ヴァルハラの乙女   作:第三帝国

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ヴァルハラの乙女を部分的に連日更新しています。
興味がある片はぜひそちらにもお越しください。

あと、今年もバレンタインデイ撲滅委員会に参加します


第2話「原作開始Ⅰ」

1944年、夏。

本日は晴天なり、されど波高し。

けど、下界の様子とは違いここは上空5000メートル。

どこまでの澄み渡る青い空、そして流れる風が心地よい。

ストライカーの構造上コックピットで計器に囲まれることはなく、

魔法障壁があるとはいえ、ほとんど生身なせいかまるで自分が鳥になった気分だ。

多くのウィッチが空に思いをはせ、シャーリーが音速にこだわることも頷ける。

 

ただ、「パンツじゃないから恥ずかしくないもん!」な世界なのはどうにかならないものだろうか…。

自分はスパッツを履くことで辛うじて精神を安定させているが、未だに慣れない。

 

で、だ。

 

「なんだい、不景気な面をして?」

「いや、なんでもない」

 

ズボンじゃなくてどう見てもパンティーを履いている上に、

グラマラスな我侭ボディを持つ少女、シャーロット・E・イェーガーがわたしの横にいた。

 

何故彼女がわたしの横にいるか?

それはわたしが新型ユニットであるTa152の、

最高時速760キロという性能を知ったスピード狂いの彼女が、

 

「勝負しようぜ!!」

 

とわたしの試験飛行に付き合ったからだ。

加速試験もかねた結果、加速魔法ありでは、

彼女に追い抜かれてしまったが魔法なしではこちらが振り切ることに成功した。

史実ではこのユニットの元ネタの設計者であったクルト・タンク氏は2機のP51に追われたが、

自らが操縦したTa152は完全に振り切った、というエピソードがあるように加速性能は抜群であった。

 

本国から来た技術スタッフの「最強のレシプロ型ストライカーユニット」

という触れ込みは半信半疑であったが、最強の名には相応しいことが今日証明された。

そして、もしもこれが開戦前にあれば祖国を守りきることができたのに、と悔しがった顔をわたしは忘れることができない。

 

「いやー、まいったまいった。

 たしかに私の加速魔法なら追い越すことが出来るけど、

 魔法なしだとまったく追いつけないなんて、高高度性能もすごいしなぁ!」

 

「そうか、それは――――おい、叩くな!今は飛行中なんだぞ」

 

「細かいことは気にすんな!

 本当、カールスラントの技術はすごいなぁ!」

 

「あーわかった、わかったから。

 いいから止めろ、今は一応任務中なんだぞ!」

 

HAHAHAHA!

とアメリカンな笑い声と共にバンバンと肩を叩く。

一応試験飛行と哨戒飛行も兼任した任務中なのでビシッと決めて行きたいのだが、

別に悪意があってやっている訳でなく、アメリカン的親愛表現であるのは分かっているから始末に負えない。

 

ついでに、普段からちゃらけた態度を取り、

おまけにユニットの無断改造が原因で原隊からここに飛ばされたのだが、

空戦における才能はあるし、こんなアメリカンなノリで部隊の空気を和らげたりと彼女は501に必要な人材だ。

 

「しっかし、いいなぁーバルクホルンは、

 新型ユニットがもらえて、私もほしいなー」

 

うっとり、とまるで恋する乙女かのごとく、

彼女が足に履いているストライカーユニットを見る。

一瞬、ウィッチは美人揃いなためシャーリーの乙女な表情にドキッと来たが、

残念なことに彼女の対象はわたしではなく、足に履いているストライカーユニットであった。

 

「だったら、普段の素行を改めるべきだとわたしは助言するがな。

 ああ、一応言っておくが軍機に触れるものだからイェーガー大尉に触れさせるわけにはいかない」

 

「それがどーした、軍機は破るもの!

 あ、痛、いたたたた!!ごめんごめん冗談だってば!」

 

とりあえず頭を締め付けるように腕を伸ばし、

この某革命提督的精神主義者にお灸をすえておくことにする。

そのせいで、お互いかなり密着しており前世ならマイ・ソンが反応してもおかしくないが、

悲しいことに今のわたしは女性であり、裸やズボンと主張するパンツを除けばドキマギしない。

 

「でさ、話は変わるけど、今回坂本少佐が連れてくる新人がどんな奴か教えてくれない?」

 

わたしの胸元で赤橙色の髪をした少女が瞳を輝かせ問いかけてきた。

 

「それはウィッチとしての技能のことか?それともおっぱいの事か?」

「もちろん、おっぱいさ!」

 

即答であった。

しかもこれ以上ない程、実にいい笑顔つきで。

 

「やはり、おっぱいはアレか?

