神剣が選ぶもの(旧ありふれた魔王に勇者ときどき転生者)   作:くろから

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できた!


トラップ

 現在、クラスのみんなで【オルクス大迷宮】の正面入口がある広場に集まっていた。

 

 ハジメや刃としては薄暗い陰気な入口を想像していたのだが、まるで博物館の入場ゲートのようなしっかりした入口があり、受付窓口まであった。制服を着たお姉さんが笑顔で迷宮への出入りをチェックしている。

未来「なんか・・・・・」

刃「思ってたんと違う」

光輝「そうなのか?」

 なんでも、ここでステータスプレートをチェックし出入りを記録することで死亡者数を正確に把握するのだとか。戦争を控え、多大な死者を出さない措置である。

 

 入口付近の広場には露店なども所狭しと並び建っており、それぞれの店の店主がしのぎを削っている。まるでお祭り騒ぎだ。

 

 ハジメ「浅い階層の迷宮は良い稼ぎ場所として人気がみたいで人も自然と集らしいし、馬鹿騒ぎした人が勢いで迷宮に挑み命を落としたり、裏路地宜しく迷宮を犯罪の拠点とする人間も多くいたみたいで、戦争を控えながら国内に問題を抱えたくないと冒険者ギルドと協力して王国が設立したんだって、入場ゲート脇の窓口でも素材の売買はしてくれらしいよ、」

光輝「やけに詳しいな」

ハジメ「伊達に図書館に篭ってたわけじゃないよ」

 クラスのみんなは、お上りさん丸出しでキョロキョロしながらメルド団長の後をカルガモのヒナのように付いていった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

迷宮の中は、外の賑やかさとは無縁だった。

未来「へー、結構明るいんだな」

刃「ハジメ曰く、緑光石っていう鉱石を掘って作られてるらしい」

一行は隊列を組みながらゾロゾロと進む。しばらく何事もなく進んでいると広間に出た。ドーム状の大きな場所で天井の高さは七、八メートル位ありそうだ。

 

 と、その時、物珍しげに辺りを見渡している一行の前に、壁の隙間という隙間から灰色の毛玉が2匹湧き出てきた。

メルド「よし、あれは・・・・」

ハジメ「ラットマンだ!すばしっこいけど、みんなならそんなに苦戦しないと思う!気をつけて!」

メルド「ほう・・・・・」

ハジメは戦闘に期待ができない分、刃のアドバイスから魔物について鉱石と同じくらい学んでいた、それこそメルドに並ぶほどに

未来「ラジャ」

刃「了解ー」

モナドに『魔』の文字が浮かび上がり、光の刃が形成される

その刃でラットマンと呼ばれたネズミのような魔物を一突きに殺す

もう1匹のラットマンは刃の上段からの唐竹割りで真っ二つに引き裂かれた

メルド「フォーメーションの確認がしたかったんだが・・・・ハジメまさか俺より情報の開示がはやいとわ・・・」

ハジメ「いえいえ、メルドさんの役目をとってしまって・・・・」

メルド「いや、戦闘において情報は早いほどいいんだ、ハジメの方が早いならハジメが受け持った方がいい、安心しろ、足りない部分は俺が捕捉してやる、」

ハジメ「ありがとうございます」

ハジメ「にしても、あの二人は別格ですね」

メルド「いや、ステータス的には光輝たちと変わりない、おそらく他の面々とちがって命を奪うことに躊躇いがないんだろう、あれだけの速度で反応することは俺たちでも難しい、あの二人には何かそういうことをやっていたような経験があるのか?」

ハジメ「いいえ、僕たちと同じです」

そこからは特に問題もなく、未来と刃の反応するが一番早いものの、刃と未来が獲物を残して魔物のヘイトを取ることで順調に階層を下げていった

 そして、一流の冒険者か否かを分けると言われている二十階層にたどり着いた。

 

 現在の迷宮最高到達階層は六十五階層らしいのだが、それは百年以上前の冒険者がなした偉業であり、今では超一流で四十階層越え、二十階層を越えれば十分に一流扱いだという。

 

 ハジメ達は戦闘経験こそ少ないものの、全員がチート持ちなので割かしあっさりと降りることができた。

 

 もっとも、迷宮で一番恐いのはトラップである。場合によっては致死性のトラップも数多くあるのだ。

 

 この点、トラップ対策として〝フェアスコープ〟というものがある。これは魔力の流れを感知してトラップを発見することができるという優れものだ。迷宮のトラップはほとんどが魔法を用いたものであるから八割以上はフェアスコープで発見できる。ただし、索敵範囲がかなり狭いのでスムーズに進もうと思えば使用者の経験による索敵範囲の選別が必要だ。

 

 従って、ハジメ達が素早く階層を下げられたのは、ひとえに騎士団員達の誘導があったからだと言える。メルド団長からも、トラップの確認をしていない場所へは絶対に勝手に行ってはいけないと強く言われているのだ。

