神剣が選ぶもの(旧ありふれた魔王に勇者ときどき転生者)   作:くろから

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ハジメの魔王化はしませぬ


決意

 ぴちょん……ぴちょん……

 

 水滴が頬ほおに当たり口の中に流れ込む感触に、ハジメは意識が徐々に覚醒していくのを感じた。そのことを不思議に思いながらゆっくりと目を開く。

 

ハジメ(……生きてる? ……助かったの?)

 

 疑問に思いながらグッと体を起こそうとして低い天井にガツッと額をぶつけた。

 

ハジメ「あぐっ!?」

 

 自分の作った穴は縦幅が五十センチ程度しかなかったことを今更ながらに思い出し、ハジメは、錬成して縦幅を広げるために天井に手を伸ばそうとした。

 

しかし、左腕は動かない、おそるおそる見てみるが、火傷でもしたように赤い以外はなにも異常はない

 

そしてハジメは爪熊の一撃を食らったことを思い出した

 暗くて見えないが明かりがあればハジメの周囲が血で赤黒く染まっているになっていた。左腕の状態から考えてありえない出血量だった。

 

 ハジメが右手で周りを探れば、カサブタを触るような感覚が返ってくる。やはり、大量出血したことは夢ではなかったようだし、血が乾いていることから、気を失ってそれなりの時間は経っているようである。

 

 なのにズタズタにされた左腕の傷が治っている、ハジメが疑問を感じていると再び頬や口元にぴちょんと水滴が落ちてきた。それが口に入った瞬間、ハジメは、また少し体に活力と魔力が戻った気がした。

 

「……まさか……これが?」

ふらつきながら再び錬成し奥へ奥へと進んで行く。

魔力を回復してくれる不思議な液体のおかげで魔力が尽きない

 

 

 やがて、流れる謎の液体がポタポタからチョロチョロと明らかに量を増やし始めた頃、更に進んだところで、ハジメは遂に水源にたどり着いた。

 

ハジメ「こ……れは……」

 

 そこにはバスケットボールぐらいの大きさの青白く発光する鉱石が存在していた。

 

 その鉱石は、周りの石壁に同化するように埋まっており下方へ向けて水滴を滴らせている。神秘的で美しい石だ。アクアマリンの青をもっと濃くして発光させた感じが一番しっくりくる表現だろう。

 

 ハジメは一瞬、見蕩れてしまった。

 

 そして縋り付くように、あるいは惹きつけられるように、その石に手を伸ばし直接口を付けた。

 

 すると、体の内に感じていた鈍痛や靄がかかったようだった頭がクリアになり倦怠感も治まっていく。

 

 やはり、ハジメが生き残れたのはこの石から流れる液体が原因らしい。治癒作用がある液体のようだ。幻肢痛は治まらないが、他の怪我や出血の弊害は、瞬く間に回復していく。

ハジメはその意思が既に伝説と化した『神結晶』と言う伝説の鉱物であることを知らない

ようやく死の淵から生還したことを実感し、ハジメはそのままズルズルと壁にもたれながらへたり込んだ。

 

 そして、死の恐怖に震える体を抱え体育座りしながら膝に顔を埋めた。既に脱出しようという気力はない。ハジメは心を折られてしまったのだ。

 

 敵意や悪意になら立ち向かえたかもしれない。助かったと喜んで、再び立ち上がれたかもしれない。

 

 しかし、爪熊のあの目はダメだった。ハジメを餌としてしか見ていない捕食者の目。弱肉強食の頂点に立つ人間がまず向けられることのない目だ。その目に、自分を餌としか見ていない獣の目を向けられ、ハジメの心は砕けてしまった。

 

ハジメ(誰か……助けて……)

 

 ここは奈落の底、ハジメの言葉は誰にも届かない……

 

side out

side未来

未来はなんとか爪熊に食い下っていた

 

未来(こいつの技は爪を振った時に1メートルまで射程を拡張、腕の振りから考えてインターバル0.2秒と言ったとこか、種がわかればやりようもある!)

