零余子日記   作:須達龍也

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成宮未来ちゃん、初任務ですよー。


初任務1

「カァァ、八神鳴ィ、東北ノ漁村ヘェ向カェェ!!」

 

 鳴ちゃんの鎹鴉が来たと思えば、いきなり喋り出した。

「鬼狩リトシテノォ、最初ノ仕事デアル」

 何度見ても不思議だね。インコや九官鳥のようにスムーズに喋っている。

「心シテカカレェェ、東北ノ漁村デワァァ」

 それに、ただの声真似じゃあないね。自分で考えて喋っているっぽい。あんな小さな脳で、どうやって?

「漁師ガ消エテイルゥ、毎夜、毎夜」

 言語を操るのは、大脳の前頭葉と側頭葉だけど、そこだけが異常に発達しているのかな?

 

「漁師ガ、漁師ガ、消エテイル!!!」

 

 やばい。解剖したいね。研究意欲がうずうずとうずくね。

 

 そこで、鳴ちゃんの鎹鴉と一緒に来ていたのか、隣に雀もいることに気付く。

「チュン?」

 お前は使えないなあ。そっとため息をつく。

 

「共同任務デアル、氷雨雪ト、夏木薫トトモニィ、現地ヘェ向カェェ!!」

 

 ん?

 

「私は?」

 とりあえず、雀に聞く。

 雀が隣の鳴ちゃんの鎹鴉を見る。

 

「ハァァ、成宮未来ワァ、別任務デアル!」

 

 最初のはため息じゃないよね? ため息つきたいのはこっちだよ!

 

「街ノ洋菓子店デェ、怪シイ侍ガ出没シテイル、ソノ調査ヘェ向カェェ!」

 

 んん? 洋菓子店に、侍? …いやいや、まさかでしょ。

 

「店ニワ入ラズ、タダジット佇ンデイル、黒衣ノ侍デアル!」

 

 …うぇぇ、まじかあ。

 

「コチラモ共同任務デアル、街ニアル藤ノ花ノ家紋ノ家デェ、獪岳ト合流セヨォ!!」

 

「誰だよ?」

「桑島さんところのお弟子さんだ。同じ雷の呼吸の剣士になるな」

 師匠がそう教えてくれる。

「えー、鳴ちゃんと一緒のがいいなあ」

「ダメェ」

 

 うるさいよ。

 

 

 

 

 

 とりあえず、鳴ちゃんたちが心配だったので、長子ちゃんに連絡を取って、猗窩座様に陰からの護衛をお願いする。

 鳴ちゃんも、十二鬼月が相手でなかったら、なんとかなるとは思うんだけど、それでも何が起こるかわからないのが、命がけの戦闘というものだ。

 猗窩座様にお願いするのは申し訳ないのだが、昼日中に出歩ける戦闘力のある護衛となると、猗窩座様くらいしかいないのが現状だ。

 

「っと、ここが藤の花の家紋の家だね」

 

 街の中心部にデデンと構える大きな邸宅に、でかでかと藤の花の家紋が描かれている。

 こういう民間の協力者の存在は、数百年以上続いている鬼殺隊が築いた財産と言えるんだろう。

 

 組織と言うのは、志だけでは運営などできない。

 人、金、物、それらは組織である以上、必須である。

 鬼の被害者を中心に、不足分は拾ったり買ったりしてかき集め、集めた人間を最終選別試験で、少数精鋭の鉄砲玉へと仕立て上げる。

 財源は基本的に産屋敷一族が賄いつつ、かつて助けた藤の花の家紋の家からも寄付金を募る。そして、それ以外のところからは一切受け取らない。

 金を出されれば、当然口も出される。鬼殺隊の運営に横やりを入れられたくないということだろう。実に徹底している。

 産屋敷一族が築いたそうした歴史、財力、流通、コネクション、そういった力は、財閥にも匹敵している。

 

 

 そして、その全ての力を、鬼狩りへと集中しているのだ。

 

 

 私が言うことではないんだろうけど、もっと他のことに力を注げばいいのにと思う。

 

「来たか」

 

 藤の花の家紋の家に入ると、待ってましたと言わんばかりに、いきなり声をかけられた。

「俺の名前は獪岳だ」

「ども、成宮未来です」

 腕組みして偉そうだなと思いつつ、名乗り返す。

 

「お前の噂は聞いているが、俺の方が階級が上で先輩だ。ここでの指揮は俺が取る」

 

 

 言われるまでもなく、そのつもりではいたんだけど、それでも頭ごなしにいきなり言われると、カチンと来るね。

 

 

 

 うん、一発かましてもいいよね?




別に獪岳さん、変なことは言ってませんよ。

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