ヴァルハラの乙女   作:第三帝国

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TS物によくある保健体育な内容です。
苦手な人はUターンを推奨します。


幕間の魔女「芋大尉の○○○な日」

1944年 某月某日 ブリタニア 第501基地 某所

 

 

私、またはワタシ。

ゲルトルート・バルクホルン。

という少女、ウィッチの人生は未だ20年も経過していない。

しかし、過ごした時間の密度は前世よりも遥かに濃く、ずっと深い。

 

つくづく前世の自分の未熟さに呆れると同時に、

この世界で自分を支えてくれた友人、知人、人々の優しさにはいくら感謝しても足りない。

 

異世界TS転生者。

という異物にして異端者。

 

しかも文化と時代、常識、言語が全然違うせいで、

右往左往していたが親しい人々はそんな自分を助けてくれた。

 

だからこそ、彼ら、彼女らに恩返しをしたい。

だからこそ、彼ら、彼女らを傷つけ、殺したネウロイが許せない。

だからこそ、彼ら、彼女らを傷つけ、殺してしまった不甲斐な自分が許せない。

 

ゆえに、復讐の猟犬としてずっと戦ってきた。

だが、どれだけネウロイを叩き落としても何も解決しない。

復讐の猟犬として戦える時間は残り2年、しかし未だブリタニアで足止めを受けている。

 

だか、彼女ならば。

彼女ーーーー宮藤芳佳ならば確実にネウロイを殲滅してくれる。

 

ゆえに、ミーナと共に統合戦闘航空団の部隊立ち上げに協力した。

【原作知識】がまるで役に立たない様々な困難や難題にぶち当たりつつも、何とか今日まで来れた。

 

全ては宮藤芳佳が活躍する舞台を整えるために。

全ては宮藤芳佳を何が何でも守り、この世界を変えてもらうために。

 

それが自分の役割だと悟って今日まで戦い、生き延び続けた。

どんな困難、痛い事や、怖い事があっても耐えて、乗り越えてみせる。

 

それが今日まで変わらない信念なのだがーーーー。

 

「トゥルーデ、大丈夫?」

「吐いたから少しは楽になった・・・げほ」

 

ーーー信念なのだが、女性特有の問題について何年経過してもまったく乗り越えられる気がしなかった。

 

そのせいで現在エーリカの介護を受けつつ絶賛トイレとお友達なヒロイン。

もといゲロインなウィッチがいた、というかワタシ、ゲルトルート・バルクホルンだった。

 

「元々トゥルーデはJG52でも『重い』方だったけど、ここまで酷いのは久々だね・・・」

 

そう言ってエーリカが優しく背中を擦ってくれた。

小さな手だが温かく、擦ってくれるその感触は気持ちいい。

 

「そう、だな。

 自分でも気づかぬ内に疲れていたのと、

 気が緩んでいたせいかもしれないな・・・」

 

思えば野郎だった前世も仕事がある日は大丈夫だったけど、

休日になって気が抜けた途端、貯まった疲れが一気に来てよく熱を出して寝込んだな・・・。

 

だがそんな前世よりも今世のお月様、

あるいは女の子の日がまさかそれ以上にこんなに辛いとはな・・・。

内蔵が雑巾のように捻られた挙句、ジワジワ締め付けられるような痛さに未だ慣れない。

 

「ほらほら、トゥルーデ。

 ズボン脱いで『アレ』を交換しちゃおうね~」

 

「あ、ああ・・・」

 

言われるがままパンツ、

もといズボンを脱ぎーーーーまあ、予想通りの状態を目撃する。

体の内側、内臓に近い場所から出血大サービスだなんて・・・。

 

「・・・・・・はぁ、」

 

もう慣れた動作で『アレ』を交換しつつため息を漏らす。

よもや女性の体がここまで面倒だとは・・・前世の野郎だった時は想像できなかったよ。

しかも、嘔吐とか冷え症を筆頭に様々な体調不良に直面するなんて・・・色々辛い。

野郎だった前世の肉体のメンテナンスが如何に楽だったか知るだけに・・・なお辛い。

 

「カールスラント防衛戦とかバトル・オブ・ブリテンの時とか、

 トゥルーデ、気を張って我慢していたけど本当はよくないし休むのが一番だよ。

 病気とか炎症じゃないのが分かっているからお薬飲んで今日はゆっくり休もうね」

 

「エーリカの言う通りそうしよう・・・今日は休むか」

 

「ん、それがいいよ。

 トゥルーデは頑張り屋さんだし、

 休んでいいと思うよ、ミーナにはもう言ってあるから大丈夫」

 

今度はエーリカにわしゃわしゃと頭を撫でられる。

こちらも何だが気持ちいいし、精神的になんだかリラックスする。

何時もは撫でる方だが、こうして撫でられる側になるなんて何年ぶりだろうか?

 

「ねえ、気分まだ悪いんじゃない?

 肩を貸すからトゥルーデ、腕を上げて」

 

言われるまま腕を上げ、

エーリカに立ち上がるのを助けてもらう。

 

「自分が言うのもアレだが・・・重いだろ、エーリカ?」

 

ガッチリ鍛えた肉体は重い上に、

エーリカとは体格差があるから数字以上に重く感じているはずだ。

 

「にひひひ、

 このくらい大丈夫だって。

 昔はトゥルーデが私を助けてくれたし」

 

「そうか・・・ありがとう、エーリカ」

 

屈折の無い笑顔で答える金髪の天使がいた。

やはりエーリカはマジ天使、略してEMT(エーリカマジ天使)であった。

 

「大尉ー、だいじょうぶ?

