神剣が選ぶもの(旧ありふれた魔王に勇者ときどき転生者) 作:くろから
難産でした・・・・
恵理「刃!刃!起きて!おきてよ!ねぇ!」
光輝「中村さん!早く脱出しないと!」
恵理「うるさい!うるさいうるさいうるさい!嘘つき!嘘つき!オマエがちゃんと引いていればこんなことにならなかったんだ!オマエガッ!!!!!」
そう一気にまくしたて、恵理は光輝に掴みかかる、そして首を締める、
光輝「カッ・・・・・・!」
一体その小さな体からどうすればステータスさを覆すほどの力を出すことができるのか、だが、このままでは光輝が死んでしまうのみならず恵理も壊れてしまうだろう、しかし、龍太郎や雫などの生徒たちはどうしていいのかわからず、オロオロするばかり、
その時、メルド団長がツカツカと歩み寄り、問答無用で恵理の首筋に手刀を落とした。ビクッと一瞬痙攣し、そのまま意識を落とす恵理。
ぐったりする恵理を抱きかかえ、光輝がキッとメルド団長を睨む。文句を言おうとした矢先、雫が遮るように機先を制し、団長に頭を下げた。
「すいません。ありがとうございます」
「礼など……止めてくれ。もう一人も死なせるわけにはいかない。幸い刃の息はある、全力で迷宮を離脱する。……彼女を頼む」
「言われるまでもなく、僕がクラスを引っ張らないと」
目の前でクラスメイトが一人死んだのだ。クラスメイト達の精神にも多大なダメージが刻まれている。誰もが茫然自失といった表情で石橋のあった方をボーと眺めていた。香織は「もう嫌!」と言って座り込んでしまった、優花は光のない目で未来とハジメが落ちた穴を見つめていた。
ハジメが光輝に叫んだように今の彼等にはリーダーが必要なのだ。
光輝がクラスメイト達に向けて声を張り上げる。
光輝「皆! 今は、生き残ることだけ考えるんだ! 撤退するぞ!」
その言葉に、クラスメイト達はノロノロと動き出す。トラウムソルジャーの魔法陣は未だ健在だ。続々とその数を増やしている。今の精神状態で戦うことは無謀であるし、戦う必要もない。
光輝は必死に声を張り上げ、クラスメイト達に脱出を促した。メルド団長や騎士団員達も生徒達を鼓舞する。
そして全員が階段への脱出を果たした。
上階への階段は長かった。
先が暗闇で見えない程ずっと上方へ続いており、感覚では既に三十階以上、上っているはずだ。魔法による身体強化をしていても、そろそろ疲労を感じる頃である。先の戦いでのダメージもある。薄暗く長い階段はそれだけで気が滅入るものだ。
そろそろ小休止を挟むべきかとメルド団長が考え始めたとき、ついに上方に魔法陣が描かれた大きな壁が現れた。
クラスメイト達の顔に生気が戻り始める。メルド団長は扉に駆け寄り詳しく調べ始めた。フェアスコープを使うのも忘れない。
その結果、どうやらトラップの可能性はなさそうであることがわかった。魔法陣に刻まれた式は、目の前の壁を動かすためのもののようだ。
メルド団長は魔法陣に刻まれた式通りに一言の詠唱をして魔力を流し込む。すると、まるで忍者屋敷の隠し扉のように扉がクルリと回転し奥の部屋へと道を開いた。
扉を潜ると、そこは元の二十階層の部屋だった。
クラスメート「帰ってきたの?」
クラスメート「戻ったのか!」
クラスメート「帰れた……帰れたよぉ……」
クラスメイト達が次々と安堵の吐息を漏らす。中には泣き出す子やへたり込む生徒もいた。光輝達ですら壁にもたれかかり今にも座り込んでしまいそうだ。
しかし、ここはまだ迷宮の中。低レベルとは言え、いつどこから魔物が現れるかわからない。完全に緊張の糸が切れてしまう前に、迷宮からの脱出を果たさなければならない。
メルド団長は休ませてやりたいという気持ちを抑え、心を鬼にして生徒達を立ち上がらせた。
メルド「お前達! 座り込むな! ここで気が抜けたら帰れなくなるぞ! 魔物との戦闘はなるべく避けて最短距離で脱出する! ほら、もう少しだ、踏ん張れ!」
少しくらい休ませてくれよ、という生徒達の無言の訴えをギンッと目を吊り上げて封殺する。
渋々、フラフラしながら立ち上がる生徒達。光輝が疲れを隠して率先して先をゆく。道中の敵を、騎士団員達が中心となって最小限だけ倒しながら一気に地上へ向けて突き進んだ。
