男の少ないデレマス世界で……   作:猫仔猫

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公式生配信②

リフレッシュルームに移動する間、配信画面にはアイドルたちのPVを流している。

打ち合わせも無く、アイドルたちの事を話し続ける程詳しくないから仕方ないね。

 

マイクもOFFにしているので、移動中の会話が配信される事も無くちょっとした息抜きタイムだ。

 

「いやー、やっと息抜きできる」

 

「後の事は考えたくありませんね。新人紹介で60分って……」

 

紹介してアピールして貰ったり質問したりして何分稼げる? 20分稼げるとして、60分なら3人必要か。

 

「ねぇ、俺は紹介する新人の事聞いてないんだけど、ちっひーは聞いてる?」

 

「あっ、時間になったら○○P(プロデューサー)に場所を知らせるように言われてましたね」

 

「その言い方だと……」

 

「はい、誰かは知りません」

 

眩しいほどの笑顔でそう答えたちひろである。

それにしても……紹介する相手をどちらにも知らせていないのはどうなのかと思う。相手の事を何も知らされていないのに、60分も尺を稼げというのか。

 

「じゃあ打合せ通り、この後はちっひーがカメラを持ってね」

 

初回は誰がどう配信するか知られていない為に素顔を引き出せるかもしれないが、この二人で配信すると知られるので今後は難しくなるだろう。

 

「はい、見かけは家庭用ビデオカメラなので、生配信されてるとは思わないでしょう」

 

「生配信が知れ渡る次回以降は無理だろうね、これっきりの為によくもまあ改造したよね」

 

『明後日の方向にも、斜め上にも全力です! 346プロ!』とか、くだらないキャッチコピーが頭に過ったがスルーしておこう。口は災いの元。また変な仕事を振られては堪らないからな。

 

 

「純君、ちひろさん、PV集が終わりますのでカメラ映像とマイク入ります。5……4……3……2……1」

 

スタッフさんの声にちひろはカメラを構え、純は気を引き締める。

カウントダウンが終わると同時に配信画面には純の姿が映し出された。

 

『キタ━(゚∀゚)━!』『夢じゃなかった!!』『じゅんくーーーーーーん』『男が出ていると聞いて』…………

 

それと同時加速するコメント。

 

「はい、おまたせしました。もうすぐリフレッシュコーナーに着きます。これからはアイドルたちに生配信がバレないように、私達は残念ながら配信画面を見る事はしません。ですが、後から確認はしますので、コメントをどんどんお願いしますね」

 

『まかせて!』『おとこにおねがいされた!』『じゅんくんの頼みなら何でも』『ん? 今何でもするって』…………

 

「ここがリフレッシュルームです。部屋の中にはテーブルやソファーがあって、仕事やレッスン前後の時間等で休憩に使用されています。給湯室やフリードリンクもあるので、仕事やレッスンが無くても来る人もいたりします」

 

『さすが大手福利厚生が良い』『うちの職場にもほすぃ』『フリードリンク裏山』…………

 

説明しながら扉を開ける。他のスタッフさんたちは既に撤収済みで、純とその後にカメラをもったちひろが続く形だ。

「おじゃましまーす」と言って中に入ると、こちらに気付いた中の一人が立ち上がって駆け寄ってきた。

 

「じゅ、純さん! 助けてください! ボクが新学期の予習をしていたら、小梅ちゃんが怪談をしてくるんです!」

 

そう涙目で訴えるのは自称『カワイイボク』の輿水幸子だ。

ここで勉強していたら、小梅の怪談が耳に入りそれどころでは無くなってしまったようだ。

 

「あーあぁ、涙目になって可愛く無くなってるぞ」

 

「ぼ、ボクは涙目でも十分カワイイんです! それよりも小梅ちゃんをどうにかしてください!!」

 

『幸子涙目www』『キャラ作りじゃなかったんか』『幸子うざ可愛い!』『素でこれか』『必 死 だ な w』『小梅GJ!』…………

 

ソファーに座っている顔の右半分を髪で隠して、大きめのサイズで袖余りの服を着ている女の子の横に座る。

 

「やぁ小梅、なんで怪談なんか始めたん?」

 

「ふふっ……怪談じゃないよ……昨日何をしていたかって……みんなで話してただけ……」

 

単なる世間話で怪談とは何の関係も無いように感じるが、それが白坂小梅にかかれば一気にホラーテイストに早変わりだ。

そして話をしていたみんなとは――

ソファーの向かいには冷や汗を流しているウサギ、もといウサミン星人の安部菜々。

その隣にはスポブラとスパッツ姿で、青い顔で固まっているカリスマJKこと城ヶ崎美嘉。

勉強をしていたら巻き込まれた輿水幸子。そして……

 

「……そうだよね~?」

 

小梅はそう言って、誰も居ない部屋の隅を見ながら首をかしげる。

ちひろが構えているカメラも小梅の視線を追うが、もちろん誰も映ってはいないだろう。

 

