小さき傭兵と保護者の青年   作:シンマドー

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6話

「......」

 

 気づいた時にはそこは知らない場所だった。

 建物や人の姿はなくあたり一面に無数の階段があるだけ、どの階段も果てしなく続いており上ろうとは到底考えるはずもなかった。

 

「まったく…今日に限ってなんでこんな目にあわなくちゃいけないんだああぁ!!」

 

 散々な目にあっているあまり俺は叫ぶがその叫びは虚しく消えていった。

 

 

 

 

 時は巻き戻り、朝食を作っている時だった。

 

(なんか頭痛いな)

 

 今日起きてからずっとこの頭痛が続いている。

 イタッ! という感じではなく少し気持ち悪い感じの痛みがずっと襲っている。

 

(熱も測ってみたが別になんともないし…どうなっているんだか)

 

 フェリシアに移ったりしたら最悪なため帰りの際、薬を買おうと決めた。

 

 

「え、頭痛いからバイト休む?」

 

 それから学校に行き鶴乃に事情を説明した。

 

「ああ、別に熱があるわけじゃないが頭痛が止まらなくてな」

 

「そうなんだ…でもなぜそのことを学校に来て言ったの? 普通に電話すればいいのに」

 

「学校を休みたくはなかったんだよ、皆勤賞が欲しいから」

 

「あはは、そうなんだ。学校を休まないのは良いことだけどホントに体調が悪いときはちゃんと休まないとダメだよ」

 

「はいはいそこらへんは分かってるよ」

 

「ちゃんと家に帰ったら手洗いうがいをして、妹さんに移さないようにマスクをするんだよ」

 

「お前は俺の母さんかっての」

 

 鶴乃の額に痛くない程度にチョップをする。

 

(でも否定はできないな、色々とお世話になってるし)

 

「むう…あっそうだ! 今日怜君のお家に行ってもいいかな?」

 

「急にお前は何を言っているんだ」

 

 なぜ鶴乃が家に来ることになっているんだ。いや別に断るほどでもないがなにをするきなんだ。

 

「ほら今日怜君体調悪いじゃん? バイトしているお礼に手料理と看病をしてあげるよ!」

 

「えっ、いや別に看病なんて…それに手料理とか、逆にこっちがお世話になってる身なのに」

 

「いいのいいの! こういうのは断らないほうがいいんだよ」

 

「そっそうか、なら頼んだ」

 

「任せて! 家の手伝いが終わったらすぐいくから」

 

(さて、本当に了承してよかったものだろうか? フェリシア怒るだろうなあきっと…でも鶴野には日頃お世話になってるし…まあそれよりも先にやんなくちゃいけないことがあるんだよなあ)

 

 鶴乃と廊下で別れたあとあちらこちらから男子の視線がささる。

 俺は別に鶴野とそんな関係じゃないが知らない人から見ればそれはもうそういう関係とみえるだろう。

 

(今ここで弁明しても焼け石に水だな、ここはもう黙るの一択)

 

 できる限り男子たちの目を合わせないよう目線を下にさげ無言でこの場を去った。

 

 

 

 

「ふぅ、今日は一段と疲れたなっと」

 

 学校も終わり今日はどこも寄り道せずに家へと帰り、制服のまま自室のベッドに倒れこんだ。

 

(あっ薬貰ってくるの忘れた。まあ別にいっかとりあえず今は少し…寝……よ…ぅ)

 

 最近寝不足なことからか眠りに入るのは早かった。

 

『ーーー』

 

 どこからか声が聞こえる。

 それは一人ではなく二人の声、一人は楽しそうに喋る少女の声、もう一人は少女の話を優しく聞き保護者のように接する男の子の声が聞こえた。

 そして声と共にやさしい風が吹き草木が揺れる音が耳に入る。

 

(なんだろう…どこか懐かしく感じる…)

 

 俺はゆっくりと瞼を上げ視界を広げる。

 

 そこに映し出された光景はーーいつも見る一面の火の海だった。

 

 

▲ 

 

 

 

「……きて……起きて……怜君起きて!」

 

「……ん、鶴乃?」

 

 聞きなれた声で目を覚ますと俺の顔を上から覗いている鶴乃の姿があった。

 

「おはよ怜君。体調のほうはもう大丈夫?」

 

「あ、ああ一応な。頭痛のほうはもう治まったかんじかな……で鶴野はどうやって家に入ったんだ? まあだいたい予想はつくが」

 

 扉のほうへ目をやるとそこには少し扉を開けてこちらの様子を見ているフェリシアがいた。

 

(でもなぜだろうかフェリシア目がなんか怖いんだけど、扉にひび入ってるし俺なんか怒らせたか?)

 

「うん、怜君の家の前でフェリシアと出会ってねそれで入れたんだ。でもびっくりしたよフェリシアが怜君の妹だなんて思ってもいなかったよ」

 

「なんだフェリシアとは知り合いなのか?」

 

「うん、ちょっと色々あってね…それよりも夕飯の準備はもうできてるから」

 

「あ、ああ分かった」

 

(色々って…まああとでフェリシアに聞くか)

 

 

 

 

『ごちそうさまでした』

 

 あれから鶴乃が作ってくれた手料理をご馳走してもらい大変満足した。

 その際鶴乃に味のことを聞かれたが味は普通だったため50点と言っておいた。

 そしてフェリシアだが、先程からずっと俺のことを見ている。

 食べる量は変わらないが不機嫌なのは分かる。

 

「なあフェリシア」

 

「…なんだよ怜兄」

 

 鶴乃が皿を洗っている間にフェリシアと話そうとするが不機嫌なのは変わらなかった。

 

「なんか…すまん」

 

 なにがとはいわないがとりあえずフェリシアに謝る。

 

「あいつとはどういう関係なんだ…」

 

「ただの同級生だ。後彼女の親が経営している店で働いているからバイト仲間でもあるな」

 

「…今日は飯くれたからいいけどまた女招いたら怒るからな」

 

「ああ、肝に命じておくよ」

 

 頬を膨らまし嫉妬心を出すフェリシアも可愛いと思うが今回は流石に反省した。

 

 

 

 

「さてやることもやったし寝るとしますか」

 

 鶴乃が帰り、俺はやることを終えて早めに寝ようとしていた。

 幸い鶴野がほとんど片づけてくれたので助かった。

 フェリシアには悪いが移すわけにはいかないため今回だけ一緒に寝ることは断った。

 

(それにしてもあれから情報をつかめてないな)

 

 魔女に襲われてから日にちも経ち一度も魔女やフェリシア以外の魔法少女に出会っていない。

 

(フェリシアよりも早く見つけなくちゃいけないんだ。アイツにこれ以上背負わせないためにも俺がやらなければ)

 

 

 そんなことを考えながらゆっくりと目を閉じる。

 隣にフェリシアがいないため部屋は静かだった。

 そしてゆっくりと意識が落ちていき眠りについた。

 

 

 

 そして次に目を覚ました時には知らない場所に立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なんの条件も達成してないのにウワサに巻き込まれる主人公

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