アルゼンチン帝国召喚   作:鈴木颯手

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第八話「紛争1」

第八話「紛争1」

フェン王国が5年に1度行っている軍祭。文明圏外国の武官がたくさんやって来るこの催しにガハラ神国の風竜騎士団団長スサノウも参加していた。

そんなスサノウは上空から下の大海原を見る。そこには常軌を逸した灰色の船10隻が見える。その内2隻は風竜が着陸できそうな程広い甲板を持っていた。

東の国の新興国、アルゼンチン帝国のものらしい。

 

「眩しいな」

 

スサノウの相棒の風竜が話しかけてくる。

 

「確かに、今日は快晴だな」

 

上を見れば雲が少なくとても眩しかった。

 

「違う。あの下の船から線状の光が様々な咆哮に高速で照射されている」

「光?何も見ないけど」

「いや、人間には見えない光だ。我々が同胞と会話をする時に使う光、人間にとって不可視の光だ。それに似ている」

「へぇ、それってどのくらいまで届くんだ?」

「個体差もあるがワシは120kmくらい先まで判る。だが、あの船の光はそれよりも遥か彼方まで届くようだ。それにワシらの光より濃い」

「まさか……、あの船は魔通信以外の方法で通信できると言う事なのか?」

「そう言う事だ」

「アルゼンチン帝国、凄いな」

 

一方のアルゼンチン帝国海軍でも似たような事が起きていた。

 

「あり得ない。まさかあの竜がレーダーに似たものを使用しているとは……」

「しかし間違いありませんよ」

「流石異世界。珍しい生体の竜もいるんだな」

「ステルス戦闘機を本格的に運用し始めないといけないかもな」

 

そうこうしている内にアルゼンチン帝国軍による演習が開始される。発砲するのはグレート・ディアボロス級原子力戦艦の二番艦イービルアイである。46㎝三連装砲4基による大砲撃が行われる。廃船は一瞬で破壊され粉々になった。

 

「あれが……アルゼンチン帝国の実力……」

 

剣王は望遠鏡から見える光景に茫然とする。想像以上のアルゼンチン帝国の実力に段々と笑みが浮かんでくる。

 

「直ぐにでもアルゼンチン帝国と国交を樹立する準備に取り掛かろう。不可侵は勿論できれば安全保障条約も取り付けたいな」

 

剣王は満面の笑みでそう宣言するのであった。

 

 

 

 

 

 

グレート・ディアボロス級原子力戦艦イービルアイ

「西から飛行物体だと?」

「はい。報告によると時速は350kmほどでまっずぐここに向かってきているとの事です」

 

イービルアイ艦長オルト―・ラ・ベインダーズはその報告に眉を潜める。

 

「西にはパーパルディア皇国しかないぞ?しかし、軍祭に参加するという話は聞いていないが……」

「一応警戒態勢を取るように命令します」

「ああ、一応動けるように準備はさせて置け。それとフェン王国に確認の連絡を入れろ」

「了解しました」

 

部下は敬礼をするとその場を後にする。残されたベインダーズは艦長席に座りながら何事をない事を祈るのであった。

そしてその飛行物体、飛竜がフェン王国上空にやってきたがついぞ連絡が来ることは無かった。

 

 

 

 

 

 

パーパルディア皇国、皇国監査軍東洋艦隊所属のワイバーンロード部隊20騎はフェン王国への懲罰的攻撃を加えるために首都アマノキ上空に来ていた。

フェン王国は軍祭を行っておりそこには文明圏外の各国武官が招待されている。そんな中で攻撃を行えば文明圏外の国家はパーパルディア皇国の力を改めて思い知るだろう。そう考えての行動であった。

 

「ガハラの民には構うな。目標はフェン王国王城と……あの巨大船にしよう。攻撃開始!」

 

ワイバーンロード部隊は10騎ずつの二手に分かれて王城と、旧太平洋艦隊所属のイービルアイへと向かっていく。

 

「な、なんだ!?」

「パーパルディア皇国だ……ぎゃっ!」

「あ、熱い!助けてくれ!」

 

ワイバーンロードの動力火炎弾を受け燃え盛る王城を見たベインダーズの行動は早かった。

 

「上空のワイバーンは敵である!撃ち落とせ!」

「了解!」

 

ベインダーズの指示によって艦対空ミサイルが各艦より放たれる。ワイバーンを軽く超える速度でやって来るミサイルにワイバーンロード部隊は驚愕する間もなく落とされていく。

そして20騎いたワイバーンロード部隊は呆気なく全滅し黒煙の花を咲かせるのだった。

 

「な、なんと……」

 

一瞬でワイバーンロード部隊を壊滅した様子を見た剣王は驚きのあまり固まってしまう。周りで見ていた家臣たちも同じようで誰一人として身じろぎすら出来ていなかった。

 

「まさか、パーパルディア皇国のワイバーンを一瞬で全滅させるとは……。これなら、パーパルディア皇国との戦争にも勝てるやもしれん!」

 

剣王はまるでさも今の力が自分のものであるかのようにふるまう。そこへアルゼンチン帝国の外交官がやって来る。

剣王は直ぐに場を整えると外交官を中へと入れる。入って来たのは前回の会合の時もいたフェイルナンであったが雰囲気が前回と違いとげとげしかった。

 

「アルゼンチン帝国の者よ、今回フェン王国を攻撃した者達を見事な武技で対峙してくれたことに感謝する」

 

フェン王国を代表する形で剣王が礼を言う。

 

「……いえ、奴らは完全に我が国の艦へ攻撃を加えようとしていました。それを振り払っただけの事です」

「では早速国交樹立の事前会議を……」

 

剣王がそこまで言ったときフェイルナンが手で制す。

 

「その前に、こちらの質問に答えていただきたい。先程のワイバーンはパーパルディア皇国の物と分かりましたがいきなり攻撃を加えてくるとは思えません。貴国は既にパーパルディア皇国と戦争状態なのではないですか?」

「ふむ、確かに我が国はパーパルディア皇国から最後通知を受けている。だが決して戦争になっている訳ではないぞ」

「ならば何故パーパルディア皇国の船がこちらに向かってきているのですが?返答によっては国交樹立の件は考え直させてもらう」

「奴らは非道な者たちでな。我が国に受け入れられない要求をしてきてな。断ったが今回の件は確実にそれに関する行動だろう」

「……貴国がその様な状況になっているのを知らなったのはこちらのミスですがそれならそうと初めに教えていただきたかったですな。最悪の場合船員を危険にさらした可能性すらあるのに」

「それについては謝罪するが既に貴国も当事者である。確実に我が国の次は貴国が標的となろう」

「……分かりました。残念ながらこうなっては上層部の判断を聞かなければなりません。今回はこれで失礼します」

 

ああ、それと。と立ち上がり扉の前に来たフェイルナンは最後に言う。

 

「こちらに向かってきている船は全て沈めても問題ないでしょう?あれらは我が国が対応します。それでは」

 

それだけ言うとフェイルナンは完全にその場を後にした。

 


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