神剣が選ぶもの(旧ありふれた魔王に勇者ときどき転生者)   作:くろから

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激烈長くしてみた、遅れたし


封印部屋の化け物

未来「モナド『疾』!」

未来のアーツが発動したのとサソリもどきの尻尾から液体が発射されたのはほぼ同時だったかなりの速度で飛来するそれを余裕を持ってかわす、着弾した液体はジュワーだと言う音を立てて床を溶かしている、強酸性の液体のようだ

未来はそれに目もくれずに大きくかがんで、一気に飛び上がった

未来「シッ!!」

そこからは謎の少女の目にはもちろん、魔物の肉を食ったことでステータスが間違えるほど強化された筈のハジメの目にさえ映ることはなかった

ズダダダダダダダダダダダダダダダダ!!!

封印部屋に未来の踏み込みの音だけだ不気味に鳴り響く、そして流石のサソリもどきも反応できないのか、困惑しているように見える、そうこうしているうちにサソリもどきの足が一本切り飛ばされた

サソリもどき「ギィィィィィィ!?」

サソリもどきは苦痛の叫びを上げ、ハサミを振るがそれは虚空を切り裂くのみ、

そこからはさほど時間はかからなかった、徐々にサソリもどきの足が切り飛ばされていき、尻尾も切り飛ばされると、おびただしい量の紫色の血を噴水のように吹き出しながらダルマになったサソリもどきは果てた

???「なに・・・あれ・・・」

ハジメ「うわっ・・・本気でやったらこうなるのか・・・すごいな」

未来「大分硬かったけど、それだけだな、爆縮と『疾』で合わせればかなりのスピードになるなー、ちょっとクラクラする」

ハジメ「いや、それだけで済むのはおかしいでしょ・・・」

???「名前・・・・なに?」

未来「そーいやまだだったな、俺は風間未来、んでこっちは」

ハジメ「僕は南雲ハジメ、君は?」

少女は「ハジメ、ハジメ」と、さも大事なものを内に刻み込むように繰り返し呟いた。そして、問われた名前を答えようとして、思い直したようにハジメにお願いをした。

 

???「……名前、付けて」

ハジメ「え? 付けるってなんだい?まさか忘れたとか?」

 

 長い間幽閉されていたのならあり得ると聞いてみるハジメだったが、女の子はふるふると首を振る。

 

???「もう、前の名前はいらない。……ハジメの付けた名前がいい」

ハジメ「……はぁ、そうは言ってもなー」

前の自分を捨てて新しい自分と価値観で生きる。この少女は自分の意志で変わりたいらしい。その一歩が新しい名前なのだろう。

 

 少女は期待するような目でハジメを見ている。ハジメはカリカリと頬を掻くと、「うーん」とうなると、少しためらいがちに彼女の新しい名前を告げた。

 

ハジメ「〝ユエ〟なんてどう? ネーミングセンスないから気に入らないなら別のを考えるけど……」

???「ユエ? ……ユエ……ユエ……」

未来「月か」

「そう、ユエって言うのは、僕の故郷で〝月〟を表すんだよ。最初、この部屋に入ったとき、君のその金色の髪とか紅い眼が夜に浮かぶ月みたいに見えたんだ…どう?」

思いのほかきちんとした理由があることに驚いたのか、女の子がパチパチと瞬きする。そして、相変わらず無表情ではあるが、どことなく嬉しそうに瞳を輝かせた。

 

ユエ「……んっ。今日からユエ。ありがとう」

未来「おう、取り敢えずだ……」

ユエ「?」

 

 礼を言う少女改めユエは握っていた手を解き、着ていた外套を脱ぎ出す未来に不思議そうな顔をする。

 

未来「これ着とけ。いつまでも素っ裸じゃあなぁ」

「……」

 

 そう言われて差し出された服を反射的に受け取りながら自分を見下ろすユエ。確かに、すっぽんぽんだった。大事な所とか丸見えである。ユエは一瞬で真っ赤になるとハジメの外套がいとうをギュッと抱き寄せ上目遣いでポツリと呟いた。

 

ユエ「ハジメと未来のエッチ」

未来・ハジメ「……」

 

 何を言っても墓穴を掘りそうなのでノーコメントで通すハジメと未来。ユエはいそいそと外套を羽織る。ユエの身長は百四十センチ位しかないのでぶかぶかだ。一生懸命裾を折っている姿が微笑ましい。

 

未来「・・・・ゴホン!さて、取り敢えずこいつ拠点に持ち帰るか」

サソリモドキを倒したハジメ達は、サソリモドキの素材やら肉やらをハジメと未来の拠点に持ち帰った。

 