既に時間にして4日間に及ぶギリギリな戦いの中で爪熊の固有魔法を看破した未来は爪熊が腕を振り切ったタイミングで残り少ない魔力で自身の最強の技を放つ

未来「モナド『斬』!!」

光剣が光り輝き、延長された刃は爪熊の右腕を切り落とした

爪熊「ガァァァァア!!、!」

爪熊は右腕を切り落とさると、未来を警戒し、ジリジリと下がり始めた

未来「まだやるか?熊公?え?」

そう言うと威嚇するようにモナドを向ける

爪熊はこれ以上は危険と判断したのか闇の中へ消えていった

未来「ハアッ、ハアッ、くっ」

緊張の糸が切れた未来は崩れ落ちるように倒れた

魔力の使いすぎで薄れゆく意識の中で未来はモナドを地面に突き刺さした

未来「モナド『隠』」

そう唱えると未来の体を半透明な膜がおおい、それきり未来の視界は暗くなった

side out

 どれくらいそうしていただろうか。

 

 ハジメは、現在、横倒しになりギュッと手足を縮めて、まるで胎児のように丸まっていた。

 

 ハジメが崩れ落ちた日から既に七日が経っている。

 

 その間、ハジメはほとんど動かず、滴り落ちる神水のみを口にして生きながらえていた。

 

 しかし、神水は服用している間は余程のことがない限り服用者を生かし続けるものの空腹感まで消してくれるわけではなかった。死なないだけで、現在、ハジメは壮絶な飢餓感に苦しんでいた。

 

ハジメ(どうして僕がこんな目に?)

 

 ここ数日何度も頭を巡る疑問。

 

 痛みと空腹で碌に眠れていない頭は神水を飲めば回復するものの、クリアになったがためにより鮮明に飢餓感を感じさせる。

 

 何度も何度も、意識を失うように眠りについては、飢餓感に目を覚まし、苦痛から逃れる為に再び神水を飲んで、また苦痛の沼に身を沈める。

 

 もう何度、そんな微睡まどろみと覚醒を繰り返したのか。

 

 いつしか、ハジメは神水を飲むのを止めていた。無意識の内に、苦痛を終わらせるもっとも手っ取り早い方法を選択してしまったのだ。

 

ハジメ(こんな苦痛がずっと続くなら……いっそ……)

 

 そう内心呟きながら意識を闇へと落とす。

 

 それから更に二日が日が経った。

 

 ピークを過ぎたのか一度は落ち着いた飢餓感だったが、嵐の前の静けさだったかのように再び、更に激しくなって襲い来る。飢餓感はハジメの精神を苛み続ける。まるで、端の方から少しずつヤスリで削られているかのような耐え難き苦痛。

 

ハジメ(まだ……死なないのか……あぁ、早く、早く……死にたいな…)

 

 ハジメは既に死を望み、神水にも一切口をつけていなかった、支離滅裂なうわ言も呟くようになった。

しかし、死ぬことはなかった

さらに翌日

ハジメが最後見たときよりさらにズタボロになった風間未来が姿を現した

ハジメ「嗚呼・・・・未来くん・・・・僕を殺して」

ハジメの目に光はなく完全に精神が崩壊してしまっていた

未来「おい!しっかりしろ!」

ハジメ「殺して・・・・」

未来「生殺与奪の権を他人に握らせるな!!お前は1人じゃないだろ?!お前が死んだら家族はどう思う?!白崎はどう思うんだ!?」

そう言うと神水を無理やり喉に流し込む

その時、ハジメ頭に香織との約束が蘇ってきた

太陽のように明るい少女の笑顔、そして、学校内で話すことはあまりないが、放課後はよく遊ぶクラスメート達

 

「私が南雲くんを守るよ」

 

 ハジメはその決意を受け取る。真っ直ぐ見返し、そして頷いた。

 

「ありがとう・・・でも」

そしてハジメも誓ったのだ

ハジメ「もし僕が地獄に落ちたとしても、必ず白崎さんの元に帰ってきて見せる」

ハジメ(白崎さんはこんな僕を愛してくれたそれに・・・・・・・『必ず帰る』なんて約束しておいて帰らないなんて・・・・馬鹿みたいじゃないか)