『なんなん?』『誰も居ない』『むしろ誰も居なくなった?』『小梅cは視える子だから』『見るんじゃない、感じるんだ!』『無茶いうなしwww』…………

 

「ヒィッ」

「ぼぼぼぼ、ボクは信じません! れれれれ霊なんて、いい居るわけないじゃないですか」

「あっ、菜々は休憩時間終わるのでカフェに戻りますね」

 

悲鳴を上げソファーに蹲るカリスマ、強がるカワイイボク、さりげなく逃げる永遠の17歳…………なにこのカオス。

 

「あっ、ウサミン! 部屋を出る前に、ちっひーのカメラに向かって一言」

 

「へっ? あっ……な、菜々は逃げるわけでは無くてですね、本当に17時で休憩が終わるので――良かったら346カフェに来てくださいね。キャハッ」

 

ウサミンはきっと生配信の事を知っていたのだろう、言い訳とポーズ付きでカフェの宣伝をして部屋を出て行った。

 

『ウwサwミwンw』『逃げたw』『あざとい』『作ってたのはこっちだった』『知 っ て た ☆』…………

 

 

それにしても、これ配信しても大丈夫? いやダメって言われてもどうしようもないんだが。

特に美嘉のイメージに大ダメージのような気がする。

 

「……ねぇねぇ……純さんも……私が昨日……何していたか……聞きたい……?」

 

「んー、あの子と6時間ホラー映画鑑賞とかじゃないの?」

 

「ふふっ……せいか~い……あの子も……喜んでる……よ……」

 

『6時間耐久ホラー!?』『ヒエッ』『あの子って誰よ!?』『じゅんくんは小梅cと同類だった……?』『じゅんくんも視えるの?』『わたしのこともみて★ー』…………

 

 

休憩が17時までってウサミンが言ってたから、そろそろ新人さんがこの部屋に来る頃かな?

それまでにこの状況を何とかした方が良いのか、悩んでちひろの事を見ると……

 

「あっ、そうそう。美嘉さんはこの後ダンスレッスンでしたよね。時間大丈夫ですか」

 

「あー、だからか。おーい美嘉、その格好で蹲ってるとお尻がエロく見えるぞ」

 

『カリスマJKのヒップライン』『パンツの線が見えない穿いてない?』『スパッツならノーパン』『むしろ普段からノーパン』『美嘉はノーパン健康法信者の可能性が微レ存』…………

 

 

「ちょっ……て純君!? 見た? あたしのお尻、見たの!?」

 

青かった顔を今度は真っ赤にして、こちらに振り向いた。

今まで俺が居た事に気付いていなかったのだろうか?

 

『意外と純情?』『私だったら生尻みられてもかまわない! ほらっ(ペロン)』『← おぃ、その汚い尻隠せよ』…………

 

「その姿で蹲ってたら、イヤでも目に入るだろ」

 

「はいはい、美嘉さんは急がないとレッスンに遅刻しちゃいますよ」

 

「~~~っもう! 後で覚えておきなさいよ!」

 

「はいはい、じゃあ最後にカメラに向かって一言」

 

『二人とも美嘉の扱いが雑いwww』『カリスマJK実は弄られキャラだった』『でもいやじゃなさそう』『むしろ楽しそう?』…………

 

 

「えっ、これ本当に撮ってるの? んんっ――美嘉だよっ、今度新曲だすよー★ ってこんな感じで良い?」

 

台詞の前後に編集点を作りポーズも決まって、そこだけ見たら流石カリスマJKって思えるのだけどね。

残念ながらその前後どころかもっと前から配信に垂れ流しなので、残念過ぎる姿を全国所か全世界に晒されてしまっている。ドンマイ!

 

 

美嘉が部屋を去った後程なくして、小梅も買い物を忘れていたと言って帰っていった。

これで部屋の残っているのは俺とちひろ、そして幸子の3人だ。

 

幸子はようやく落ち着いて勉強が出来ると言っていたが、それなら騒がしくなる可能性が高い此処に来ない方が良いのじゃないだろうか?

まぁ幸子はあぁ見えても寂しがり屋だから、誰かに会える此処に来たのだろう。

 

「何でちひろさんはビデオを撮ってるんですか? もしかしてカワイイボクのこの瞬間を写し取って置くためですか?」

 

「お仕事ですよ。もう少ししたら、この部屋に新人のアイドルさんがいらっしゃいますので、その人のインタビュー動画を撮るんですよ」

 

「新人さんですか、カワイイボクほどではないでしょうけど頑張って欲しいですね」

 

『幸子強い!』『この子の自信の根拠はどこから……』『さらりと作り話をするちっひー』『まだ生配信の事を教えないのかwww』…………

 

 

そんな風に3人で話していると部屋の扉がノックされ、ひとりの女性が部屋へと入って来た。

髪型はポニーテールで、大きめの目がぱっちり開いている。

 

「すいません。プロデューサーさんから、此処に行けって言われて来ました」

 

はきはきとした声は元気そうなイメージで、雰囲気が日野茜に似ているかもしれない。

 

「はい、新人アイドルの堀裕子さんですよね。そちらのソファーに腰を掛けてください」

 

ちひろはビデオカメラを構えたまま、その女性に声をかける。……この部屋に来る前に知らないって言ってなかった?

