そんな時、どう我慢できるかです。
「それでさ、宿泊場所ってどこなのかな?」
「「「…は?」」」
私の極めて当たり前な質問に、三人が三人とも同じ顔をして聞き返してきた。
「寝るところだよ。柱の人は説明してくれなかったよね。頂上にあるのかな?」
私がもう一度聞いた。
「…お前は、何を言っているんだ?」
鳴ちゃんの察しが悪すぎる。
「一週間、この山で過ごすんだよね? じゃあ、泊まるところは必要でしょ」
「必要だな。一週間の不眠不休は、さすがに無理だ。寝床の確保は必須だな」
うんうん、当然だよね。
「私、枕が変わると寝付けなくなるかもしれないんだけど、まあ、それは我慢するとして、布団は柔らかいのがいいなあ」
「……お前は、何を言っているんだ?」
鳴ちゃんが、また変な事を聞いてくる。
「だから、どっかに宿泊場所が用意されてるんだよね? お風呂は、さすがにないのかなあ」
風呂なし一週間かあ。うう、イヤだなあ。
「…………あ…」
「…あ?」
「あるか、ボケェーーーー!!!!!」
「うう、やっぱり、お風呂はないかあ」
「風呂じゃねえ! いや、もちろん、風呂もないが、宿泊場所なんか、用意されてるわけないだろーー!!」
「…は?」
「いや、は?…じゃねえよ! むしろ、なんであると思ってたんだよ!」
「睡眠は大事なんだよ!」
「睡眠は大事だから、ないんだよ!」
えっ? ちょっと待って…くらっとして来た。
「…あれ? もしかして、野宿?」
「もしかしなくても、野宿だよ!」
がっくりと、膝から崩れ落ちる。
「…うそぉ…」
「…それは、こっちが言いたいよ」
鳴ちゃんも、頭を抱えている。
ゆっくりと、辺りを見渡す。
うん、文明のぶの字も見当たらない。
「うん、無理」
「…は?」
「こんなところで一週間とか、絶対無理。私、降りるね」
こんな山、さっさと降りて、お家に帰ろう。
「いやいや、不合格になるよ!」
「しょうがないね」
「さっき、四人で合格しようって、言ったばかりじゃないの!」
「三人で頑張って」
「諦めんな! 頑張れ未来、頑張れ!!
未来は今までよくやってきた!! 未来はできる奴だ!!」
がっくん、がっくんと揺らされる。
でも駄目だよ、私の意思は固いよ!
「…ぷっ! あはははははは!!!」
私と鳴ちゃんで、そっちを見る。
「あはっ、あははっ、…ぷふっ、ごめんなさい」
雪ちゃんがお腹を抱えて笑ってた。
「…ふふ…んっ、……ふふふ…」
薫ちゃんも、そっぽを向きながら、口を押えていた。
「あー、おかしい! あんなにすごい成宮さんが、野宿が嫌だからって」
「…ふふふ、すごい人なのに、急に普通の女の子みたいにって思ったら」
なぜか笑われてる。…解せぬ。
「…あー、そういえば、未来は技の稽古ばっかりで、野外生存訓練とかしてなかったかあ」
「…なにそれ?」
「文字通り、野外で生存するための訓練よ。
水場を確保したり、寝る場所を作ったり、食材を見つけたり、そういった野外で生きる為に必要なことを覚える訓練があるのよ」
「成宮さんは、その訓練をせずに最終選別試験に来たんですか?」
薫ちゃんが、びっくりしたように聞いてきた。
「…未来はさ、物覚えが良すぎたから。…師匠が技の詰め込みに熱中しちゃって…」
鳴ちゃんが、明後日の方を見ながら、そう言った。
「天才ゆえの、抜けってやつですね」
雪ちゃんが、ふむふむと頷いている。
私抜きで話が広がったので、ぼけーっとしていたら、薫ちゃんにぎゅっと手を握られた。
「成宮さん、助けてくれたお返しじゃないですけど、そっちは私に任せてください」
「薫ちゃん、私じゃなくて私達だよ! 水場の確保は任せてよ」
「師匠の尻拭いは、姉弟子の仕事だね。実地で教えてあげるから」
ああ、うん。…これ、もう降りれない奴だ。
さすがにここから、いや私は降りるからとは、ちょっと言えないね。
覚悟を決めて、微笑んで、言った。
「…薫ちゃんに雪ちゃん。未来、でいいからね」
鬼滅SS史上初の、野宿が嫌で最終選別試験不合格の主人公になり損ねましたw
いや、たくさんある鬼滅SSだと、いたりするんだろうか?