神剣が選ぶもの(旧ありふれた魔王に勇者ときどき転生者) 作:くろから
その後ハジメと未来は快進撃を続け、殺した魔物を喰らいながら下へ下へと進んだ
ハジメ「またきたよ!」
未来「よしきた!モナド『魔』!」
ドパン!
ドドパン!
未来「様になってきたな、」
ハジメ「未来に当てるわけにはいかないからね」
そこからさらに三十五階層ほど進んだところで
周囲から明らかに浮いた雰囲気の扉を発見した
脇道を抜けた先に高さ三メートルほどの装飾が施された荘厳な両開きの扉があり、その扉の脇には二対の一つ目の巨人の彫刻が半分壁に埋め込まれるように鎮座していた。
二人はその空間に足を踏み入れたとたん悪寒が走るのを感じ、いったん引いたのである、もちろん準備を整えるためで避けるつもりは毛頭なく、そのようやく現れた”変化”を調べようとしていた。
未来「さてと、鬼が出るか蛇がでるか」
ハジメ「まるでパンドラの箱だね」
未来「だったら希望をなんとしても勝ち取ってやるぜ」
自分たちの持てる技術と武器、そして技能を一つ一つ確認した、コンディションは万全、確固たる覚悟を持ってハジメがドンナーを抜く、
ハジメ「僕たちは・・・・・何があろうともみんなのところへ帰る!」
扉の部屋にやってきたハジメたちは油断なく歩みを進める。特に何事もなく扉の前にやってきた、近くまでやってきたので以前とは違って細かい装飾や中央にある窪みをみつけた。
ハジメ「結構勉強したつもりだけど・・・・・こんな式は見たことがないよ」
ハジメは地上にいたころ、自らの能力の低さを補うために座学に力を入れていた、もちろん全ての課程を終えたわけではないが、一切読み取れないのはいささかおかしい
未来「相当古いってこった、モナド『斬』!」
ハジメ「ええっ!?!」
ズドォォォン
重厚な扉が光の刃によって切り裂かれ、大きな音を立ててゆっくり崩れ落ちる
ハジメ「ええ・・・・頑張って解読するとかじゃないの?雰囲気的にさ」
未来「俺にそんな趣味はない、さっさと行くぞ!」
〜〜〜〜
完全に扉が開け放たれているため、手前の部屋の明かりで部屋の全容がわかる、聖教教会の大神殿で見た大理石のように艶やかな石造りで出来ており、幾本もの太い柱が規則正しく奥へ向かって二列に並んでいた。そして部屋の中央付近に巨大な立方体の石が置かれており、部屋に差し込んだ光に反射して、つるりとした光沢を放っている。
その立方体を注視していたハジメは、何か光るものが立方体の前面の中央辺りから生えているのに気がついた。
???「・・・・・だれ?」
かすれた、弱々しい少女の声だ。ビクリッとしてハジメは慌てて部屋の中央を凝視する。すると、先程の〝生えている何か〟がユラユラと動き出した。差し込んだ光がその正体を暴く。
ハジメ「人……なのか?」
〝生えていた何か〟は人だった。
上半身から下と両手を立方体の中に埋めたまま顔だけが出ており、長い金髪が某ホラー映画の女幽霊のように垂れ下がっていた。そして、その髪の隙間から低高度の月を思わせる紅眼の瞳が覗のぞいている。年の頃は十二、三歳くらいだろう。随分やつれているし垂れ下がった髪でわかりづらいが、それでも美しい容姿をしていることがよくわかる。
流石に予想外だったハジメは硬直し、紅の瞳の女の子もハジメをジッと見つめていた。見惚れていたとも言う、その様子を見ていた未来は決然とした表情で告げた
未来「すみません。間違えました」
ハジメ「ちょっと待った?!」
未来「やだね」
ハジメ「ハア?」
未来は鬱陶しそうに語った
未来「あのな、そこら辺にある野良猫拾うのとは訳が違うぞこんな奈落の底の更に底で、明らかに封印されているような奴を解放するわけないだろう? 絶対ヤバイって。見たところ封印以外何もないみたいだし……脱出には役立ちそうもない。という訳で……」
未来が初めの襟首を引っ掴んで引っ張って行こうとしたその時
「ちがう! ケホッ……私、悪くない! ……待って! 私……」
「裏切られただけ!」
その言葉が未来の心を動かした
どうやら、同じような境遇の少女を見捨てない程度の良心は残っていたらしい
少女は呆然と2人を見つめていた
未来「おい、さっさと言え、早くしないとでてくぞ」
ハジメ「おい!」
ハッと我を取り戻し、女の子は慌てて封印された理由を語り始めた。
???「私、先祖返りの吸血鬼……すごい力持ってる……だから国の皆のために頑張った。でも……ある日……家臣の皆……お前はもう必要ないって……おじ様……これからは自分が王だって……私……それでもよかった……でも、私、すごい力あるから危険だって……殺せないから……封印するって……それで、ここに……」
枯れた喉で必死にポツリポツリと語る女の子。話を聞きながらハジメは呻いた。なんとまぁ波乱万丈な境遇か。しかし、ところどころ気になるワードがあるので、湧き上がるなんとも言えない複雑な気持ちを抑えながら、ハジメは尋ねた。
ハジメ「君は、どこかの国の王族だったかい?」
???「……(コクコク)」
ハジメ「殺せないってなんだい?」