ハジメは何度か自分に飛ばされてくる弱った魔物を、某錬金術師のように錬成で動きを止め、確実に仕留めていた

 再び、騎士団員が弱った魔物をハジメの方へ弾き飛ばしてきたので、溜息を吐きながら接近し、手を突いて地面を錬成。万一にも動けないようにして、魔物の腹部めがけて剣を突き出し串刺しにした。

 

(まぁ、なんか錬成の精度が徐々に上がっているし……地道に頑張ろう……)

 

 魔力回復薬を口に含みながら、額の汗を拭うハジメ。騎士団員達が感心したようにハジメを見ていることには気がついていない。

 

 実を言うと、騎士団員達もハジメには全く期待していなかった。ただ、戦闘に余裕があるので所在無げに立ち尽くすハジメを構ってやるかと魔物をけしかけてみたのだ。もちろん、弱らせて。

 

 騎士団員達としては、ハジメが碌に使えもしない剣で戦うと思っていた。ところが実際は、錬成を利用して確実に動きを封じてから、止めを刺すという騎士団員達も見たことがない戦法で確実に倒していくのだ。錬成師は鍛冶職とイコールに考えられている。故に、錬成師が実戦で錬成を利用することなどあり得なかった。

因みに、当然アイデアのもとは某鋼のである

ハジメ(まさかオタクであることが役に立つ日がくるとわね、まあ、アルとは比べるまでもない小規模なものだし、他のみんなに比べれば役立たずであることに変わりはないけど)

その後も順調に進んでいたがふとメルドが足を止める、

 

メルド「擬態しているな、よーくみておけー」

その直後、前方でせり出していた壁が突如変色しながら起き上がった。壁と同化していた体は、今は褐色となり、二本足で立ち上がる。

ハジメ「ロックマウントだ!馬鹿力と威圧の咆哮っていうスタン技に注意して!」

ハジメの声が響く、

ロックマウントがドラミングを始めた

未来と刃が先陣を切るのが流れになっていたが、メルドが止める、

メルド「今回は光輝たちに任せてみよう」

未来・刃「「了解」」

光輝「わかりました、いくぞ龍太郎!」

龍太郎「おう!!」

飛びかかってきたロックマウントの豪腕を龍太郎が拳で弾き返す。光輝と雫が取り囲もうとするが、鍾乳洞的な地形のせいで足場が悪く思うように囲むことができない。

 

 龍太郎の人壁を抜けられないと感じたのか、ロックマウントは後ろに下がり仰け反りながら大きく息を吸った。

 

 直後、

 

「グゥガガガァァァァアアアアーーーー!!」

 

 部屋全体を震動させるような強烈な咆哮が発せられた。

 

「ぐっ!?」

「うわっ!?」

「きゃあ!?」

 

 体をビリビリと衝撃が走り、ダメージ自体はないものの硬直してしまう。ロックマウントの固有魔法“威圧の咆哮”だ。魔力を乗せた咆哮で一時的に相手を麻痺させる。

 

 まんまと食らってしまった光輝達前衛組が一瞬硬直してしまった。

 

 ロックマウントはその隙に突撃するかと思えばサイドステップし、傍らにあった岩を持ち上げ香織達後衛組に向かって投げつけた。見事な砲丸投げのフォームで! 咄嗟に動けない前衛組の頭上を越えて、岩が香織達へと迫る。

 

 香織達が、準備していた魔法で迎撃せんと魔法陣が施された杖を向けた。避けるスペースが心もとないからだ。

 

 しかし、発動しようとした瞬間、香織達は衝撃的光景に思わず硬直してしまう。

 

 なんと、投げられた岩もロックマウントだったのだ。空中で見事な一回転を決めると両腕をいっぱいに広げて香織達へと迫る。その姿は、さながらル○ンダイブだ。「か・お・り・ちゃ~ん!」という声が聞こえてきそうである。しかも、妙に目が血走り鼻息が荒い。香織も恵里も鈴も「ヒィ!」と思わず悲鳴を上げて魔法の発動を中断してしまった。

 

刃「おい!ボサッとすんな!」

慌てて刃がダイブ中のロックマウントを切り捨てる

香織たち「ごめんね」

謝ったものの相当気持ち悪かったらしく、まだ顔が青ざめていた

それを見てキレたものが一人

「よくもみんなを!」

どうやら気持ち悪さで青褪めているのを死の恐怖を感じたせいだと勘違いしたらしい。彼女達を怯えさせるなんて! と、なんとも微妙な点で怒りをあらわにする光輝。それに呼応してか彼の聖剣が輝き出す。

 

「万翔羽ばたき、天へと至れ――〝天翔閃〟!」

未来「おい!なにやってんだ!」

 

 メルド団長の声を無視して、光輝は大上段に振りかぶった聖剣を一気に振り下ろした。

 