 その巨体と相まって物凄く苦労したのだが、最上級魔法の行使により、へばっていたユエに血を飲ませると瞬く間に復活し見事な身体強化で怪力を発揮してくれたため、二人がかりでなんとか運び込むことができた。

 

 ちなみに、そのまま封印の部屋を使うという手を未来が提案したのだが、ユエが断固拒否したためその案は没となった。

無理もない。何年も閉じ込められていた場所など見たくもないのが普通だ。消耗品の補充のためしばらく身動きが取れないことを考えても、精神衛生上、封印の部屋はさっさと出た方がいいだろう。

 

 そんな訳で、現在ハジメ達は、消耗品を補充しながらお互いのことを話し合っていた。

 

未来「そうすると、ユエって少なくとも三百歳以上なわけか?」

ユエ「……マナー違反」

 

 ユエが非難を込めたジト目で未来を見る。成る程、女性に年齢の話はどの世界でもタブーらしい。

 

 

 記録によると、三百年前の大規模な戦争のおり吸血鬼族は滅んだとされていたはずだ。実際、ユエも長年、物音一つしない暗闇に居たため時間の感覚はほとんどないそうだが、それくらい経っていてもおかしくないと思える程には長い間封印されていたという。二十歳の時、封印されたというから三百歳ちょっとということだ。

 

 

未来「へー、結構若いんだな」

ユエ「・・・・普通は二百歳くらいで死ぬ、私が特別、再生で歳もならない・・・」

ハジメ「感覚おかしくないかい?」

未来「いや、吸血鬼って500年くらいはサクッと行くものかと」

 聞けば十二歳の時、魔力の直接操作や〝自動再生〟の固有魔法に目覚めてから歳をとっていないらしい。

 欲に目が眩んだ叔父が、ユエを化け物として周囲に浸透させ、大義名分のもと殺そうとしたが〝自動再生〟により殺しきれず、やむを得ずあの地下に封印したのだという。

 

 ユエ自身、当時は突然の裏切りにショックを受けて、碌に反撃もせず混乱したままなんらかの封印術を掛けられ、気がつけば、あの封印部屋にいたらしい。

 

 その為、あのサソリモドキや封印の方法、どうやって奈落に連れられたのか分からないそうだ。もしかしたら帰る方法が! と期待したハジメと未来はガックリと項垂れた。

 

 ユエの力についても話を聞いた。それによると、ユエは全属性に適性があるらしい。

ハジメ「なにそれどんなチート?」

ユエ「・・・接近戦は苦手、逃げ回りながら連射するくらいしかできない」

未来「じゃあやりようあるな」

ハジメ「いや、そんなことないでしょ?!」

 〝自動再生〟については、一種の固有魔法に分類できるらしく、魔力が残存している間は、一瞬で塵にでもされない限り死なないそうだ。逆に言えば、魔力が枯渇した状態で受けた傷は治らないということ。つまり、あの時、長年の封印で魔力が枯渇していたユエは、サソリモドキの攻撃を受けていればあっさり死んでいたということだ。

 

ハジメ「それで……肝心の話だが、ユエはここがどの辺りか分かるか? 他に地上への脱出の道とか」

「……わからない。でも……」

 

 ユエにもここが迷宮のどの辺なのかはわからないらしい。申し訳なさそうにしながら、何か知っていることがあるのか話を続ける。

 

「……この迷宮は反逆者の一人が作ったと言われてる」

「反逆者?」

 

 聞き慣れない上に、なんとも不穏な響きに思わず錬成作業を中断してユエに視線を転じるハジメ。見張りをしていた未来も振り向く、ハジメの作業をジッと見ていたユエも合わせて視線を上げると、コクリと頷き続きを話し出した。

「反逆者……神代に神に挑んだ神の眷属のこと。……世界を滅ぼそうとしたと伝わってる」

 

 ユエは言葉の少ない無表情娘なので、説明には時間がかかる。ハジメとしては、まだまだ消耗品の補充に時間がかかるし、サソリモドキとの戦いで攻撃力不足を痛感したことから新兵器の開発に乗り出しているため、作業しながらじっくり聞く構えだ。

 

 ユエ曰く、神代に、神に反逆し世界を滅ぼそうと画策した七人の眷属がいたそうだ。しかし、その目論見は破られ、彼等は世界の果てに逃走した。

 

 その果てというのが、現在の七大迷宮といわれているらしい。この【オルクス大迷宮】もその一つで、奈落の底の最深部には反逆者の住まう場所があると言われているのだとか。

 

未来「……そこなら、地上への道があるかも……」

ハジメ「なるほど。奈落の底からえっちらおっちら迷宮を上がってくるとは思えない。神代の魔法使いなら転移系の魔法で地上とのルートを作っていてもおかしくないってことね」

