Saiyan killer   作:北江

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17話、修行

 

 …かちゃ……

 

 …ずず……ずずず……

 

 

 翌朝、どこか気まずい雰囲気の中、それまで無言のまま朝食を取っていたヤムチャがふいに、ゆっくりと口を開いた。

 

「……昨日の話だけどな……。…教えてやっても…いい……」

 瞬間、それまで黙々とスプーンを口に運ぶだけだった少女の顔がぱっと輝いた。

 

「……!! 本当かヤムチャ!!」

 しかし、そんな少女の様子など無視するように、ヤムチャが厳しい表情のまま続ける。

「…ただし…、…いくつか条件がある。それが守れるなら、だ」

 

「…まず、俺の言う事は絶対に守る事。修行のやり方に文句をつけたり反論はダメだ。質問は構わないけど、それに答えるとも限らないからな」

 男の言葉に、うんうんとマーリンがうなずく。

 

「それと…、もし万が一にでも悟空に勝てそうになっても、絶対に殺さない事。どうだ? 守れそうか?」

 

「………ッ……」

 

 2つめの条件に、一瞬だけ身体がぴくりと反応したものの、少し間を置いてからはっきりとマーリンが答える。

「……問題無い。そのふたつだけで……いいんだな?」

「ああ、それを守れるって約束できるなら、お前に協力してやる。まぁほとんど無駄だとは思うけどな……」

「……!! 感謝するぞヤムチャ!!」

 

 まるで今にも踊りだしそうな表情のマーリンだった。しかし今の少女の心には、修行の事よりもヤムチャの協力を得られる、という事の方が重要だったのかもしれない。

 

 

 

 朝食を済ませると、さっそくヤムチャはマーリンを連れて洞窟を後にした。荒野の中でも比較的開けた場所に着くと、少女の方に向き直って口を開いた。

 

「よし、それじゃ今日からさっそく修行するぞ。あらかじめ言っておくけど、もし俺が見切りをつけたら、その時点で修行は終わりだ。俺も自分の修行をしなくちゃいけないんだからな」

 男の言葉に、マーリンがこくりと頷く。

 

「…わかった。それで……どう言うトレーニングをするんだ?」

 そう言いながら、これからのすさまじい修行を想像したのか、無意識の内に少女の身体からエネルギーが溢れ出す。

 

「……あー、落ち着け。気…力を抜け」

 そう言って、ヤムチャが近くに転がっていた石をひとつ、ひょいと持ち上げると、それをマーリンに手渡した。

 

「…そいつを割ってみろ。腕力だけでな」

「…………?」

 ずしりとした、石と言うよりは岩の欠片を手渡され、マーリンがぽかんとした表情を浮かべる。

 

「…早くしろ。時間がもったいない」

「……ッッ…、あ…あぁ、わ…かった…」

 

 そう急かされ、少女があわてて石に視線を戻す。ヤムチャの意図など判らないまま、とりあえず言われた通りに最大限にエネルギーを抑え、右腕を振り上げ左手に持った石に叩きつけた。

「……つりゃあぁっっ!!」

 

 

 …ぺきっ…

 

 

「いっ……た……ぁ……」

 悲鳴とも、うめき声ともつかない声を上げながら、マーリンが目に涙を浮かべた。そして…石はびくともしていなかった。痛みに思わず石を落とし、右手を押さえていた。

 そしてその様子を見ながら、やっぱり……とヤムチャは思っていた。

 

 …この少女は気…エネルギーの量こそ凄まじいものの、肉体そのものは普通の…例えばその辺を歩いている地球の女の子とも大差無いのだ。おそらく、持って生まれたそのエネルギー、パワーだけで、今まで戦い抜いてきたのだろう、と。

 

 右腕に走る激痛に、思わず座り込んでしまったマーリンにヤムチャが声を掛ける。

「マーリン…、お前、今まで戦い方は誰に習ったんだ?」

 

「……誰かに教えてもらった…というのは、ほとんど無い…。他の戦士の戦いから見様見真似で覚えたというか……」

「……やっぱりそうか……」

 いまだ涙目のままの少女の答えに、そして予想通りの答えに、ヤムチャがため息をつく。これは本当に基礎の基礎から始めないとな…と、もうひとつ大きなため息をついた。

 

「…よし、じゃあまずは肉体の鍛錬からだ。その場で腕立て100回!」

「………は……?」

「は? じゃないぞ。ほら、さっさと立て!」

「……ま、待ってくれ。そんな訓練は必要無いだろう…。そんなことより戦闘力をコントロールする技を教えてくれ…!」

 

 理不尽とも言えるヤムチャの命令に、少女が不服の声を上げる。しかし。

「必要が有るか無いかは俺が決めることだ。俺の言う事には絶対従う事だったはずだぞ。…嫌なら修行はここまでだ」

「ぅ、うぅ………」

 

 そう言えばそんな約束だったことをマーリンは思い出した。仕方なくのろのろとうつぶせになり、姿勢をとる。

 

「よーし。いーち、にー…」

 

 ヤムチャの掛け声に従って、何度も腕を曲げ、伸ばしていく。何でこんな事に……と、早くも少女は修行を申し出た事を後悔したのだった……。

 

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