中に入るとそこにいたのは通路の真ん中で一人力なく座り込み泣きじゃくる幼き少女がいた。
「君、大丈夫かい?」
無事を確認するため少女に近づき視線が合わさるようにしゃがみ安心させるよう優しく声をかける。
「ひっ…うっ…お姉ちゃんが…猫を、助けに…飛び降りて…」
それを聞き、一目散に少女が指差した扉に走り力強く開ける。
「どうなっているんだ…これは」
開けた先に待っていたのはあまりにも現実離れした光景だった。
宙に架けられた線路を走る列車と、空間全体を浮遊し蠢く大量の金属塊。
その光景に呆然としてしまったが直ぐに立て直し先程この列車に入った制服の少女を探した。
(あれはッ!?)
探しているとある場面を目にした。遠い方で顔は見えないが二人の少女らしき人物がおたまじゃくしのような形をした魔女と戦っていた。
黒い装束の少女は魔女と戦っていてもう一人の薄桃の装束の少女は遠くて見えないが何かを腕に抱えている状態だった。
しばらく見ていると二人の少女は目的を達成したのか魔女から逃げるようにこちらに向かってきた。
(こっちに来る!)
俺は扉から何歩か後退りすると破壊音が轟いた。
そこから来たのは先程の二人で、黒い装束の少女は知らないが、薄桃の装束の少女は制服ではないが自分が追っていた少女だと分かる。その少女の腕には幼き少女が言っていた猫が抱かれていた。
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(はぁ、まったく今日は変なことに巻き込まれたな)
あの後無事に家に帰り、夕飯の支度をしながら今日の出来事を思い出す。
猫を助けた少女たちに色々と質問をしたが黒い装束の少女に、今日起きたことは忘れなさい、と言われ薄桃の装束の少女も、すいません、と言ってなにも情報を得られなかった。でも収穫はあった。
あの日謎の生物が言っていた魔女と、それと戦う魔法少女の存在を確認できたことが今日一番の収穫だった。
「よし、完成っと」
夕飯の支度が終わるとそれと同時に玄関のドアが開く音が聞こえた。そしてドタドタという足音がリビングに続く扉に近づいていることが分かり、その扉が強く開け放たれ姿を表した。
「怜兄たっだいまー! 今日のご飯はなんだあ!」
入ってきたのは金髪でツインテールをした活気のある少女、
両親を失い一人取り残されたフェリシアだったが長い付き合いとあの日の事件を警察した一人として今は俺が彼女の保護者役として生活を共にしている。
「肉が安売りしてたから今日はハンバーグにしたよ」
「まじか! やったーっ!」
あまりの嬉しさにウキウキと体を動かしてる姿はいつ見ても可愛いと思う。こういう子供らしい所もフェリシアの可愛い所なんだよなあ。
「後は配膳だけだからその間に手洗いを済ましとけ」
「わかった!」
そう言いフェリシアはリビングから出た。
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「ふぃーごちそうさま~」
「相変わらず大食いだなフェリシア」
夕飯を食べ終え一息つく二人。
「あったり前だろ、魔女と戦ってるんだから普通の量じゃオレの腹は満たされねーよ」
「そうか…それもそうだな」
魔女の単語を聞き今日のことを思い出す。
今日みたおたまじゃくしみたいな魔女とは別にたくさんの魔女が俺たちの日常に潜んでいる。そのなかにきっとあの日見た魔女もいるはず、フェリシアのためにもなんとか情報を見つけないと。
(もしまたあの二人に出会ったらなんとしてでも情報を聞き出さないとな。)
「…? 怜兄? どうしたんだそんな思い詰めた顔をして?」
「ん? ああ、いつもフェリシアが魔女と戦っているからケガをしないか心配でな」
「たくっ、怜兄は心配症だなぁ、オレがあんなやつらにケガするわけねーよ」
「ああ、まったくだな」
誇らしげに言うフェリシアに俺は笑顔で返した。
(でもなフェリシア俺はそれでも心配なんだよ、お前の両親のためにもこれ以上悲しい思いをさせなくないんだよ)
そんな不安な思いを抱きながら、一日を終えることになった。