 

 見えてきた可能性に、頬が緩むハジメ。再び、視線を手元に戻し作業に戻る。ユエの視線もハジメの手元に戻る。ジーと見ている。

 

ハジメ「……そんなに面白いかな?」

 

 口には出さずコクコクと頷くユエ。だぶだぶの外套を着て、袖先からちょこんと小さな指を覗かせ膝を抱える姿はなんとも愛嬌があり、その途轍もなく整った容姿も相まって思わず抱き締めたくなる可愛らしさだ。

 

ハジメ(だけど、三百歳。流石異世界だね、ロリババアが実在するとは……)

ユエ「ハジメ、今何か変なこと考えた?」

ハジメ「え?!あっ、なにも?」

とぼけて返すハジメだが、ユエの、というより女の勘の鋭さに内心冷や汗をかく。黙々と作業することで誤魔化していると、ユエも気が逸れたのか今度はハジメに質問し出した。

 

ユエ「……ハジメと未来、どうしてここにいる?」

 

 当然の疑問だろう。ここは奈落の底。正真正銘の魔境だ。魔物以外の生き物がいていい場所ではない。

 

 ユエには他にも沢山聞きたいことがあった。なぜ、魔力を直接操れるのか。なぜ、固有魔法らしき魔法を複数扱えるのか。なぜ、魔物の肉を食って平気なのか。左腕はどうしたのか。そもそもハジメと未来は人間なのか。ハジメが使っている武器は一体なんなのか。

未来「俺の武器については聞かないのか?」

ユエ「その剣は知ってる、今聞こうと思ってた、その剣は世界と人間を創った巨神の剣、魔神との戦いに使われた、その剣をなんで扱える?」

未来「こいつが俺を選んだから」

ユエ「・・・・それじゃ説明になってない」

未来「それ以上の説明はできないなぁ」

ユエ「・・・・じゃあそれでいい」

未来「次はおまえの番じゃないか?ハジメ」

ハジメ「え?ああ、うん」

ハジメが、仲間と共にこの世界に召喚されたことから始まり、一部から無能と呼ばれていたこと、ベヒモスとの戦いでクラスメイトの誰かに裏切られ奈落に落ちたこと、魔物を喰って変化したこと、爪熊との戦いと願い、ポーション(ハジメ命名の神水)のこと、故郷の兵器にヒントを得て現代兵器モドキの開発を思いついたことをツラツラと話していると、いつの間にかユエの方からグスッと鼻を啜るような音が聞こえ出した。

 

未来「いきなりどうした?」

ユエ「……ぐす……ハジメ……つらい……私もつらい……」

 

 どうやら、ハジメのために泣いているらしい。ハジメは少し驚くと、表情を苦笑いに変えてユエの頭を撫でる。

ユエ「ハジメと未来は・・・クラスメートを恨んでないの?」

ハジメ「うーん、どうなんだろう、でも未来が言うには」

未来「多分恨む必要がない、火球を打ったやつ、多分檜山だろうが、光輝がこってり絞ってるはずだし、少し心配だが、光輝と刃がいりゃ大丈夫だろー」

ユエ「・・・2人とも、強い、じゃあ、ここを出たら仲間のところに戻る?」

未来「まあそうだ」ハジメ「違う」

未来「え?」

ハジメ「僕たちは力を持ちすぎたんだ、多分異端認定される、だからクラスメートとは別口で元の世界に戻る方法を探そうと思う」

未来「おまえそんなこと考えてたのか」

ハジメ「初めは香織さんのところに戻ろうと思ってたけどね」

ユエ「・・・誰?」

ハジメ「・・・僕と友達になろうとしてくれた人だよ、とても優しくしてくれた」

未来(おい、こいつ気付いてねーのか?)

ユエ「・・・そう、帰るの?」

ハジメ「うん? 元の世界にかい? そりゃあ帰るよ。帰りたいよ。……色々変わっちゃったけど……故郷に……家に帰りたい……」

ユエ「……そう」

 

 ユエは沈んだ表情で顔を俯かせる。そして、ポツリと呟いた。

 

ユエ「……私にはもう、帰る場所……ない……」

未来・ハジメ「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハジメ「じゃあ、一緒に来るかい?」

未来(おい、戸籍とかどうする気だこいつ)

 

ユエ「え?」

 

 ハジメの言葉に驚愕をあらわにして目を見開くユエ。涙で潤んだ紅い瞳にマジマジと見つめられ、なんとなく落ち着かない気持ちになったハジメは、少し顔を赤らめた

 

