零余子日記   作:須達龍也

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人生、うまくいく時ばかりではないですねえ。
そんな時、どう我慢できるかです。


最終選別試験7

「それでさ、宿泊場所ってどこなのかな?」

 

 

「「「…は?」」」

 

 私の極めて当たり前な質問に、三人が三人とも同じ顔をして聞き返してきた。

「寝るところだよ。柱の人は説明してくれなかったよね。頂上にあるのかな?」

 私がもう一度聞いた。

 

「…お前は、何を言っているんだ?」

 

 鳴ちゃんの察しが悪すぎる。

「一週間、この山で過ごすんだよね? じゃあ、泊まるところは必要でしょ」

「必要だな。一週間の不眠不休は、さすがに無理だ。寝床の確保は必須だな」

 うんうん、当然だよね。

「私、枕が変わると寝付けなくなるかもしれないんだけど、まあ、それは我慢するとして、布団は柔らかいのがいいなあ」

 

「……お前は、何を言っているんだ?」

 

 鳴ちゃんが、また変な事を聞いてくる。

「だから、どっかに宿泊場所が用意されてるんだよね? お風呂は、さすがにないのかなあ」

 風呂なし一週間かあ。うう、イヤだなあ。

 

「…………あ…」

「…あ?」

 

 

 

「あるか、ボケェーーーー!!!!!」

 

 

 

「うう、やっぱり、お風呂はないかあ」

「風呂じゃねえ! いや、もちろん、風呂もないが、宿泊場所なんか、用意されてるわけないだろーー!!」

 

「…は?」

「いや、は?…じゃねえよ! むしろ、なんであると思ってたんだよ!」

 

「睡眠は大事なんだよ!」

「睡眠は大事だから、ないんだよ!」

 

 えっ? ちょっと待って…くらっとして来た。

 

「…あれ? もしかして、野宿?」

「もしかしなくても、野宿だよ!」

 

 がっくりと、膝から崩れ落ちる。

「…うそぉ…」

「…それは、こっちが言いたいよ」

 鳴ちゃんも、頭を抱えている。

 ゆっくりと、辺りを見渡す。

 

 うん、文明のぶの字も見当たらない。

 

 

「うん、無理」

 

 

「…は?」

「こんなところで一週間とか、絶対無理。私、降りるね」

 こんな山、さっさと降りて、お家に帰ろう。

「いやいや、不合格になるよ!」

「しょうがないね」

「さっき、四人で合格しようって、言ったばかりじゃないの!」

「三人で頑張って」

 

「諦めんな! 頑張れ未来、頑張れ!!

 未来は今までよくやってきた!! 未来はできる奴だ!!」

 

 がっくん、がっくんと揺らされる。

 

 

 でも駄目だよ、私の意思は固いよ!

 

 

 

「…ぷっ! あはははははは!!!」

 

 

 

 私と鳴ちゃんで、そっちを見る。

「あはっ、あははっ、…ぷふっ、ごめんなさい」

 雪ちゃんがお腹を抱えて笑ってた。

「…ふふ…んっ、……ふふふ…」

 薫ちゃんも、そっぽを向きながら、口を押えていた。

「あー、おかしい! あんなにすごい成宮さんが、野宿が嫌だからって」

「…ふふふ、すごい人なのに、急に普通の女の子みたいにって思ったら」

 なぜか笑われてる。…解せぬ。

 

「…あー、そういえば、未来は技の稽古ばっかりで、野外生存訓練とかしてなかったかあ」

 

「…なにそれ?」

「文字通り、野外で生存するための訓練よ。

 水場を確保したり、寝る場所を作ったり、食材を見つけたり、そういった野外で生きる為に必要なことを覚える訓練があるのよ」

「成宮さんは、その訓練をせずに最終選別試験に来たんですか?」

 薫ちゃんが、びっくりしたように聞いてきた。

「…未来はさ、物覚えが良すぎたから。…師匠が技の詰め込みに熱中しちゃって…」

 鳴ちゃんが、明後日の方を見ながら、そう言った。

「天才ゆえの、抜けってやつですね」

 雪ちゃんが、ふむふむと頷いている。

 

 私抜きで話が広がったので、ぼけーっとしていたら、薫ちゃんにぎゅっと手を握られた。

 

「成宮さん、助けてくれたお返しじゃないですけど、そっちは私に任せてください」

「薫ちゃん、私じゃなくて私達だよ! 水場の確保は任せてよ」

「師匠の尻拭いは、姉弟子の仕事だね。実地で教えてあげるから」

 

 ああ、うん。…これ、もう降りれない奴だ。

 

 さすがにここから、いや私は降りるからとは、ちょっと言えないね。

 

 

 覚悟を決めて、微笑んで、言った。

 

 

 

「…薫ちゃんに雪ちゃん。未来、でいいからね」




鬼滅SS史上初の、野宿が嫌で最終選別試験不合格の主人公になり損ねましたw
いや、たくさんある鬼滅SSだと、いたりするんだろうか?
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