 

「契約の時に一度お会いしていますが改めまして、アイドル部門の事務をしている千川ちひろです。本日は新人アイドルのインタビューを撮らせて頂きます。これは所属するアイドル全員に行ってますから、気楽にしてくださいね」

 

あぁ契約の時に会ってるから、顔と名前は知っているのか。来るまでは分らないけど、来てしまえば誰かは分ると……ずるくね?

 

「今回のインタビューを担当する事になりました、同じくアイドル部門でアルバイトをしている笹埼純です。これから仕事をしていれば会う事もあると思いますので、よろしくお願いします」

 

『さっきまでとの差が酷いwww』『新人の子可愛いけどあまり特徴無くない?』『さらりと作り話を続けるちっひー』『これくらいできないと346には就職できないのか』…………

 

 

「初めに名前とアピールポイントをお願いします」

 

「はい! 堀裕子、特技は超能力です!!」

 

『wwwww』『超能力w』『マ?』『さすが346斜め上過ぎるwww』『特徴無いとか言った奴土下座w』『じゅんくんかたまってる』…………

 

 

堀裕子の言葉に思わず固まってしまったが、顔を見ると真剣でふざけているようには見えない。

もしかしたら本当なのかも? と思わせる何かもある。

 

「超能力かぁ、もしかしたらここで実演できたりしますか?」

 

「はい、大丈夫、お見せできます!」

 

自信たっぷりに答えて、鞄の中から一本のスプーンを取り出した。

スプーン曲げ? かなり昔に流行ったらしいけど、もしかしたらその類なのか?

 

「超能力ですか。フフーン、カワイイボクがインチキを暴いてやりますよ! そのスプーン貸してください――ぐぬぬぬ」

 

離れたテーブルで勉強をしていたはずの幸子が乱入してきた。いや新人インタビューって言ったじゃん、何で乱入してくるん!?

スプーンを手に取って先を摘まみ、力で曲げようとしたみたいだが不発に終わった。どうやらスプーン自体には仕掛けは無いようだ。

 

『スプーン曲げ(゚∀゚)キタコレ!!』『どうせインチキ』『幸子チェックはOK通ったwww』『幸子ヨワスw』…………

 

 

裕子は左手でスプーンを持ち、右手の手の平をスプーンに向ける。

幸子は俺の斜め前で、インチキを見つけようとローテーブルに手を突き前屈みの体勢だ。

 

「行きますよー……サイキックーゥッ…………」

 

目を閉じ右手に力を籠め……

 

『wktk』『ドキドキ』『この緊張感が……たまらん!』『いやいや 触らないでなんて無理』『MPは足りるのか?』…………

 

 

「ハァッッッ!!!」「ギャーーーァッ」

 

裕子が目を見開き力を放すと同時に、何故か幸子のスカートが捲れあがった。ちなみにスプーンは曲がっていない。

 

『成功? 失敗?』『スプーン曲げかと思っていたらスカート捲りだった件について』『ワロスwww』『猫ちゃんプリントパンツwww』『さちこぇ……』『じゅんくんに汚いパンツ見せるな!』…………

 

 

「幸子よぉ、アイドルが出していい悲鳴じゃないぞ。もっと可愛く……いや猫の絵は可愛かったけど」

 

スカートでお尻を隠し押さえて、しゃがみこんだ幸子に声を掛けたが……

 

「うーん、失敗しちゃいました。もう一回やっていいですか!」

 

「もっと上達したら見せてくださいね」

 

そんな事は気にしても居ない裕子が、再チャレンジをお願いしてきた。だがそれは却下しておく。

偶然でないとしたら、次は何が起きるか分からないからな。君子危うきに何とやらだ。

 

 

「…………うぅぅっ、純さんに見られたぁぁぁ、ばかぁぁぁぁ」

 

幸子はそう叫んで部屋を飛び出していった。

俺は悪くないだろ、馬鹿とは何だ馬鹿とは。勉強道具をはじめ、荷物置いて飛び出していく方が馬鹿だろうが、まったく。

 




ユッコの超能力で幸子のスカートを捲くる為だけにこのSSを書いた

10代半ばから積極的になり始めるのは、このままだと恋人出来ないと気付くから
ダンスレッスンしていた3人はスポブラにスパッツ姿を見られても平気、むしろ見られたい派
そうみると美嘉はまだ乙女ですねwww

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