ユエ「いいの?」

ハジメ「今言ったじゃないか」

キラキラと輝くユエの瞳に、苦笑いしながらハジメは頷く。すると、今までの無表情が嘘のように、ユエはふわりと花が咲いたように微笑んだ。思わず、見蕩れてしまうハジメ。呆けた自分に気がついて慌てて首を振った。

 

 なんとなくユエを見ていられなくて、ハジメは作業に没頭することにした。ユエも興味津々で覗き込んでいる。但し、先程より近い距離で、ほとんど密着しながら……

 

 ハジメは気にしてはいけないと自分に言い聞かせる。

 

ユエ「……これ、なに?」

 

 ハジメの錬成により少しずつ出来上がっていく何かのパーツ。一メートルを軽く超える長さを持った筒状の棒や十二センチ(縦の長さ)はある赤い弾丸、その他細かな部品が散らばっている。それは、ハジメがドンナーの威力不足を補うために開発した新たな切り札となる兵器だ。

未来「ほーん、対物ライフルか」

ハジメ「そう、ドンナーはもう見せたよね?アレの強化番だよ、球も特別製、」

ハジメ「まず口径を大きくして、弾を大きくして、銃身を伸ばしてみたんだ、装填数は一発だけど、理論上はあのロシアのKSVKよりも威力が出るはずなんだ、弾丸には」

ユエがキョトンとしていた

未来「おい、落ち着け」

ハジメ「あっ、ごめん」

 説明が途切れてしまったがこの新たな対物ライフル――シュラーゲンは、理屈上、最大威力でドンナーの更に十倍の威力が出る……はずである。

 

 素材はなんとサソリモドキだ。ハジメが、あの硬さの秘密を探ろうとサソリモドキの外殻を調べてみたところ、〝鉱物系鑑定〟が出来たのである。

 

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シュタル鉱石

魔力との親和性が高く、魔力を込めた分だけ硬度を増す特殊な鉱石

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 どうやら、サソリモドキのあの硬さはシュタル鉱石の特性だったらしい。おそらく、サソリモドキ自身の膨大な魔力を込めに込めたのだろう。

 

ハジメ「そーいえば、錬成したら割と簡単に加工できたよ」

未来「あれ?俺の戦い時間の無駄だった?」

ユエ「・・・・そう言うことになる」

未来の精神に痛恨の一撃!!!

未来は流れるようにorzした!

これはそっとしておいた方がいいだろう

ハジメ「そういえばユエは飢餓感とか感じないのかい?」

ユエ「感じる、でももう大丈夫」

ハジメ「大丈夫? 何か食ったの?」

 

 腹は空くがもう満たされているというユエに怪訝そうな眼差しを向けるハジメ。ユエは真っ直ぐにハジメを指差した。

 

ユエ「ハジメの血」

ハジメ「ああ、俺の血。そっか、吸血鬼は血が飲めれば特に食事は不要か?」

ユエ「……食事でも栄養はとれる。……でも血の方が効率的」

 

 吸血鬼は血さえあれば平気らしい。ハジメから吸血したので、今は満たされているようだ。なるほど、と納得しているハジメを見つめながら、何故かユエがペロリと舌舐りした。

 

ハジメ「……その舌舐めずりはなに?」

ユエ「……ハジメ……美味……」

ハジメ「び、美味って・・・・僕の体なんて魔物の血肉を取り込みすぎて不味そうな印象だけど……」

ユエ「……熟成の味……」

ハジメ「……」

 

 ユエ曰く、何種類もの野菜や肉をじっくりコトコト煮込んだスープのような濃厚で深い味わいらしい。

 

ハジメ( そういえば、最初に吸血されたとき、やけに恍惚としていたな)

 

 ただ、舌舐りしながら妖艶な空気を醸し出すのはやめて欲しいと思うハジメ。こういう時、ユエが年上であることを実感してしまうのだが、幼い容姿と相まって、なんとも背徳的な感じがしてしまい落ち着かない事この上ないのだ。

 

ユエ「……美味」

ハジメ「……勘弁してくれ」

 

 いろんな意味で、この新しい仲間はヤバイかもしれないと、若干冷や汗を流すハジメであった。

 

 

 

 




おまけ(本編とは何の関係もありません)

香織「……チッ」
雫 「!? か、香織? 今舌打ちを……」
香織「え? どうしたの雫ちゃん」
雫 「い、いえ。なんでも……」
香織「……泥棒猫め」
雫 「香織!?」
香織「フフ、大丈夫だよ、雫ちゃん。ちょっと自分のポジションが脅かされているような気がしただけだから」
雫 「それは大丈夫とは言わないと思うわ……」

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