 その瞬間、詠唱により強烈な光を纏っていた聖剣から、その光自体が斬撃となって放たれた。逃げ場などない。曲線を描く極太の輝く斬撃が僅かな抵抗も許さずロックマウントを縦に両断し、更に奥の壁を破壊し尽くしてようやく止まった。

 

 パラパラと部屋の壁から破片が落ちる。「ふぅ~」と息を吐きイケメンスマイルで香織達へ振り返った光輝。香織達を怯えさせた魔物は自分が倒した。もう大丈夫だ! と声を掛けようとして、笑顔で迫っていた未来の鉄拳制裁を食らった。

 

「へぶぅ!?」

未来「アホ!気持ちはわかるけどな、こんな狭いところで使う技じゃないだろうが!」

ハジメ「それに、こんな狭いところであんな大技を使ったら崩落するかもしれないし、消耗も無視できないでしょ、もう少し冷静になって、天之川くん」

 未来軍曹のお叱りとハジメの注意に「うっ」と声を詰まらせ、バツが悪そうに謝罪する光輝。香織達が寄ってきて苦笑いしながら慰める。

 

 その時、ふと香織が崩れた壁の方に視線を向けた。

 

「……あれ、何かな? キラキラしてる……」

ハジメ「へぇ~、あれはグランツ鉱石だね言わば宝石の原石みたいなもので、特に何か効能があるわけではないけど、その輝きが貴族のご婦人ご令嬢方に大人気で、加工して指輪・イヤリング・ペンダントなどにして贈ると大変喜ばれるらしいよ、求婚の際に選ばれる宝石としてもトップ三に入るとか。」

 

香織「素敵……」

香織はハジメにその宝石で作った結婚指輪をもらう想像をしてうっとりとした顔で誰にも気づかれないようにハジメに目を向ける

檜山「だったら俺らで回収しようぜ!」

 

 そう言って唐突に動き出したのは檜山だった。当然渡そうと思っているのは香織である。

 

メルド「こら! 勝手なことをするな! 安全確認もまだなんだぞ!」

 

 しかし、檜山は聞こえないふりをして、とうとう鉱石の場所に辿り着いてしまった。

 

 メルド団長は、止めようと檜山を追いかける。同時に騎士団員の一人がフェアスコープで鉱石の辺りを確認する。そして、一気に青褪めた。

 

騎士団員「団長! トラップです!」

メルド「なにっ!?」

美味しい話には裏がある。世の常である。

 

 魔法陣は瞬く間に部屋全体に広がり、輝きを増していった。

 

メルド「くっ、撤退だ! 早くこの部屋から出ろ!」

 

 メルド団長の言葉に生徒達が急いで部屋の外に向かうが……間に合わなかった。

 

 部屋の中に光が満ち、ハジメ達の視界を白一色に染めると同時に一瞬の浮遊感に包まれる。

 

 ハジメ達は空気が変わったのを感じた。次いで、ドスンという音と共に地面に叩きつけられた。

 

 尻の痛みに呻き声を上げながら、ハジメは周囲を見渡す。クラスメイトのほとんどはハジメと同じように尻餅をついていたが、メルド団長や騎士団員達、光輝達など一部の前衛職の生徒は既に立ち上がって周囲の警戒をしている。

 

 どうやら、先の魔法陣は転移させるものだったらしい。現代の魔法使いには不可能な事を平然とやってのけるのだから神代の魔法は規格外だ。

 

 ハジメ達が転移した場所は、巨大な石造りの橋の上だった。ざっと百メートルはありそうだ。天井も高く二十メートルはあるだろう。橋の下は川などなく、全く何も見えない深淵の如き闇が広がっていた。まさに落ちれば奈落の底といった様子だ。

 

 橋の横幅は十メートルくらいありそうだが、手すりどころか縁石すらなく、足を滑らせれば掴むものもなく真っ逆さまだ。ハジメ達はその巨大な橋の中間にいた。橋の両サイドにはそれぞれ、奥へと続く通路と上階への階段が見える。

 

 それを確認したメルド団長が、険しい表情をしながら指示を飛ばした。

 

メルド「お前達、直ぐに立ち上がって、あの階段の場所まで行け。急げ!」

 

 雷の如く轟いた号令に、わたわたと動き出す生徒達。

 

 しかし、迷宮のトラップがこの程度で済むわけもなく、撤退は叶わなかった。階段側の橋の入口に現れた魔法陣から大量の魔物が出現したからだ。更に、通路側にも魔法陣は出現し、そちらからは一体の巨大な魔物が……

 

 その時、現れた巨大な魔物を呆然と見つめるハジメの呻く様な呟きがやけに明瞭に響いた。

 

――まさか……ベヒモス……?……

 




光輝のアレに関しては覚醒していても経験がないので光輝ならああなるかなぁと思って入れました、
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