そして遂に、一階の正面門となんだか懐かしい気さえする受付が見えた。迷宮に入って一日も立っていないはずなのに、ここを通ったのがもう随分昔のような気がしているのは、きっと少数ではないだろう。
今度こそ本当に安堵の表情で外に出て行く生徒達。正面門の広場で大の字になって倒れ込む生徒もいる。一様に生き残ったことを喜び合っているようだ。
だが、一部の生徒――未だ目を覚まさない恵理を背負った雫や光輝、その様子を見る龍太郎、鈴などは暗い表情だ
そんな生徒達を横目に気にしつつ、受付に報告に行くメルド団長。
二十階層で発見した新たなトラップは危険すぎる。石橋が崩れてしまったので罠として未だ機能するかはわからないが報告は必要だ。
そして、ハジメと未来の死亡報告もしなければならない。
刃は今すぐに治療が必要だろう。
憂鬱な気持ちを顔に出さないように苦労しながら、それでも溜息を吐かずにはいられないメルド団長だった。
ホルアドの町に戻った一行は何かする元気もなく宿屋の部屋に入った。幾人かの生徒は生徒同士で話し合ったりしているようだが、ほとんどの生徒は真っ直ぐベッドにダイブし、そのまま深い眠りに落ちた。
そんな中、檜山大介は一人、宿を出て町の一角にある目立たない場所で膝を抱えて座り込んでいた。顔を膝に埋め微動だにしない。もし、クラスメイトが彼のこの姿を見れば激しく落ち込んでいるように見えただろう。
だが実際は……
檜山「ヒ、ヒヒヒ。ア、アイツが悪いんだ。雑魚のくせに……ちょ、調子に乗るから……て、天罰だ。……俺は間違ってない……白崎のためだ……あんな雑魚に……もうかかわらなくていい……俺は間違ってない……ヒ、ヒヒ」
暗い笑みと濁った瞳で自己弁護しているだけだった。
???「やっぱり、貴方だったのね、」
檜山「?!」
優花「わたし、見てたのよ?貴方が南雲に魔法を放ったのを」
園部優花が光のない瞳で言った
優花「どさくさまぎれでクラスメート二人を殺した気分はどう?」
檜山「あいつが間違ってたんだよ・・・・・・白崎に近ずきさえしなければ・・・・・風間だってそうだ・・・・あんなゴミを助けようとするから巻き添えを食らうんだ・・・・俺は悪くない」
優花「ふざけるな・・・・」
檜山「あぁ?」
優花「ふざけるなっていってるのよ・・・・・!」
優花がナイフを取り出し檜山に向ける
檜山「ヒッ・・・・」
優花「なに?二人も殺しておいて、あんなにお粗末なやり方で、しかもみんながいる中でやっておいて、のうのうと生きてられると思ったの?目には目を・・・・・歯には歯を・・・いのちには命を・・・ハンムラビ法典にあるでしょ?」
檜山「おい・・・・まて・・・早まるな!俺を殺したらお前も・・」
優花「もうどうでもいいのよ、未来は一人で逝ってしまった。香織と恵理はふさぎこんでる、刃はまだ起きてない・・・誰かが裁かないなら・・・・・私が裁く」
檜山「くッ」
優花「そうそう、魔法を使おうとしても意味ないわよ、、私の天職は『投擲師』この距離ならナイフのほうが早い」
優花「よかったわ、みんなが早々に寝静まってくれて、誰にも邪魔されずにあなたを殺せる」
優花がナイフを構える
メルド「まて!」
優花「!?」
メルドと騎士団の数人が優花をとりおさえる
優花「やめてっ!そいつは未来を殺したの!私が殺してやる!」
メルドは問答無用で優花に手刀を落とし、気絶させる
檜山「ありがとうございます、優花が南雲と未来のことについて俺に言いがかりを・・・」
メルド「事の顛末は聞いている、他のクラスメートからも申し出があった、檜山、おまえを南雲ハジメ、風間未来殺害容疑で拘束する!」
それを合図に騎士団の数人が檜山を拘束する
檜山「そんなぁ!俺は間違ってない!」
〜〜〜翌日〜〜〜
次の日、クラスに未来とハジメを落とした犯人が檜山だったことが告げられ、檜山には禁固刑が言い渡された、殺人を犯したのにもかかわらずこの程度の罪で済んでいるのは光輝と愛子の要望あってのことである、
光輝曰く、「罪を償う機会は与えられるべきだ、」と。
