男の少ないデレマス世界で……   作:猫仔猫

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蒼の少女登場!


夏フェス②

開演から2時間が経った16時。生配信を美波さんに任せて、俺は控室で休憩を取っていた。

労働基準法は守らないとね! もちろん他のスタッフも順番に休憩をとっている。

 

そんな休憩中の控室に一人の訪問者があった。

部屋に入ってきた後は、床に敷かれたマットに寝転がっている俺の横に座り、無言のまま動かない。

俺に用事があって来たのだとは思うが、俺の方を見るわけでもなくジッとしている。

 

親しい人となら無言の空間も悪くは無いが、あまり親しくない人とだとなぁ……。

向こうから話しかけてこないなら、こちらから。……と思い始めたところで、その少女が口を開いた。

 

 

「ねぇ、純先輩。私、ここに居ていいのかな……」

 

俺の事を『純先輩』と呼ぶこの少女は渋谷凛。中学で1つ下の後輩だったらしい。加蓮は見知っていたらしいが、俺は気付かなかった。

そういえばアニメでは、加蓮が凛と同じ中学って設定だったような気がしなくも無いが……。細かい所までは覚えていないし、そもそもがアニメの世界とは別物だからなぁ。

 

「ふむ……。休憩中の男性の部屋に押し掛けるのは、良くは無いと思うぞ。渋谷後輩」

 

「そうじゃ無くて! 2週間前にCDデビューしたばかりの私が、夏フェスに参加して良いのかって事!」

 

ちょっとふざけた答えを返したら、凛は語気を荒げてしまった。雰囲気を和らげようとしたんだけど、失敗だったようだ。

 

「会社が決めたんだから、良いに決まってるだろう? それに去年のまゆだって、四月にモデルからアイドルに転向して、八月のフェスでオープニングメンバーに抜擢されているんだ。認められているって事だよ」

 

まだフェスを行うようになって3年、5回目の開催だ。歴史のある催しでもあるまいし、そんなに悩む事か? と俺は思うのだが、アイドルたちにとっては違うのかな。

 

 

その後も愚痴みたいな悩みのようなものを聞いてやると、来た時よりも少し落ち着いた様子で部屋から出て行った。

担当プロデューサーか頼りになりそうな先輩アイドルに、お悩み相談すべきだったと思うだが、何故開演中に俺の所に来たのだろうか?

中学時代に知り合っていて、それなりに仲良くなっていたら分かるんだけどなぁ。

 

 

 

休憩を終えてステージ裏に移動していると、メイク室から出て来た凛に出くわした。

凛は俺の目をしっかりと見ると「今、出来る事を出し切って来るよ」と言って、ステージ裏へ向かって歩き始めた。

 

まぁ俺も目的地は同じなので、並んで歩く事になるわけで……。こう何というか居た堪れない雰囲気がですね…………。

ちらっと横目で凛を見ると、顔を赤くして何か――おそらくは羞恥――を堪えていた。

 

 

 

ステージ裏に着くと配信カメラの前に移動して、美波さんと交代を行う。

 

「はい、休憩から戻ってきました。美波さん、代理ありがとうございました」

 

「次の出番まで控室にずっといるのもあれだったし、気にしないで。純君も次の休憩まで頑張ってね」

 

『じゅんくんおかえりー』『おかー』『みなみんもお疲れさまー』………………

 

「この後出番のアイドルもステージ裏に移動してきてます」

 

ステージ裏に着た後は目を瞑ったまま動かないでいる凛を、カメラの前へと連れてくる。

 

「はい、自己紹介」

 

「えっ……? 渋谷凛。デビューしたばかりだけど、よろしく」

 

「ちょっと無口……でなくクールと云うのでしょうか? まぁこんな子ですけど、可愛い所もあるので応援してあげてくださいね」

 

「ちょっと、純先輩。余計な事は言わないでよ」

 

『Cool!!』『可愛い系でなく綺麗系だね』『きっとクーデレ枠!』『いやいやツンデレ枠でしょJK』『先輩だと!?』…………

 

 

ステージから愛梨さんが戻って来たので、凛を袖の方へと送り出した。

目を瞑ったまま。という事も無くなったみたいなので、ステージでもきっと大丈夫だろう。

 

 

「ただいまーっ、2曲続けてだったので疲れちゃっいましたっ」

 

そうは言っていても、笑顔のまま息切れもなしでカメラに向かって手を振っているので、そうは見えないんだよな。

カメラを挟んでいるとはいえ、至近距離で衣装の胸元を引っ張って手で扇がれると、視線を持っていかれるので勘弁してください。

 

「もう暑くって、早く脱ぎたいのでまたねぇ」

 

『愛梨ちゃんお疲れ様』『近くで見ると衣装の際どさが……』『北半球がほぼ丸出し』『あれで跳ねてもポロリしない衣装技術凄い』…………

 

765の電飾衣装ほどではないにしても、これどうなってんの? って衣装は346にもあるなぁ。

曲に合わせた衣装ってのは分るけどさ…………ガラスのハイヒールとか履いて踊れるもんじゃないだろう!!

