夕方になり、鳴ちゃんたちを起こし、水場の方に向かう。
お風呂に入れない代わりに、交代して水浴びをする。
さすがに、その時は無防備になるので、見張りを三人体制にする。
水をかけ合う、きゃっきゃうふふな映像などない!
魚を獲って、枝にぶっ刺して、鳴ちゃんが持参していた塩を振り、たき火で焼く。
鳴ちゃんが、どうよーと自慢げな顔をしていたが、私的には重要度は低い。
もそもそと、何の味もしない焼き魚を、無理やり食べながら、塩の味もわかるようにしないとなと思った。
何度か鬼が襲ってきたが、鳴ちゃんはもちろん、雪ちゃん薫ちゃんでも対処できる雑魚鬼だった。
私はその様子を見ながら一句…
「
「中八は、あんまり良くないよ」
鳴ちゃん、うるさい!
朝が来る前に、寝床に戻る。
鬼の死体は残らないが、寝床を戦場として荒らしたくはない。
日が昇ると、私と雪ちゃんが先に寝る。昨日とは組み合わせを変えている。
「起こすのは、薫ちゃんがしてね」
鳴ちゃんの起こし方は駄目だ。
「わがままなやつだ」
わがままじゃないし。
今度は夢を見なかった。
まあ、夢の続きを見るのは難しいし、そもそも、あそこからの逆転はない。
「…異常者を選別するための、試験ですか?」
「そそ」
昨日薫ちゃんと話したことを、雪ちゃんにもする。
「んー、ひどい表現ですけど…わかる気もしますね」
雪ちゃんも、苦笑しながらも、同意してくれた。
「私の師匠のところ、私も含めて、五人の弟子と一緒に暮らしてるんですけど…」
そう言って、話を始めた。
「育手の師匠と、試験を突破していた兄弟子が一人、まだ試験を受ける前の弟子が、私を含めて四人いました。受験前の弟子の中では、私が一番上で…ううん、一番上になってしまってました」
ぽつぽつと、話してくれる。
「本当は兄弟子がもう二人いたんですけど、試験からは帰って来なくて、代わりになのか、新しく下に二人入りました。
私、弟弟子が二人、妹弟子が一人…全員、それまで鬼とは関わりあいがまるでなかった子達です。本当に鬼と関係なく、買われてきたか、拾われてきた子供たちです」
雪ちゃんは何を思うのか、そのよく表情が変わるはずの顔には、どんな感情も浮かんでいなかった。
「師匠と、鬼殺隊士になっていた兄弟子、その二人は…その二人だけが、鬼の被害者でした。
もちろん、だからといって、どうだということはありませんでした。厳しいけど優しい、優しいけど厳しい、いい人たちだと思います。
…でも、そうですね。鬼への憎しみ…執着は、異常でした。
…そう、感じてました」
「…なるほど」
鬼と関わりのある者と、そうでない者…いや、鬼に恨みがある者と、そうでない者では、そもそものこの試験へかける思いも、大きく違うだろう。
もっと言えば、鬼と関わりのまるでない者を、わざわざ買ったり拾ったりまでして、この試験に挑ませる、そこが異常だと思う。
いびつな組織だな。
一般人を鬼から守ると言えば、聞こえはいいが、内実は鬼への憎しみが土台の、鬼を殺すことに執着した者たちの組織だ。
歴史の闇にある、隠密集団や忍者の軍団、そんな風な、どこか闇を抱えた異常者の集団で…私が考えていた以上に、ぞっとするような組織だ。
こんな組織が、何百年も存在した!?
鬼への…無惨様への恨みと憎しみを糧に、ただただ其の為だけに、連綿とその刃を砥ぎ続けて来たのかと思うと、ゾワゾワとおぞ気が走るのが止まらない。
…鬼殺隊潰すの、やめませんか?
何を言っているんだ?…本当にそう思う。
うっとおしいとか、そんな軽いもんじゃない。ただただ、おぞましく、気持ちが悪い。こんなものと共存なんて、ありえない。
「…未来さん、顔色が悪いですね」
雪ちゃんのその言葉に、無理やり笑顔を浮かべて、応じる。
「…ううん、なんでも、ないよ」
腕に浮かんだ鳥肌をさすりながら、そう答えた。
無惨様に、思考回路が非常に似ている零余子ちゃん、こういう結論になりました。
鬼殺隊の存続に繋がるかと始めた、最終選別試験編だったのですが、思惑通りには行きませんね。