そして、刃は起きることはない、と言われた、ベジタティブ・ステイト、そんな残酷な言葉は誰が考えたのだろう、刃は香織が全力で治療を行ったが、その命を繋ぎ止めるにとどまり、その後到着した王宮最高の治癒師をして「手の施しようがない、奇跡を信じるしかない」と言われ、その魂はいつ起きるとも分からない眠りについてしまった。
メルド団長の報告を受けた王宮は大騒ぎとなっていた、人類最高戦力となるはずの者が初めての実戦訓練で二人が死亡、一人が戦闘不能に陥ったのであるしかも死亡したのは、パーティーを引っ張ると思われた天職『英雄』の持ち主である、貴族が騒然となるのは当然のことであった、逆に、『無能』の錬成士は話題に上がることすらなかった、むしろ無能が消えてくれてせいせいした、という意見さえささやかれるほどだった。
しかし、イシュタルが勇者に悪い印象を持たれては敵わないとそういう貴族たちを注意したため、表立ってハジメが罵られることはなくなった、当のイシュタル本人は自分を疑っていた人間を始末することができて内心安堵していたが。
そして、
〜〜〜side優花〜〜〜
優花「・・・・・・・」
優花は取り押さえられてからというものなにも飲まず食わずな状態で、
完全に意気消沈してしまっていた
メルド「・・・・・入るぞ」
優花「ん、どうぞ」
ガチャ
優花「メルドさん、なんのようですか」
メルド「未来から迷宮に行く直前に渡されていたものだ、受け取ってやれってくれ、それと、厳しいことを言うようだが、未来は、あの男はお前に塞ぎ込んでいて欲しいとは思っていないと思うぞ、経験から言っておく、これからお前たちはそういうことも起こり得る、そういう世界に来てしまったんだ、申し訳なく思う、すまない」
優花「そんなこと言われたって」
メルド「まず、それが未来の残したものだそいつを読んでどうするかは自分で決めるんだ」
優花「・・・・・」
メルドがいなくなると、優花はおもむろに手紙を開いた、
『よう、元気か?な、わけないか、取り敢えず、居なくなってごめん、この手紙を読んでるってことは、俺は迷宮でヘマをやっていなくなって、優花は塞ぎ込んだってとこか?でも、気にすんな、俺は必ず帰ってくる、地獄の底からだろうが奈落の底からだろうが必ず返ってくる、だから、俺を信じろ
さて、優花に頼みたいことがあってこの手紙を書いてるんだが、俺がいなくなったとすれば、光輝がクラスメートを訓練に参加する奴と参加しない奴にわけるはずだ、その時に、お前は愛子先生の護衛に入ってくれ、愛子先生は戦争において一番脅威になる天職だから、かならず魔神族側に狙われるはずだ、それあやって理由付けすれば光輝の意見も通りやすくなる筈だ、いなくなっておいて図々しいかもしれないけど、頼む』
優花「そっか・・・・・かえって、来るんだ・・・・・しんじて、みようかな、」
優花「それにしても、愛子先生の護衛しろって・・・・・人使いが荒いんだから」
優花「そうと決まれば、後は待つだけね」
side out
side恵理
恵理は刃が眠っている場所にいた、
恵理「刃・・・・なんで今まで気がつかなかったんだろうね、ボクは、キミに支えられて生きてきたのに、なんであんな奴のことが好きだったんだろう」
恵理「これからボクは君を助けるために生きるよ、私が君のことが好きだって、直接伝えたいから」
当然なにも帰ってはこない、だが、恵理の目には確かな決意の炎があった。
そうして部屋を出ようとした時、テーブルの下に手紙が落ちていることに気づいた
恵理「なんだろ、これ」
『壬無月 刃から中村 恵理へ
俺にもしものことがあったときのためにこれを書き残しておく、恵理、もしも俺がいなくなったら光輝を頼れよ、お前あいつのこと好きなんだろ?あいつはお前の思いに答えられなくても、出来るだけ助けてくれる筈だ、あと、俺の刀、赤鋼怨獄丸は恵理に譲る、お前にはでかいけど、お守りと武器くらいにはなる筈だ、最後に、死んでごめんな、恵理』
恵理「・・・・・・キミはまだ生きてるよ、刃、だから、ボクが助けてみせる」
二人の少女が決意を新たに歩みを始めた