ヴァルハラの乙女   作:第三帝国

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長らくお待たせして申し訳ございません。


第18話「英雄再び」

 

 

【原作】では無理をしたバルクホルンがネウロイに深入りしすぎた点。

加えて少佐と一緒にいる宮藤に嫉妬を覚えたペリーヌが己の実力を証明すべく無茶な機動をするバルクホルンに随伴。

 

結果双方が衝突、その隙をネウロイが逃すはずがなく攻撃。

バルクホルンはシールドを展開するが間に合わず光線が弾装に触れて引火。

負傷して墜落から始まる主人公宮藤との係わり合いなのだが…どうしてこうなった、というか!

 

「痛っいなあ、畜生!!」

 

現在絶賛落下中!

上空からはネウロイの光線が逃がさぬとばかりに飛んできている。

 

『…っトゥルーデ!意識はあるのね!!』

「ん、ああ。ミーナかわたしは大丈夫だ。腕に破片が刺さって痛いけど何とか」

『そう…』

 

ミーナから通信が入る。

何とか、と言ったけどネウロイの光線でペリーヌの銃が爆発して、

飛び散った破片が左腕に何個も突き刺さっており、焼き鏝を押し付けられたような痛みがする。

 

というか、血まみれだ。

左腕は動かしにくいし、左の方で持っていた銃なんて落としてしまった。

制服を駄目にした点に銃の紛失…後で用意する書類が面倒だ……。

 

「それより、ペリーヌに意識がない。

 腹部に出血している、早く宮藤を」

 

間一髪で捕まえ、現在胸元に抱いているペリーヌに意識がなかった。

腹部に光線で暴発した銃の破片が突き刺さっており血が制服越しに滲み出ている。

状況といい【原作】のバルクホルンそっくりだ、くそ。

 

『ペリーヌさんが!?分かったわ、すぐに宮藤さんを向かわせます』

「たのむ」

 

よし、メイン盾兼治癒ユニットの宮藤が来れば何とかなる。

後は安全な場所まで離脱できたらいいけど、ストライカーユニットは破片を浴びたせいで出力が出ない。

煙も吐いているからペリーヌを抱えて安全圏に不時着するぐらいしかできないだろう。

 

それにしても参ったな。

機動力が発揮できないせいで、どうもネウロイから離脱できない。

というか、このまま墜落するしかないようだ。

 

それに――――あ、やばい。

 

『トゥルーデ!逃げて!!』

 

特大の光線が逆さの視界。

上空にいるネウロイから迫ってきている。

というかこっちに突っ込んで来ている、シールドじゃあ、防げない質と量だ。

定石通りならここは逃げの一手だけど。

 

「出力が出ないっ…!!」

 

畜生、ユニットの出力が出ないせいで逃げられない。

 

ああまったく、まいったな。

まさかここでこういう事になるとは。

 

「すまん、いや、ごめんペリーヌ」

 

シールドと自身という肉の壁では無駄と知りつつもペリーヌを抱きしめる。

死にかけたことは何度もあったけど、こんな形でなるなんて。

無線でミーナだけでなくリネットに坂本少佐まで何か叫んでいるけど、その内容が頭に入らない。

 

心残りは沢山有る。

中でもこの世界の行方、

ネウロイがいなくなった後の世界が見たかった。

 

だから、頼んだぞ。

 

「世界を頼む、主人公。

 そしてごめん、ミーナ、エーリカ」

 

そう言ってわたしは眼を閉じた。

閉じたのだけど…直撃するはずだった光線は防がれた。

どうも主人公という存在をわたしはまだまだ甘く見ていたようだ。

 

轟音とガラスが砕けるような炸裂音が響く。

瞑っていた眼を見開けばそこにはネウロイが粉々に砕けており。

 

「バルクホルンさん、ペリーヌさん!大丈夫ですか!」

 

そう、またも宮藤だった。

シールドでネウロイをぶち貫いて主人公はそんな事を言った。

この主人公が非常識なのは重々承知していたけど、盾って、武器にも使えるんだな…。

 

 

 

※  ※  ※

 

 

 

時間は少し前に戻る。

 

「ペリーヌさんが!?分かったわ、すぐに宮藤さんを向かわせます」

 

落下するバルクホルンからの報告にミーナが叫ぶ。

仲間の負傷、それも極めて重症という内容にミーナ自身が直ぐにでも駆けつけたかったが、

そうはさせまいとネウロイの光線がミーナとリネットの直ぐ傍を過ぎ去る。

 

「…っリネットさん!」

「はい!」

 

ミーナの指示でリネットが対戦車ライフルをお返しとばかりに発砲。

ネウロイに直撃し、白い結晶が吹き出るがまだ墜ちない。

それどころか周囲に我武者羅に光線を放っている。

 

「固いわね…!?」

 

ネウロイの頑丈さは人類側のあらゆる兵器を超越しているが、

大型ネウロイ、特にドーバー海峡を越える大型ネウロイは特にその常識を超越している。

 

何せ戦艦すら破壊するだけの攻撃力、

さらにその主砲の直撃にある程度耐えるなど常識を超えている。

だからこそ魔女、ネウロイの天敵足りうるウィッチの出番だ。

 

何時もならこのあたりでコアが露出するか、

飛行するだけの力を喪失して墜落しているはずだが、

どういうわけか今日のネウロイはしつこい上にここまで頑丈と来るとミーナは辟易する。

 

早急にコアを見つけ出し破壊しなければ長期戦は免れないだろう。

ゆえにミーナは指揮官として回答を導き出す。

 

「坂本少佐、宮藤さんともう一度突入するように!

