今日も今日とて、お茶会です。
黒い着物の無惨様、黒い着物の黒死牟様、朱い着物の私、そして、本日の甘味は最中で、合わせるのはお抹茶です。黒死牟様が用意してくれました。
軽い皮に包まれた、どっしりとした餡子の甘さが、お抹茶によく合います。和菓子もやっぱり美味しいですねえ。
はてさて、舌鼓を打ってばかりもいられません。
「申し訳ございません」
小細工は抜きの、土下座をします。
「…鬼殺隊の本部の場所は、つかめなかったか?」
無惨様が、謝罪の理由を察して、そう聞いてこられます。
「その通りです。此度の選別試験には産屋敷の者は現れず、代わりに柱が二人やって来ました」
「産屋敷… 勘が鋭い… こちらの手を… するりとかいくぐってくる…」
黒死牟様も、そう援護をしてくれる。
「…勘か、…それはどうしようもないな」
ドキドキとしたが、あまりお怒りでないことに、ホッとする。
「…して、次の一手はどうする?」
「内部に潜み、機を伺う以外には、思い浮かんでおりません」
鎹鴉から追おうにも、まさか雀が来るとは、思いもしなかった。
「…ふむ。急いては事を仕損じるとも言う。じっくりと行くしかないか」
「はっ」
とりあえず、許してもらえたようだ。
「それで、かつての私の発言を撤回したいと存じます」
「ん? なんのことだ」
「鬼殺隊についてです。…かつては潰すのをやめませんかなどと、寝ぼけた事を提案致しましたが、それについて謝罪と撤回をさせてください」
「…ほう。今回の試験で心境の変化があったか?」
無惨様が楽しそうに、そう聞いてこられた。
「まさにその通りです。
雑魚鬼が世を騒がすことの押さえにはちょうどいいなどと、実に愚かな考えでした。
連中は徹頭徹尾、我らの敵に他なりません。何を置いても、滅ぼすべきです」
「くくく…」
私の答えに、満足そうに笑われる。
「連中の本拠地を押さえられなかったのは残念だが、お前がそう考えるようになったのならば、今回の結果もあながち悪くはない」
「そう言って頂けると、ありがたいです」
「なぁに、慌てることはない。奴らの進退は既に窮まっている。じわじわと追い詰めていくというのも、乙なものよ」
私の勘違いでなければ、かなり機嫌が良さそう?
「…あと、もう一つあるのですが…」
試験終了から、十五日後。
予定では、日輪刀が届く日だ。
「まだかな、まだかなー、刀鍛冶の、おじさんまだかなー」
「なに、その歌?」
私の鼻歌に、鳴ちゃんがつっこんでくる。
でも、最終選別試験では、実に不愉快な気分にされたのだ。日輪刀でももらわないと、やってられないよ!
「まあまあ、自分専用の日輪刀だ。未来が浮かれるのもわかる」
俺もそうだったと、師匠もうなずいている。
そんな中、待望の刀鍛冶がやってきた。
「俺は金剛寺という者だ。二人の日輪刀を持ってきた」
「なんでひょっとこ?」
待望の日輪刀だが、それはそれとして、やっぱり聞いておく。
「決まりだ」
「決まりかー」
鬼殺隊の秘密主義、極まっているなあ。
「そんなことよりも、日輪刀だ。まずは姉弟子の分」
金剛寺という刀鍛冶から、鳴ちゃんが日輪刀を受け取る。
「…ごくり」
鳴ちゃんが息を飲みながら、日輪刀をすらりと抜く。…緊張の一瞬だ。
日輪刀が、鮮やかな蜜柑色に染まっていく。綺麗だね!
「…はー、これが私の日輪刀の色…」
鳴ちゃんが自分の日輪刀を、ほれぼれとした表情で見つめる。
「いい色だ」
「炎の呼吸混じりだな」
師匠と刀鍛冶が寸評する。
「今度は、妹弟子の分だ」
「お、おう」
刀鍛冶から、私の日輪刀を受け取る。
やばい、ドキドキする。みんなの視線も感じる。
すらりと日輪刀を抜く。
白刃が、照り返しを受けて、きらりと輝く。
んーーーー……
やばい! 色が変わらん!!
(…あれ?)
(…変わらないのか?)
(…そんなはずは…)
私に心の声を聞く能力はないはずだが、みんなの心の声が聞こえる気がする!!
(…変わりませんねえ?)
幽霊、紛らわしい!!
まずい、まずいぞ! この天才剣士たる成宮未来ちゃんの日輪刀の色が変わらないとか、さすがに認められない!!
落ち着け! 落ち着いて素数を数えるんだ!!
二、三、五、七、十一、十三、十七、十九…そうだ! 呼吸だ!!
落ち着いて、雷の呼吸をすれば…
「シィィィィ」
うっすらと、ちょっとだけ黄色っぽくなったような…
変われや、こらぁぁぁああぁぁぁっっっ!!!!!
バチィィィッッッッ!!!!!!!
落雷音を響かせ、日輪刀が雷を纏う。…やっちゃったぜ…
「…これは…」
キラキラと輝くような黄白色の刃の中心に、血のように赤い色が、葉脈のように隅々まで走っている。
うわー、不気味ー…
「…なんというか、おどろおど…いや、気持ちわる…いやっ、なんかすごいね…」
鳴ちゃんが、二回言い直して、適当なことを言ってくる。もう、正直に言ってくれて、結構だよ!!
「…雷色に、赤い稲妻が迸っているようだな…」
ん?
「…まさに雷の呼吸の極致のようだ…」
…じゃあ、それで!!
雷の呼吸でうっすらと黄色くなった刀身に、握力と電力で強引にまばらに赫刀が再現されました。
頸を斬られなくても、再生が阻害されて、鬼狩りがますます捗りますねw