 

 

 

その後も順調に進み、今はラス前で楓さんがソロ曲の最中だ。

ステージ裏には楓さんを除いた全アイドルが揃っている。楓さんのソロ曲が終わると、最後のトークから全員参加の締めの曲へと移る。

そしてアンコールで全員での《お願い! シンデレラ》だ。1公演で2回目になるけど、オープニングと違って観客もコールで参加できるから不満は無いらしい(某掲示板調べ)

 

 

「さぁみんな、行くわよ!」

 

瑞樹さんの声でアイドルたちがステージへと飛び出していく。

そうなるとステージ裏にはスタッフが残るのみだ。

 

「はい、アイドルたちは最後の曲を歌いに、みんなステージに行ってしまいました。ですので、最後の曲だけはモニター越しではありますが、皆さんも一緒にご覧ください」

 

『マ?』『346太っ腹!』『最後だけでも見れて嬉しい!』…………

 

ステージを映しているモニターの側にワゴンを移動して、配信カメラに収める。

アンコールが終わるまですることが無くなったスタッフたちも、同じようにモニター前に集まって鑑賞している。

 

 

 

曲が終り全員で観客に礼をしてステージからはけてくると、客席から『アンコール』の拍手や掛け声が起きる。

ほんの数分の間に水分の補給をして息を整えると、アンコールの声に応える為にアイドルたちはもう一度ステージへと戻っていく。

 

公演終了予定時刻である20時間近だ。アンコール分はみ出てしまうが、そこは予定調和の範疇なので問題はない。

だが配信の方は枠が決まっているので、自動で20時に切れてしまうのだ。

 

「アンコールまで配信を行いたかったのですが、枠の時間が来てしまいました。勝手に延長する事もできませんので、残念ですが終了になります。長い時間ご視聴くださいまして、ありがとうございました。でわ、またね」

 

『残念だけど仕方茄子』『じゅん君もおつかれさまー』『乙カレー』『来週期待してる!』…………

 

 

ふぅ、6時間半にも及ぶ配信は疲れる。後は椅子に座って、アンコールをモニターで眺めるだけだ。

電源を外して置けば、後片付けはスタッフさんがしてくれるらしい。まぁ他の物と一緒に本社に持ち帰るので、逆に手出しできないのだ。

 

俺は椅子に座ってまったりモードに移行したけど、スタッフさんたちは違う。

衣装さんなどは全員の着替えが一気に来るから大変だ。出番は順番だけど、終いは同時だからねぇ。

 

 

 

アンコールのおねシンを歌い終えると、袖に近かった人からステージ裏へと戻って来る。

そして先に戻った人が片手を上げて、後から帰ってくる人たちをハイタッチで迎える。うん、良い光景だよね。

 

三度全員がステージ裏へ集まり、開演前と同じように輪を作る。

 

「みんなの頑張りのおかげで、今年の夏フェスも無事終えることが出来ました。って、硬い事を言っても仕方ないわね。それじゃあ、いくわよー。せーの――」

 

「「「お疲れさまでした」」」

 

瑞樹さんの音頭で全員が〆の言葉を上げると、各々が嬉しさを現しはじめた。

ハグしあったり、腕をぶつけあったり、親しい人の背中に乗りかかったり、俺の方に寄ってきたり……だ。

 

 

「純くん、明日から海だねっ! 莉嘉のセクシーな水着期待してね☆」 

 

一番に来たのは莉嘉だったが、既に気持ちはフェスから明日からの海の事に移動済みの様だった。

 

「いや、その前にフェスの感想とかはないんだ」

 

「だってー。アタシ今回ソロ曲なかったから、出番が始めと終わりだけで、その間5時間も暇だったんだよ! まぁステージは楽しかったけどさぁ」

 

あー、今回のセトリでは莉嘉の出番はそうなってたのか。偏る人が出るのは仕方ないにしても、中1の莉嘉にはちょっと不満だったようだ。

中途半端な時間に入れて、集中出来なくなるよりはマシだったんだろうけど……。

 

「じゃあ、冬では出番増えるように頑張らないとな」

 

「そうどすなぁ、うちもユニット曲だけやったさかい頑張らな」

 

莉嘉を励ましていたら、紗枝ちゃんが話に入って来た。

今回の紗枝ちゃんは、開幕曲・歌鈴とのユニット曲・最後の全体曲・アンコールで4曲だったはず。

オープニングメンバーにしては少ないか? 同じく初めてオープニングメンバーに選ばれた美波さんは、ソロ1曲とアーニャとのユニット2曲があり、計6曲だから差があるな。

 

「そうだなー。次もオープニングメンバーに選ばれるように、紗枝ちゃんも頑張らないとな」

 

会社の都合や、各プロデューサーの思惑が混じって作られるセットリストだからな。俺が出来る事は応援することくらいだ。

二人の頭を撫でてやると、莉嘉は満足して美嘉の元へと行き、紗枝ちゃんは「そうそう、明日からの海。うちん水着にも期待してや」と言って控室の方へ去っていった。

……うん、想像は出来ないけど期待はしておこう。

 

 

「ハスハスッ、やっとジュン君成分の補充許可出たよ~」

 

「えっ許可制だったの? てか誰が許可出してるん?」

 

まーた、志希ちゃんが後ろから抱き着いてきた。と思ったら、衝撃の事実がっ! まさかの許可制である。

 

「ニャフフフー。部長さんだよ~、まぁ今日だけだけどね。配信中我慢出来たら、年明けの温泉に連れてってくれるって~。だからシキちゃん頑張ったよ~♪」

 

……志希ちゃんの『ニャフフフー』は猫がゴロゴロ喉を鳴らすのと同じようなものなのかなー。…………って現実逃避をしてしまったけど、叔母さん!!

温泉メンバーに志希ちゃんが追加されるの? マジで?

 




みんながハレームで良いっていうから……

世界設定などは活動報告の設定メモ参照してください。
質問などもそちらにお願いします。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=234144&uid=222646

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