 夢とロマンが詰まっているからか?」

 

「話が分かるじゃないか、その通り。

 おっぱいには夢とロマンが詰まっているのだからさ。

 できれば今回来る新人もリーネくらいあると嬉しいなぁ」

 

「おいおい、リーネの歳であの大きさは例外中の例外で、

 ペリーヌやエーリカあたりが平均であり、常識的というべきだろ」

 

「ペリーヌか、ふっ」

 

こいつ、今鼻で笑いやがった……。

 

「…本人の前でそんなこと言うなよ、

 ああ見えて毎晩こっそりバストアップの体操をしているくらい健気なのだから。

 それと胸は小さいは小さいなりに需要はあるし、単にデカければいい物とはわたしは思わないな」

 

「大艦巨砲主義は常に正義っていうだろ?」

 

「貴様は全世界の貧乳に喧嘩を売ったな――――わっぷ!?」

 

わたしの腕の拘束を振りほどくと、

シャーリーはわたしを胸元に引き寄せて自らの胸に押し付けた。

まあ、ようするにわたしは彼女の胸に挟まれパフパフ状態であったわけだ。

 

「ほーら、これでも貧乳派でいられるかなー?」

 

むぎゅ、とわたしをさらに胸に押し付ける。

そして感じる女性特有の柔らかく、暖かい感触にほのかな香りは眠気を誘う。

このままずっといたいと願ってしまいそうで、まるで赤子に帰ったかのような感覚。

 

貧乳信者というより、並乳、豊乳、

美乳も加えてそれぞれの乳に乳なりの魅力を感じる自分であるが、

はたしてこのような心地よい感覚をそれらが再現できるのであろうか?

 

貧乳はステータスだ、希少価値だ。

という言葉を前世で聞いたがそもそも貧乳は成長途上で一度は誰もが通る道。

とはいえ、確かに胸の大きさで女性の全てが決まるわけではないし萌えの要素だ。

貧乳は幼さと健気さを主張し、我々を今後の成長と健気な態度で頬を緩ませる。

 

しかし、そんな貧乳も多くはいつか成長し、やがて豊乳や並乳へと変わってしまう。

中には一生貧乳の魅力を後の世代までその身をもって語ることが出来る人物もいるが、

貧乳とは時間の経過と共に消え逝くひと時の儚い命で、その尊さをわたしは敬意を払っている。

 

けど、今はこの巨乳の圧倒的母性の魅力にわたしは逆らえないっ……!

 

「負けを認めるか?」

「ぐっ、わ、わたしは」

 

ここで負けを認めてしまえば、

この世全ての貧乳少女に面目が立たないし、

何よりもペリーヌのためにも巨乳に屈するわけにはいかない!

 

「正直になれば楽になるよ?」

「ち、違う、そんなことは――――」

 

だが、彼女の言葉で心が揺らぐ。

大艦巨砲主義という言葉はまるで、

男性だけが巨乳に誘惑されているような言い方だが、

その言葉とは逆にこれは慈愛と慈悲を主張する母性の塊だ。

彼女の言うとおり、母性に身を委ねればどれだけ楽になることか!

 

だから決断しよう、わたしは――――。

 

「なっ!?」

「っ!!」

 

結論を口にしようとした寸前、

遠くから響く爆発音、さらに水平線の先で小さく煙が立ち上った。

今自分がいる方位と位置、時間から推測して煙が立ち上った場所には、

 

「『赤城』がネウロイに襲われたな…!」

 

基地に寄港する予定の赤城がいる。

そう、これは原作が開始した瞬間だった。

 

『こちら、ミーナ。

 『赤城』から大型ネウロイ1に襲撃されたと緊急救難信号を受信したわ。

 バルクホルン大尉とイェーガー大尉の2人は直ちに『赤城』の援護へ向かって。

 現在坂本少佐と『赤城』の飛行隊が抑えているけど、押し切られるのは時間の問題よ』

 

「了解した!直ちに向かう」

 

そして細かい情報をいくつか聞き終えるとシャーリーと離れる。

改めて彼女に状況を説明しようと思い彼女を見るが、彼女の顔は先程までのおちゃらけた態度は消え、

緊張と興奮がミックスされた、所謂これから戦いに赴く兵士の表情を浮かべていた。

 

「行くぞ、イェーガー。ついてこられるか?」

「ハッ、もちろんさ!」

 

わたし達の間ではそれだけで十分だった。

申し合わせたわけでもなく、次の瞬間には最高速度で『赤城』の元へ飛んだ。

 

 

※ ※ ※

 

 

――――駄目だ!