 ・・・っふぇ!?ほ、本当に、だいじょうぶなの!?」

 

トイレから出た時、ルッキーニが駆け寄って来た。

ワタシがエーリカの肩を借りてグッタリしているのを目撃し、心配そうに様子を伺う。

まあ、普段小言をガミガミ言っている人間が突然顔を青くさせ、口元を抑えてトイレに駆け込めばそうなるだろう。

 

「こら、ルッキーニ。

 ゲルトが心配なのは分かるが、

 あまりそういう事はだな・・・」

 

「あ、あのね。

 ルッキーニちゃん。

 駄目だよ、バルクホルンさんに聞いちゃ・・・」

 

ルッキーニを追いかけて来たシャーリー、

それに宮藤を筆頭に他の全員も後からぞろぞろとやって来た。

女性特有の問題についてそれぞれ抱えているだけに、全員気まずそうにしている。

 

「え、ええ~~~、なんで?

 だって、バルクホルン大尉だよ?

 いつも力持ちで、強い大尉の事がシャーリーは心配じゃないの?」

 

「あー、いや。

 私だって心配はしてるんだけど・・・」

 

不思議がっているルッキーニに対し、

シャーリーは言いづらそうに言葉を詰めらせた。

 

何か言いたげだが、

どう言えば良いか分からず、

時々こちらを気まずそうに見ている。

 

やはり彼女は気遣いができるとても良い人間であるのがよく分かる。

軍隊に入ったのが昨年の1943年と意外と遅いせいか、

一見豪快で、物怖気しない性格だが意外と常識人なところがあるしな。

 

「生理だよ、ルッキーニ。

 実は重い方でさ・・・ここまで来たのは久々だよ」

 

なので自分から敢えて情報を開示した。

こうした時は自分から言っておくのが一番良い。

 

「せいり、って何?」

 

くうきが、こおりついた。

 

「えっと・・・」

 

ルッキーニの予想外の回答。

これに思わず助けを求めてシャーリーに視線を動かす。

だが彼女の目は「魚」の文字となって泳ぎ始めていた。

 

「ルッキーニ、もしかして・・・訓練学校で保健体育の授業をしていない?」

 

エーリカがまるでネウロイと対峙している時のように真剣な表情で質問する。

平時ならば時間を掛けて軍事訓練だけでなく性教育を含め一般常識全般を教えていたが、

 

ウィッチの需要が追い付かない今どきは一般常識の教育を省き、

軍事訓練だけ即席に叩き込む方針が特に欧州では強い、と聞いていたが、もしや・・・。

 

「うん!ウィッチは処女じゃないと駄目!

 エッチしちゃ駄目!ぐらいしか知らないよ!」

 

無垢なまま、純朴な笑顔と共にルッキーニが答えた。

この幼い少女の口から「処女」「エッチしゃ駄目」なんて言葉が出ると、

何だが変な性癖とか、あるいは愉悦な感情が芽生えそう・・・じゃなくてだ!!

 

「あー・・・私とハンナが訓練学校を卒業する直前。

 戦局が厳しいから軍事訓練以外の座学を省き始めたから、

 もしかして、と思ったけど・・・やっぱそうか、そうだよね」

 

エーリカが納得するように頷く。

 

「じゃあ、いい機会だから私が教えよっか?」

 

「えっ!?ハルトマン中尉が!」

 

「ふ、ふーん。

 こう見えて私はドクトル・・・お医者様の子供だよ?

 しかも、母様は前大戦に参戦したウィッチだったから、

 戦場における女性特有のアレやらコレやらの悩みについて詳しんだ」

 

ルッキーニにの驚きに対し、

びっくりするほど無い胸を張ったエーリカが誇らしげに語った。

 

「ハルトマンさんも親がお医者さんだったんですか!

 だったら私だって診療所のお手伝いしていたから、分かります!

 お婆ちゃんは扶桑沖戦役でも活躍したウィッチなんですよ、実は!」

 

と、その時。

医者、と聞いて何やら対抗心を燃やした宮藤が挙手する。

だが、エイラ曰く残念賞なため胸が揺れることはない。

 

「前大戦に参戦したウィッチ、ならお母さんもそうです。

 部隊に来る前、お母さんから色々教えてもらったから、

 私だってルッキーニちゃんに教えることだってできますよ!」

 

母親が第1次ネウロイ大戦におけるエースウィッチであったリーネも挙手する。

年齢には似合わない豊かな実り、母なる双丘が揺れる・・・。

 

「へぇ、まさかリーネがここで名乗り出るのかぁ・・・面白いじゃん」

 

エーリカが実に面白い、とばかりに目を細める。

確かに面白い展開かもしれない、特に負けん気の強い宮藤なら分かる。

 

だが、ほんの少し前まで緊張しっぱなしだった新人。

もといリーネの予想外な積極性にエーリカは思うところがあったのだろう。

 

それは兎も角。

 

「お前たち・・・その、いい加減。

 トイレの前でそういう事について雑談するのもどうかも思うぞ・・・?」

 

「そ、そうね・・・。

 同じ女性同士でも、その、ね・・・」

 

坂本少佐とミーナが疲れ気味に零した言葉が現状の問題点を指摘していた。

 

 

結局あの後、自分ことバルクホルン。

坂本少佐、ミーナの3人を除いた部隊全員でルッキーニへ先輩として、

ウィッチとして、女性として覚えるべきアレやらナニやらを教えることが決定。

現在ルッキーニ自身あまり使っていない自室に集合し皆で教えることになったのをここに記す。

 

 

 


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