???「……勝手に治る。怪我しても直ぐ治る。首落とされてもその内に治る」
未来「……そ、そいつは凄まじいな。……すごい力ってそれか?」
???「これもだけど……魔力、直接操れる……陣もいらない」
ハジメ「なるほどな~」
ハジメも魔物を喰ってから、魔力操作が使えるようになった。身体強化に関しては詠唱も魔法陣も必要ない。他の錬成などに関しても詠唱は不要だ。
ただ、ハジメの場合、魔法適性がゼロなので魔力を直接操れても巨大な魔法陣は当然必要となり、碌に魔法が使えないことに変わりはない。
だが、この少女のように魔法適性があれば反則的な力を発揮できるのだろう。何せ、周りがチンタラと詠唱やら魔法陣やら準備している間にバカスカ魔法を撃てるのだから、正直、勝負にならない。しかも、不死身。おそらく絶対的なものではないだろうが、それでも勇者すら凌駕りょうがしそうなチートである。
???「……たすけて……」
ハジメが一人で思索に耽ふけり一人で納得しているのをジッと眺めながら、ポツリと女の子が懇願する。
ハジメ「……」
ハジメはジッと女の子を見た。女の子もジッとハジメを見つめる。どれくらい見つめ合っていたのか……
未来「おい、ハジメ」
見かねた未来が声をかけると
ハジメ「もし止めるのなら僕は君と戦わなくちゃいけない」
未来「そうか」
そしてハジメがおもむろに立方体に手をかける
???「あっ」
少女がその意味に気がついたのか大きく目を見開く。ハジメはそれを無視して錬成を始めた。
ハジメの魔物を喰ってから変質した赤黒い、いや濃い紅色の魔力が放電するように迸る。
しかし、イメージ通り変形するはずの立方体は、まるでハジメの魔力に抵抗するように錬成を弾いた。迷宮の上下の岩盤のようだ。だが、全く通じないわけではないらしい。少しずつ少しずつ侵食するようにハジメの魔力が立方体に迫っていく。
ハジメ「ぐっ、抵抗が強い! ……だが、今の僕なら!」
ハジメは更に魔力をつぎ込む。詠唱していたのなら六節は唱える必要がある魔力量だ。そこまでやってようやく魔力が立方体に浸透し始める。既に、周りはハジメの魔力光により濃い紅色に煌々と輝き、部屋全体が染められているようだった。
ハジメは更に魔力を上乗せする。七節分……八節分……。女の子を封じる周りの石が徐々に震え出す。
ハジメ「まだまだぁ!」
ハジメは気合を入れながら魔力を九節分つぎ込む。属性魔法なら既に上位呪文級、いや、それではお釣りが来るかもしれない魔力量だ。どんどん輝きを増す紅い光に、少女は目を見開き、この光景を一瞬も見逃さないとでも言うようにジッと見つめ続けた。
ハジメは初めて使う大規模な魔力に脂汗を流し始めた。少しでも制御を誤れば暴走してしまいそうだ。だが、これだけやっても未だ立方体は変形しない。ハジメはもうヤケクソ気味に魔力を全放出してやった。
しかし、全力で魔力を放っているわけではない、たしかに未来の言い分も理解できたからだ
助けられないのか
そう思った時、未来が口を開いた
未来「助けるって決めたんだろ?なら、俺のことなんか気にせず突き進めよ、迷うな、南雲」
ハジメ「そうだね」
ハジメが目を見開くと、ハジメ自身が紅い輝きを放ち始めた。正真正銘、全力全開の魔力放出。持てる全ての魔力を注ぎ込み意地の錬成を成し遂げる!
直後、女の子の周りの立方体がドロッと融解したように流れ落ちていき、少しずつ彼女の枷を解いていく。
それなりに膨らんだ胸部が露わになり、次いで腰、両腕、太ももと彼女を包んでいた立方体が流れ出す。一糸纏わぬ彼女の裸体はやせ衰えていたが、それでもどこか神秘性を感じさせるほど美しかった。そのまま、体の全てが解き放たれ、女の子は地面にペタリと女の子座りで座り込んだ。どうやら立ち上がる力がないらしい。
ハジメも座り込んだ。肩でゼハーゼハーと息をし、すっからかんになった魔力のせいで激しい倦怠感に襲われる。
荒い息を吐き震える手で神水を出そうとして、その手を少女がギュッと握った。弱々しい、力のない手だ。小さくて、ふるふると震えている。
ハジメが横目に様子を見ると女の子が真っ直ぐにハジメを見つめている。顔は無表情だが、その奥にある紅眼には彼女の気持ちが溢れんばかりに宿っていた。
そして、震える声で小さく、しかしはっきりと女の子は告げる。
???「……ありがとう」
未来「雰囲気を壊して悪いが、お客さんだぜ?」
ハジメ「!!」
未来「おそらくはその子が万が一自力で逃げ出した時のための保険ってとこか、全く用意周到なこった」
そう言いながら真上を見上げる
ハジメは少女を抱えて全力で縮地を行使する
???「あっ・・・・」
さっきまで自分隊がいた場所には5メートルほどの尻尾が二本に分かれたサソリがいた
???「あの人は」
ハジメ「大丈夫、・・・・未来はびっくりするぐらい強いから」
未来「いやぁ、なかなかだな、こいつ、ハジメ、手出しすんな、」
ハジメ「えっ・・・」
未来「運動するにはちょうどいい」
そこにあったのは元々の端正な顔からは想像することができないほどの獰猛な笑みだった
次回はサソリもどきと未来の戦いからですね