し指をぴっと立てて、話を続けます。
「一つ目は、太陽です。
これはどんなにバカな鬼でも、本能的に知っています。だから、鬼は基本的に夜しか活動しません」
次に中指も立てます。
「二つ目は、鬼殺隊です。
少し図に乗り出した雑魚鬼が、非常によくやられます。自分が強いと図に乗って、町や村で大暴れなんてすると、確実に鬼殺隊がやって来て、たいがいやられます」
無惨様と黒死牟様から、特に反論は出ない。むしろ私よりも知っている事実だろう。
「この対策としては、目立たないようにこっそりやるか、鬼殺隊に負けないくらいに強くなることなんですが、弱い隊士に勝てるようになっても、今度は強い隊士が来ますし、強い隊士に勝てるようになっても、次は柱が来ます。
上弦くらいにまで強くなれば、柱にも勝てるんでしょうが…そこまで強くなれる鬼なんて、そうそういません。もちろん、雑魚鬼は言うまでもないです。
だから、少し学んだ雑魚鬼は、目立たないように陰に潜むようになります」
最後に薬指を立てます。
「三つ目は、無惨様です。
これはほんと、どうしようもないです。諦めるしかないですね。はい」
「……」
無惨様が憮然とした表情をするが、まごうことなき事実ですよ。
「それだと… あれだな…」
黒死牟様がティーカップから口を離して、そう言った。所作が綺麗だと、実に優雅に見えますね。
「今なら… 四つ目も… あるな…」
「四つ目?」
「…ふはっ、確かにそうだな」
はてと思う私をよそに、無惨様はわかったのか、楽しそうに笑いだします。
「四つ目は、お前だ、零余子」
「ぅぇえー?」
「ここ数年は、私よりもお前のほうが鬼を殺しているぞ。間違いなく倍は殺してる」
「ぅぐっ!」
確かに、関西方面に柱が来ないように、周辺の鬼にはいなくなってもらってる。…まあ追い払うというよりは、いろいろと実験に使いつぶした感じではあるんだけど、…あるんだけどさあ…
「…まあ、とにかく、雑魚鬼が怖れるのは、その三つしかないわけで…」
「…四つだろ」
仕方なく、小指も立てる。
「…四つしかないわけでっ!
太陽と無惨様はどうしようもないですけど、鬼殺隊には対策があります。
大人しくしているか、こっそりと目立たないようにすれば、鬼殺隊…まあ、私からも逃げられます」
人差し指と薬指を戻すと、中指と小指だけが立っている状態になる。…逆だと指が攣りそうになるね。
「…ただ、仮に鬼殺隊がなくなると、雑魚鬼が大人しくすることも、目立たないようにする理由もなくなります」
中指を戻し、ついでに小指も戻す。
「雑魚鬼と言っても、あくまでも私達…いえ、私から見て雑魚なだけで…」
無惨様と黒死牟様から見れば、私も十分に雑魚なので、言い直す。
「…普通の人間は相手になりません。死なない猛獣のようなもので、それこそ村や町あたりだったら、壊滅させれます」
最初に私の生まれた村に出た鬼も、山から村に出てきていれば、一週間もかからずに村を喰らい尽くしていただろう。…色々なければ、そして鬼殺隊が来なければ、そうなっていたかもしれない。
「あちこちでそんなことになれば、日本はガタガタになります。今の文化文明は、確実に後退するでしょう」
文化や文明なんて、平和だからこそ花開くというものだ。命の危険が間近にあって、のんきにお茶やお花を楽しむ奴なんていやしない。
「…無論、人間に代わって無惨様が日本を統治するおつもりならば、それはそれで問題はありません」
「…そんなつもりはないな」
無惨様がめんどくさいと言いたげな、渋い顔をする。
「それならば、鬼殺隊は置いておいたほうがいいと、愚考致します」
私のここまでの説明に、無惨様がおとがいに手を当てて考えられる。
「…お前はここまで、鬼殺隊があることのメリットについて話したが、デメリットもまた、存在するよな」
「もちろん、デメリットもあります。
大人しくしてようが、目立たないようにこっそりとしていようが、鬼殺隊に逢ってしまえば、戦闘になります。
その勝敗…生死については、互いの力量差によりますが、確実に勝てるのは上弦くらいで、他の鬼はやられてしまう可能性があります」
そんなことは改めて言わなくてもわかることで、だからこそ、これまでは鬼殺隊を潰そうとしていたのだ。