 バルクホルン、クロステルマンの両者の離脱時間を稼いでください!」

 

了解した、という返答を受けてため息。

これならシャーリーにルッキーニの2人も連れてくるべきだったか?

そうミーナは考えたが、今から呼び寄せても間に合わない上に基地の戦力がエイラとサーニャだけになってしまう。

 

「だから現状の兵力で何とかするしかないわね」

 

足りない戦力で何とか賄う。

ネウロイとの戦いで昔から変わらないことだ。

カールスラントからの撤退、そしてガリアで最愛の人を失った時も―――。

 

『っ…バルクホルン!!』

 

坂本少佐の言葉に意識が現実に戻る。

慌てて視線をネウロイに向けて見ればネウロイが急降下を始めていた。

それも現在進行形で落下しているバルクホルンとペリーヌの2人に向かって。

 

2人が狙われている。

その事実にミーナは気付く。

 

同じく気付いたリネットが即座に狙撃し命中させるが止まらない。

坂本少佐も銃撃を浴びせつつネウロイの後を追うように降下するが間に合わない。

ネウロイは光線を放ちつつバルクホルン達に体当たりすべく降下している。

 

「トゥルーデ!逃げて!!」

 

悲壮な願いをミーナは声に出す。

だが、現実は非情であった。

 

『出力が出ないっ…!!』

 

バルクホルンからの返答は逃げることは不可能、というものであった

その事実にミーナは顔を青ざめる。

 

「…っ連続射撃、始めます!!」

 

事態を把握したリネットが連続して対戦車ライフルを放つ。

いくらウィッチとして基本的な体力が向上しているとはいえ、

対戦車ライフルなので連続射撃は肩に相当な負担を掛けている行為である。

が、それを承知でリネットは行い見事に命中させるがネウロイはその動きを止めなかった。

 

『すまん、いや、ごめんペリーヌ』

 

達観したバルクホルンの声が無線越しに届く。

ミーナはそれに最後まで諦めないように言おうとするが言葉に出ない。

 

『世界を頼む、主人公

 そしてごめん、ミーナ、エーリカ』

 

最後となるであろう言葉をバルクホルンが呟く。

主人公という予想外の言葉にミーナは驚くと同時に、

自分やエーリカの名前が出たことで胸が痛めつけられる。

本来謝罪すべきはかかる事態を招いた指揮官であるミーナであるのだから。

 

そして誰も彼もが終わりだと感じたが―――。

 

『私が、みんなを守るんだから―――!!』

『宮藤!?』

 

宮藤芳佳がそう叫び、

坂本少佐の驚きを置いてゆくように芳佳がネウロイに突撃。

装備するストライカーユニットの性能以上の速度でネウロイに向かって降下する。

 

「み、宮藤さん!?」

「芳佳ちゃん、1人じゃ無理だよ!!」

 

思わぬ展開にミーナにリネットも驚く。

ユニットの性能以上の力を出している事と、

1人で大型ネウロイに立ち向かう無謀な行いに対して。

しかしそれは無謀な突撃でない、という事実を目の当たりにする。

 

芳佳は銃を撃たずにシールドを展開。

そのままネウロイに体当たりしその体に食い込みコアを破壊してしまう。

ネウロイは耐え切れず、その場で白い結晶を撒き散らして砕け散った。

 

「よ、芳佳ちゃん……す、すごい……」

 

常識外れの光景にリネットが呆然と感嘆の言葉を漏らす。

対するミーナはついこの間入ったばかりの素人が空母『赤城』を守ったことに続き、

再度やり遂げた偉業に言葉を失っており、出撃前にバルクホルンが語った事を振り返った。

 

「英雄、ね」

 

まだネウロイと呼ばれなかった人類と怪異との戦いでも、

やはりウィッチが先陣を切り開き、人々に希望を齎す英雄的存在であった。

現代の戦いでも英雄と呼ばれるウィッチは実在しそこにミーナ自身も含まれている。

 

だが、この戦いは異常だ。

航空歩兵、いいやウィッチ全般から見て芳佳は遥かに抜きん出ている。

単機であそこまで出来るウィッチなどミーナは今まで聞いたことがない。

 

「とんでもない人材を引き当てたわね…」

 

あの宮藤博士の娘、

という肩書き以上の実力にミーナは嘆息する。

そして、妙に芳佳を気にするバルクホルンの態度に納得した。

 

だが、

 

「けど、主人公って何かしら?」

 

なぜバルクホルンが芳佳のことを主人公、

と呼んだのかミーナは理解できず引っ掛かりを覚えた。

 

 

 

 

 






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