燃え盛る炎の音。
それの音で青年は目を覚ます。
「またか……」
この言葉、この景色は何回目なんだろうか。
何十、何百、何千と、もう数えるのも面倒なくらい見て言ったと思う。
自分を中心に炎が囲む。炎は熱さはなく、そして恐怖もなく、ただ自分の周りで燃えている。
「なぁ……俺はいつになったらこの悪夢を見なくてすむんだ?」
上を見上げ誰かに問うように喋る。
空は真っ黒な暗闇に染まっており、そこに一つの目が青年を見下ろしていた。
その目はなにも反応はせずただじっと青年を見つめ続けた。
この悪夢から覚めるまでずっとーー
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「なぁ怜兄、昨日どこ行ってたんだ?」
「え、普通に学校とバイトに行ってただけだが…どうした急に」
朝食を食べているとき急にフェリシアが聞いてきた。
「怜兄から知らない女のにおいがする」
「お前は犬か」
相変わらずフェリシアの嗅覚はどうなっているんだ。
確かに昨日少女を背負っていたけどそんな簡単ににおいはつくもんなのか。
「で、なにしてんだフェリシア」
いつの間にか俺のそばに来てにおいを嗅ぎはじめるフェリシア。
「くんくん…怜兄から他のにおいがしないか探しているんだ」
「やめなさい」
においを嗅ぐフェリシアに軽めのチョップをする。
「うぅ…じゃあ怜兄、今日どっか連れてってくれ!」
「はあ、まあ別に今日は休日だからないいけどどこに行くんだ?」
「そんなの後から決めればいいだろ」
「そんな行き当たりばったりに、とりあえず朝ごはん食ってから行くぞ」
「ホントか!? やったー!」
嬉しそうに席に戻り急いで朝食を食べるフェリシア。
それを見た俺は少し笑いゆっくり食べろよ、と注意してから自分も食べ始めた。
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「で、結局ここか」
朝食を食べ終え、フェリシアのお任せで出かけたが最初についたのがゲームセンターだった。
まあ別に分かりきっていたので呆れはしないが。
「別にいいじゃねえかよここにくるのは久しぶりなんだし」
「久しぶりって、ちゃんとおこずかいはあげてるだろ」
「一人だとつまんないんだよ!」
そう言い頬を膨らませるフェリシア。よく見ると恥ずかしいのか少し赤面していることがわかる。
確かにここ最近はバイトとかで一緒に遊ぶ時間がなかったしな、それに今日はフェリシアが行きたい場所を決めるから存分に付き合ってあげないと。
「それは、悪かったな。なら今日は一杯遊ぶとするか」
「おうっ! ほら怜兄行くぞ!」
笑顔のフェリシアに手を引かれ、俺は手を引くほうへついていった。
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「怜兄、これやろうぜ!」
「怜兄、次はこれ!」
「怜兄、今度は――」
「ふう、朝っぱらから元気すぎだろまったく」
時刻は昼時、俺は近くにデパートのフードコートで休憩していた。
正直フェリシアの体力をなめていた。まさか休憩なしで連続でやるとは思わなかった。
フェリシアは今何を食べるかでうろうろ歩いているが俺は歩く気すら起きなかった。
(体力には自信があったんだが…見事にその自信がなくなったよ)
「あれ? 怜兄、めしはどうしたんだ?」
そんなことを思っているとフェリシアが帰ってきた。
「これから行こうとしてたところだ。フェリシアは何にした…ってまあいつも通りだな」
フェリシアの持つトレイにはハンバーグ定食がのせてあった。
「当たり前だろ怜兄、ハンバーグはいつくってもおいしいからな」
「それもそうだなっと」
フェリシアが戻ってきたので俺は席を立ち何を食うか選びに行った。
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昼飯が終わりこれからどうするか悩んだがせっかくデパートに来たので買い物をすることにした。
本屋に行ってフェリシアが欲しい漫画を買ったり、フェリシア自身は気にしてはいなかったが新しい服を買ったりもした。そして夕飯のおかずを買う頃にはもう時刻は夕方になっていた。
その帰り道。
「今日はありがとな、怜兄」
「いいってことよ、ゲーセンに行ったのは久々だからな、結構楽しかったよ」
「えへへ…オレも怜兄といっしょにやってて楽しかったぜ」
隣で歩いているフェリシアは俺のほうを向いて微笑む。その微笑みにつられて俺も微笑んだ。
お互いに微笑み前を向くと突然手を握られる。
(フェリシア?)
隣を見るとしっかりとフェリシアの手が俺の手を握っていた。
表情を確認しようとするも身長差と帽子を深く被っているため顔を確認することができなかった。
だが見るからに恥ずかしがっていることが分かる。
(まったく…)
俺はさりげなくフェリシアの手を優しく握る。
お互いに片方は荷物を持ち、もう片方は手を繋いで歩いている。
それを見ていた人からはとても仲の良い兄妹に見えていただろう。
それから家に帰るまではずっと手を繋いでいた状態だった。