零余子日記   作:須達龍也

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いろいろと、思い悩んで、こうなりました。


最終選別試験10

 夕方になり、鳴ちゃんたちを起こし、水場の方に向かう。

 お風呂に入れない代わりに、交代して水浴びをする。

 さすがに、その時は無防備になるので、見張りを三人体制にする。

 

 

 水をかけ合う、きゃっきゃうふふな映像などない!

 

 

 魚を獲って、枝にぶっ刺して、鳴ちゃんが持参していた塩を振り、たき火で焼く。

 鳴ちゃんが、どうよーと自慢げな顔をしていたが、私的には重要度は低い。

 もそもそと、何の味もしない焼き魚を、無理やり食べながら、塩の味もわかるようにしないとなと思った。

 

 何度か鬼が襲ってきたが、鳴ちゃんはもちろん、雪ちゃん薫ちゃんでも対処できる雑魚鬼だった。

 私はその様子を見ながら一句…

 

 

聚蚊(しゅうぶん)や 鬼も(たか)らずば 討たれまい」

 

 

「中八は、あんまり良くないよ」

 

 鳴ちゃん、うるさい!

 

 

 

 朝が来る前に、寝床に戻る。

 鬼の死体は残らないが、寝床を戦場として荒らしたくはない。

 日が昇ると、私と雪ちゃんが先に寝る。昨日とは組み合わせを変えている。

「起こすのは、薫ちゃんがしてね」

 鳴ちゃんの起こし方は駄目だ。

「わがままなやつだ」

 

 わがままじゃないし。

 

 

 

 今度は夢を見なかった。

 

 まあ、夢の続きを見るのは難しいし、そもそも、あそこからの逆転はない。

 

「…異常者を選別するための、試験ですか?」

「そそ」

 昨日薫ちゃんと話したことを、雪ちゃんにもする。

「んー、ひどい表現ですけど…わかる気もしますね」

 雪ちゃんも、苦笑しながらも、同意してくれた。

「私の師匠のところ、私も含めて、五人の弟子と一緒に暮らしてるんですけど…」

 そう言って、話を始めた。

「育手の師匠と、試験を突破していた兄弟子が一人、まだ試験を受ける前の弟子が、私を含めて四人いました。受験前の弟子の中では、私が一番上で…ううん、一番上になってしまってました」

 ぽつぽつと、話してくれる。

「本当は兄弟子がもう二人いたんですけど、試験からは帰って来なくて、代わりになのか、新しく下に二人入りました。

 私、弟弟子が二人、妹弟子が一人…全員、それまで鬼とは関わりあいがまるでなかった子達です。本当に鬼と関係なく、買われてきたか、拾われてきた子供たちです」

 雪ちゃんは何を思うのか、そのよく表情が変わるはずの顔には、どんな感情も浮かんでいなかった。

「師匠と、鬼殺隊士になっていた兄弟子、その二人は…その二人だけが、鬼の被害者でした。

 もちろん、だからといって、どうだということはありませんでした。厳しいけど優しい、優しいけど厳しい、いい人たちだと思います。

 

 …でも、そうですね。鬼への憎しみ…執着は、異常でした。

 

 …そう、感じてました」

「…なるほど」

 鬼と関わりのある者と、そうでない者…いや、鬼に恨みがある者と、そうでない者では、そもそものこの試験へかける思いも、大きく違うだろう。

 

 もっと言えば、鬼と関わりのまるでない者を、わざわざ買ったり拾ったりまでして、この試験に挑ませる、そこが異常だと思う。

 

 いびつな組織だな。

 

 一般人を鬼から守ると言えば、聞こえはいいが、内実は鬼への憎しみが土台の、鬼を殺すことに執着した者たちの組織だ。

 歴史の闇にある、隠密集団や忍者の軍団、そんな風な、どこか闇を抱えた異常者の集団で…私が考えていた以上に、ぞっとするような組織だ。

 

 こんな組織が、何百年も存在した!?

 

 鬼への…無惨様への恨みと憎しみを糧に、ただただ其の為だけに、連綿とその刃を砥ぎ続けて来たのかと思うと、ゾワゾワとおぞ気が走るのが止まらない。

 

 

 

 …鬼殺隊潰すの、やめませんか?

 

 

 

 何を言っているんだ?…本当にそう思う。

 うっとおしいとか、そんな軽いもんじゃない。ただただ、おぞましく、気持ちが悪い。こんなものと共存なんて、ありえない。

 

「…未来さん、顔色が悪いですね」

 

 雪ちゃんのその言葉に、無理やり笑顔を浮かべて、応じる。

 

 

「…ううん、なんでも、ないよ」

 

 

 

 腕に浮かんだ鳥肌をさすりながら、そう答えた。




無惨様に、思考回路が非常に似ている零余子ちゃん、こういう結論になりました。

鬼殺隊の存続に繋がるかと始めた、最終選別試験編だったのですが、思惑通りには行きませんね。
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