ハジメ「そうだ・・・僕は誓ったんだ・・・必ず帰ると!約束したんだ!」

ハジメの目に光がともる、心に実に十日ぶりに火がくべられた

ハジメ「ありがとう未来」

未来「俺はなにもしてないよ、殺してくれなんてもう言うな」

ハジメ「わかった、それとこれを飲んでみて」

未来「?!傷が」

ハジメ「エリクサーみたいだよね」

未来「だなー」

グゥー

ハジメ「あ」

未来「まあ、だよな俺も腹減って死にそうだしってなわけで」

未来が後ろから生き物のしたいを持ち出す

ハジメ「それってまさか・・・」

未来「外の狼の肉」

ハジメ「しょうがないか」

未来「ほんじゃま、焼きますか」

未来「求めるは火、其れは力にして光、顕現せよ、〝火種〟 」

ハジメ「よく恥ずかしがらずに言えるね・・・・」

ハジメ・未来「いただきます」

十日ぶりの食事をした、味はまあ酷いものであったが、この際味など関係ないと咀嚼する

そして腹が膨れてきた頃、体に異変が起きた

 

 

ハジメ・未来「あ? ――ッ!? アガァ!!!」

 

 突如全身を激しい痛みが襲った。まるで体の内側から何かに侵食されているようなおぞましい感覚。その痛みは、時間が経てば経つほど激しくなる。

 

未来「ぐぅあああっ。な、何がっ――ぐぅううっ!」

 

ハジメ「あの水を・・・」

2人は痛みに耐えかねて神水を口にするが痛みは一向に治らない

ハジメ「ひぃぐがぁぁ!! なんで……なおらなぁ、あがぁぁ!」

 

そのうちに2人の体に変化が起こり始めた

筋肉や骨格が徐々に太くなり体の内側に薄らと赤黒い線が幾本か浮き出始める。

ハジメの髪は色が抜け落ち、白く染まってゆき、未来の髪は金髪に染まってゆく

超回復という現象がある。筋トレなどにより断裂した筋肉が修復されるとき僅かに肥大して治るという現象だ。骨なども同じく折れたりすると修復時に強度を増すらしい。今、ハジメ達の体に起こっている異常事態も同じである。

そして痛みが治った時はじめはやっと思い出した

ハジメ「……そういや、魔物って喰っちゃダメだったか……アホか僕は……まぁ、喰わずにはいられなかっただろうけど……」

未来「先に言え・・・・・」

しばらくして未来は体の中にも違和感を覚えた

温かいような冷たいような、どちらとも言える奇妙な感覚。意識を集中してみると腕に薄らと赤黒い線が浮かび上がった。

 

未来「うわぁ、き、気持ち悪い。なんか魔物にでもなった気分だ。……洒落もなってねーぞ」

ハジメ「そうだ、ステータスプレートは」

 すっかり存在を忘れていたステータスプレートを探してポケットを探る。どうやら失くしていなかったようだ。現在のハジメのステータスを確認する。体の異常について何か分かるかもしれない。

 

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南雲ハジメ 17歳 男 レベル:8

天職:錬成師

筋力:100

体力:300

耐性:100

敏捷:200

魔力:300

魔耐:300

技能:錬成・魔力操作・胃酸強化・纏雷・言語理解

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風間未来 17歳 男 レベル24

天職 英雄

筋力 2,500

体力 3000

耐性 1500

敏捷 2500

魔力 1,000

魔耐 1000

技能 限界突破 神剣の心得 未来視 技の一刀 孤軍奮闘 連携の極み 言語理解 縮地 魔力感知 気配感知 高速気力回復 先読み 全属性耐性 魔力操作 纏雷 胃酸強化

 

「……なんでやねん」

 

 いつかのように驚愕のあまり思わず関西弁でツッコミを入れるハジメ。ステータスが軒並み急増しており、技能も三つ増えている。しかもレベルが未だ8にしかなっていない。レベルはその人の到達度を表していることから考えると、どうやらハジメ達の成長限界も上がったようだ。

 

未来「魔力操作?」

 

 




因みにハジメの左腕が動かなかった理由は神経を断ち切られていたからですね
神水と言えども本人の回復力が地の文から見てベースになってると思うので神経断ち切られたら再生できないかなと
あと、魔王化の回避が雑になってしまったァァァア
いや、復讐鬼になるルートもあったんですよ、でもそうなるとユエを助けるビジョンが湧かなくて、ボツになりました
流石にユエを無視はできん
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