無惨様と一年ぶりの再会です。
「…楽しそうだな」
聞いたことのある声です。そして、忘れることなどない声です。
すぐさま、土下座へと移行します。
「…しばらく見ないうちに、実に楽しそうにやっているではないか」
顔は見たことありませんでしたが、無惨様の声に間違いないです。
そして、滅茶苦茶怒っていることも、間違いないです。
「…そ、そんな、滅相もございません」
ひたすら謝る以外に手はないです。頭を下げて、ただただ怒りがおさまるのを待つしかありません。
「…私は鬼にしたものは、大体一年を目途でどうなったかを確認することにしている」
初耳です。できれば最初に言っておいて欲しかったです。
「私はこの千年で、たくさんの鬼を作ってきたが…」
無惨様が、無駄にためます。私は額を板の間にこすりつけます。これ以上は下がらないくらい頭を下げます。
「貴様ほどに自堕落な鬼は、そうそうおらぬわっ!!」
ピシャーーン…と、稲妻が走ったのが見えた気がします。
「この一年で、貴様は何人の人間を喰った? どれくらい強くなった? どれだけの鬼殺の剣士を葬った? 一体全体どのようにして私の役に立つつもりだ?」
やばいやばいやばいやばい…このお怒りは、到底おさまりそうにはないです。
「人を喰う気もない。強くなるつもりもない。戦う気なんてまるでない。そんな役立たずで無駄な鬼を、なんで生かしておく必要がある? 言ってみろ!」
あ、これ死刑通告だ。何かを言わないと殺される奴だ。…言っても殺される可能性が高いけど。
「二か月…いえ、一か月だけ猶予を下さい。お願い致します!」
「ほう、待ってどうなる?」
「一か月後、入れ替わりの血戦を申し込みます。そして見事に十二鬼月となって、ご覧に入れます」
「ほほう、一か月後にか? この一年で一人も喰っておらぬお前が、入れ替わりの血戦を勝ち抜くほど強くなると言うわけだな?」
「はい! その通りでございます!」
「いいだろう、見事十二鬼月となった暁には、今回は許してやろう」
「ははぁ、ありがとうございます!」
「無論、なれなかった場合は、即刻殺してやる!!」
べべんっ!
言っちゃった…つい言っちゃったよ。
「ああ、天国から地獄に突き落とされた」
先刻高笑いをしたベッドの上で、うずくまるしかなかった。
「…とは言え、あの場においては、あれ以外に生き残る道はなかったよね」
むしろ、うるさい、黙れ、死ねって殺されている可能性だってあった。
それでも…
「…十二鬼月は、目指すつもりはまったくなかったんだけどねえ」
無惨様って、どれだけ自分の役に立つかを、重要視しているのは間違いないけど、
自分みたいな性格の奴は、嫌いだよね。
零余子ちゃんは「柱に会ったら逃げよう」って子だけど、
勝てないから逃げよう、死にたくないから逃げようって、
無惨様にそっくりな思考回路だと思うんだ。