「…でも、鬼殺隊がいるから、鬼は大人しくしてなければならない、大っぴらに動けない、そもそも頭数を減らしたくない。…それって、単に捜索の邪魔だったってだけですよね」
何の捜索の邪魔だったかなんて、言うまでもない。
「…言いよるわ。目的は果たしたんだから、あとはどれだけ鬼が死んでもいいだろうって言いたいわけだ」
「まあ、そこまでは。…それにあと数年もすれば、十分な数の薬ができます。大事な鬼の分は賄えると思います」
肯定はしないが、否定もしない。
「…日輪刀は、太陽の力を十分に取り込んだ鉄を鍛えているから、首を斬ることで鬼を殺せるそうです。
…つまり、太陽を克服した鬼には、日輪刀は効かないと考えられます」
まだ実際に検証はしていないが、おそらく間違いないと思う。
「あとは、毒ですが…これもまあ、対策をとれば問題はないかと」
毒の耐性をつけるとは、慣れるということだ。少しずつ取り込んで慣らして行けば、問題はなくなる。
「そうか… もう… 鬼殺隊は…… 敵では… ないのか…」
黒死牟様が、そうしみじみと言った。
そこに乗った感情は、私如きでは推し量ることはできない。
「…ふん、言いたいことはわかった」
無惨様がそう言って、紅茶を飲む。
「…ただ、なぜ今になって言った?」
「…と、おっしゃいますと?」
できるだけ動揺が出ないように返事をする。
「…ようは、鬼殺隊の本拠地を見つける目途が立った、…そういうことだろう」
…なんでわかるんだろう…
「…あー、まあ、なんといいましょうか…」
ぐるぐると言い訳を考えるが、…何も思いつかない。
「…そうですね。…多分、簡単に見つけられると思います」
正直に、告白した。
「ほう、どうやってだ?」
無惨様が、にやにやしながら聞いてくる。
「先程の日輪刀の話もですが、鬼殺隊の隊士から魅了で聞きだしたことが、いくつかあります」
鬼殺隊の隊士を、十人以上は魅了した。さすがに柱はいないけどね。…あれ、そうだよね?
「鬼殺隊に入隊する最終選別試験、それが藤襲山(ふじかさねやま)というところで行われるそうです。
藤襲山は、山の全周に藤の花が年中咲いている為、鬼はそこに近づけないし、その山に放り込んだ鬼も出てこれない。そんな山だそうです」
…だそうですって言っているけど、毒の原料である藤の花を取るために、実際に行った。それも、何度も。
毒が効かない山坊主と阿修羅を連れて、結構な量の藤の花を取って来ては、研究をした。何度も、何度もね。
「その藤襲山で、最終選別試験が、年に数回行われるようで…」
「…その最初と最後に、必ず産屋敷の一族の者が立ち会うらしいです」
「…ほう」
「鬼殺隊士は、本拠地にまで行くかどうかはわかりませんが、産屋敷の…当主の一族の者でしたら、まず間違いなく本拠地に戻るはずです」
「…最終選別試験が、いつ行われるのかはわかるのか?」
無惨様が、目を細めて聞いてきた。
「藤襲山の中にいる鬼を、数体魅了しております。…だいぶ強めにかけたので、離れていても視界の把握が可能です」
前に十七子ちゃんを影武者にした時の応用だ。あんまり多すぎると頭が混乱するけど、数体くらいだったら問題ない。
私の返事に満足したのか、無惨様がくっくっくと笑う。
「お前はバカだが、優秀だな」
…えっと、褒められた? …んだよね?
「鬼殺隊をどうするかはともかく、本拠地は押さえておきたい。最終選別試験とやらが行われたら、なんとしてでも本拠地を見つけ出せ」
「はっ」
頭を下げて命令を受諾するけど、ちろりと上目遣いで無惨様を伺う。
「悪いようにはしない、心配するな」
そう言われて、ホッとする。
「鬼殺隊を潰しても、雑魚鬼を殲滅すればいいんだろう?」
「…ひぁ!」
くっくっくと楽しそうに笑ってらっしゃるけど、冗談ですよね? …ねぇ!?
さすがに雑魚鬼一掃の引き金を、私が引いたなんてのは、胃に悪すぎるんですけどっ!!
黒死牟様の時とは、入隊条件とか変わっているんでしょうけど…
最終選別試験をやった隊士を鬼にしたことがないのだろうか?
常に決まった場所でやっていることがあって、そこに重要人物が来るのって
だいぶやばいと思うんだけどなあ。