手は軍刀でネウロイを切り裂いた確かな感触を感じた。

巨大なエイのような姿をしたネウロイは金属音を立てて裂けた。

下に白い結晶となった破片が落ち、先程まで一方的に蹂躙されていた海軍の将兵が喝采を挙げる。

しかし、坂本美緒の思考は違った。

すなわち殺し損ねてしまったという後悔であった。

なぜなら、ネウロイはコアを破壊しなければ何度でも修復してしまう厄介な性質を有している。

事実、派手にその黒い翼をもいだがすでに修復が始まっている。

(そもそも私1人では火力不足だ)

悔しげに歯を食いしばる坂本少佐。

通常、こうした大型ネウロイに対するセオリーは集団攻撃である。

早い話、複数のウィッチが寄って集って蛸殴りにするのがいつものやり方だ。

大型ネウロイのその火力の大きさは単機では手に余ることもあるが、

そうしなければ、分厚い装甲の下に存在するコアを破壊することはできない。

下界、

海では空母『赤城』を始めとする艦船がいるが、

大型ネウロイの厄介な点は駆逐艦クラスの主砲ではまったく効果がない。

それこそ、戦艦クラスの主砲による直撃弾を浴びせねばならないほどに。

だが、今は戦艦どころか重巡洋艦すら存在していない。

こうしてネウロイを引き付けていても、全滅は時間の問題に過ぎないのだ。

『駆逐艦『浦風』轟沈!』

「くそっ!」

視線を下に向ければ、

陽炎型駆逐艦第11番艦の『浦風』、

その艦首が持ち上がると棒立ちになって急速に沈んだ。

その周囲には黒煙と重油の輪が広がり、濃紺色の海を汚していた。

(あれでは、誰も助からないな……)

仇は必ずとる、と坂本少佐は内心で誓ったが現状は厳しい。

『赤城』の航空隊は次々に落とされている上に、ネウロイの火力に衰えは見られない。

それどころか、ネウロイはこの中で一番脅威である彼女に向けて光線を激しく放ってきた。

幾十もの光線がただ一人、坂本少佐を狙う。

彼女はその光のシャワーの間に生じる僅かな隙間に曲芸のごとく入り込み回避する。

隙あらばもう一度切り込むことをもくろみ、

ただ前へと進むが、ネウロイも一度斬られたことを警戒しており、

坂本少佐を中心に円を描くような動きをとり、決して自分から近寄らないようにしている。

そのおかげで攻撃は彼女一人に集中してはいたが、

それでも艦隊からすれば空から降り注ぐネウロイの光線の威力に変わりはなく、

直撃を受けて大破漂流する艦や、大爆発を起こしてくの字に折れる艦が相次いだ。

『赤城』の航空隊も片手で数える程度まで減り、

至近弾で巡洋戦艦を改装した『赤城』の船体が大きく揺れるに至り、坂本少佐の焦りはピークに達した。

「こんな時、リベリオンの映画なら騎兵隊が参上するのだがな……」

焦りだけでなく、

怒りや興奮がごった煮された思考の中で、

なぜか慰安で見たリベリオンの西部劇映画を思い出す。

鳥の羽飾りをした野蛮なインディアンに追い詰められ、

もはやこれまで、という時にカーボーイハットを被った正義の騎兵隊が駆けつける!

と、実に分かりやすい物で、ヒーロー精神がこれでもかと強調されていた。

しかし現実は、この戦争でそんなことはない、

いつも援軍は遅すぎ、少なすぎが定番でそんな話は虚構に過ぎない。

そんな黒い感情が坂本少佐の心を犯そうとした刹那。

彼方の空から飛翔音と同時に飛来した弾丸がネウロイを叩いた。

そして続けて曳光弾のシャワーがネウロイに浴びせられ破壊音が轟く。

少なくとも20ミリクラスの大口径の弾丸らしく、ネウロイから金属を引きずったような悲鳴が挙がる。

「まさか……!?」

事前に501から連絡は来ていた、

試作機の飛行訓練もかねて自分と会うと。

そう、その名は――――。

「騎兵隊参上、といったところかな少佐?」

ゲルトルート・バルクホルンであった。

 

 




以上です、

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