零余子日記   作:須達龍也

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最終選別試験、終了後のお話です。


最終選別試験13

 今日も今日とて、お茶会です。

 

 黒い着物の無惨様、黒い着物の黒死牟様、朱い着物の私、そして、本日の甘味は最中で、合わせるのはお抹茶です。黒死牟様が用意してくれました。

 軽い皮に包まれた、どっしりとした餡子の甘さが、お抹茶によく合います。和菓子もやっぱり美味しいですねえ。

 

 はてさて、舌鼓を打ってばかりもいられません。

 

 

「申し訳ございません」

 

 

 小細工は抜きの、土下座をします。

 

「…鬼殺隊の本部の場所は、つかめなかったか?」

 無惨様が、謝罪の理由を察して、そう聞いてこられます。

「その通りです。此度の選別試験には産屋敷の者は現れず、代わりに柱が二人やって来ました」

「産屋敷… 勘が鋭い… こちらの手を… するりとかいくぐってくる…」

 黒死牟様も、そう援護をしてくれる。

 

「…勘か、…それはどうしようもないな」

 

 ドキドキとしたが、あまりお怒りでないことに、ホッとする。

「…して、次の一手はどうする?」

「内部に潜み、機を伺う以外には、思い浮かんでおりません」

 鎹鴉から追おうにも、まさか雀が来るとは、思いもしなかった。

「…ふむ。急いては事を仕損じるとも言う。じっくりと行くしかないか」

「はっ」

 とりあえず、許してもらえたようだ。

「それで、かつての私の発言を撤回したいと存じます」

「ん? なんのことだ」

 

 

「鬼殺隊についてです。…かつては潰すのをやめませんかなどと、寝ぼけた事を提案致しましたが、それについて謝罪と撤回をさせてください」

 

 

「…ほう。今回の試験で心境の変化があったか?」

 無惨様が楽しそうに、そう聞いてこられた。

「まさにその通りです。

 雑魚鬼が世を騒がすことの押さえにはちょうどいいなどと、実に愚かな考えでした。

 連中は徹頭徹尾、我らの敵に他なりません。何を置いても、滅ぼすべきです」

「くくく…」

 私の答えに、満足そうに笑われる。

「連中の本拠地を押さえられなかったのは残念だが、お前がそう考えるようになったのならば、今回の結果もあながち悪くはない」

「そう言って頂けると、ありがたいです」

「なぁに、慌てることはない。奴らの進退は既に窮まっている。じわじわと追い詰めていくというのも、乙なものよ」

 

 私の勘違いでなければ、かなり機嫌が良さそう?

 

 

「…あと、もう一つあるのですが…」

 

 

 

 

 

 試験終了から、十五日後。

 予定では、日輪刀が届く日だ。

 

「まだかな、まだかなー、刀鍛冶の、おじさんまだかなー」

 

「なに、その歌?」

 私の鼻歌に、鳴ちゃんがつっこんでくる。

 でも、最終選別試験では、実に不愉快な気分にされたのだ。日輪刀でももらわないと、やってられないよ!

「まあまあ、自分専用の日輪刀だ。未来が浮かれるのもわかる」

 俺もそうだったと、師匠もうなずいている。

 

 

 そんな中、待望の刀鍛冶がやってきた。

 

 

「俺は金剛寺という者だ。二人の日輪刀を持ってきた」

「なんでひょっとこ?」

 待望の日輪刀だが、それはそれとして、やっぱり聞いておく。

「決まりだ」

「決まりかー」

 鬼殺隊の秘密主義、極まっているなあ。

「そんなことよりも、日輪刀だ。まずは姉弟子の分」

 金剛寺という刀鍛冶から、鳴ちゃんが日輪刀を受け取る。

「…ごくり」

 鳴ちゃんが息を飲みながら、日輪刀をすらりと抜く。…緊張の一瞬だ。

 

 

 日輪刀が、鮮やかな蜜柑色に染まっていく。綺麗だね!

 

 

「…はー、これが私の日輪刀の色…」

 鳴ちゃんが自分の日輪刀を、ほれぼれとした表情で見つめる。

「いい色だ」

「炎の呼吸混じりだな」

 師匠と刀鍛冶が寸評する。

「今度は、妹弟子の分だ」

「お、おう」

 刀鍛冶から、私の日輪刀を受け取る。

 

 やばい、ドキドキする。みんなの視線も感じる。

 

 すらりと日輪刀を抜く。

 白刃が、照り返しを受けて、きらりと輝く。

 

 

 んーーーー……

 

 

 やばい! 色が変わらん!!

 

(…あれ?)

(…変わらないのか?)

(…そんなはずは…)

 

 私に心の声を聞く能力はないはずだが、みんなの心の声が聞こえる気がする!!

 

(…変わりませんねえ?)

 

 幽霊、紛らわしい!!

 

 まずい、まずいぞ! この天才剣士たる成宮未来ちゃんの日輪刀の色が変わらないとか、さすがに認められない!!

 

 落ち着け! 落ち着いて素数を数えるんだ!!

 

 二、三、五、七、十一、十三、十七、十九…そうだ! 呼吸だ!!

 

 落ち着いて、雷の呼吸をすれば…

 

「シィィィィ」

 

 うっすらと、ちょっとだけ黄色っぽくなったような…

 

 

 

 変われや、こらぁぁぁああぁぁぁっっっ!!!!!

 

 

 

 バチィィィッッッッ!!!!!!!

 

 

 

 落雷音を響かせ、日輪刀が雷を纏う。…やっちゃったぜ…

 

「…これは…」

 

 キラキラと輝くような黄白色の刃の中心に、血のように赤い色が、葉脈のように隅々まで走っている。

 

 

 うわー、不気味ー…

 

 

「…なんというか、おどろおど…いや、気持ちわる…いやっ、なんかすごいね…」

 

 鳴ちゃんが、二回言い直して、適当なことを言ってくる。もう、正直に言ってくれて、結構だよ!!

 

「…雷色に、赤い稲妻が迸っているようだな…」

 

 ん?

 

 

「…まさに雷の呼吸の極致のようだ…」

 

 

 

 …じゃあ、それで!!




雷の呼吸でうっすらと黄色くなった刀身に、握力と電力で強引にまばらに赫刀が再現されました。
頸を斬られなくても、再生が阻害されて、鬼狩りがますます捗りますねw
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