Saiyan killer   作:北江

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20話、成果

 

 …それから2週間が過ぎた。ヤムチャの課す修行の内容はどんどんと苛烈を極めていったが、驚くべきことにマーリンはそれに日々順応していった。

 元々、肉体のポテンシャルも類まれな素質を持っていたのだろう。このわずかの間に、相変わらず華奢ではあるものの、腕も足も、少女の身体は以前よりも確実に、見るからに力強さを増していた。

 

 

「299…300…よーし、そこまでにしとこう」

「……ふんっ…!」

 

 背中に乗せた岩を軽く払いのけ、平然とした表情で立ち上がったマーリンに、ヤムチャは心の中で軽く舌を巻いていた。そして、ここしばらく考えていた次の段階に移るべきかどうかを、真面目に検討しだしたのだった。

 

「…この程度の負荷ではもう物足りないな。次はもう少し大きな岩を頼む」

 などとマーリンがのたまう。最初は20回ほどでハァハァ言ってたくせに、いけしゃあしゃあとよく言うよ…と思わず心の中で更にツッコむヤムチャだったが、確かに頃合いではある。少し考えてから、男は腹を決めた。

 

「よし…それじゃ今日からは筋トレと平行して、次の段階に進むぞ。と、その前に…、…久しぶりに気を全開放してみろ」

 

 これまでの修行はひたすら肉体を強化するものだったので、気は風呂に行ったりする以外には、ほとんどこの2週間は使ってはいない。なのにいきなりそんな事を言われたので、マーリンは少しとまどってしまった。しかしヤムチャの命令は絶対である。

 

「…わ、判った…。しかし久しぶりだからな…。うまく出せるか分からないが…」

 そう言いながら少女はぐっと身体に力を込める。そして大きく息を吸い込み…

 

「はぁっっっ!!!」

 

 

 …しばらく封じ込めていた力を開放した。

 

 

 

 ズオォォォッ!!!!!!

 

 

 ……ッゴォォォゴゴォォッッ!!!!!

 

「…………ッッッ……?!」

 

 …すさまじいエネルギーの放出に大地が揺れる。いや、揺れるどころではない。地球の自転にすら影響を及ぼすほどの、とてつもないエネルギーがマーリンの身体から溢れ出す。

 

「…な………っ…!!」

 しかし、その中心にいるはずのマーリン本人にも、今の状況が掴めないでいた。これほどのエネルギーが、自らの身体から放たれている現実が理解できないのだ。

 そしてあやうく吹き飛ばされそうになっていたヤムチャだったが、かろうじて踏みとどまってマーリンに声をかける。

 

「よし…もういいぞ。その機械…スカウターってヤツをちょっと貸してくれ」

「え……、い、いや…これは……」

 修行の最中でも手放さなかったスカウターを渡すよう言われ、一瞬躊躇したマーリンだったが、ヤムチャの意図に気づいたのか、ややあってそれを渡す。

 

「…壊さないでくれよ…。それは特注で高価なものなんだ…」

「判った判った…。で、どこを操作するんだ?」

「そこにスイッチがあるだろう? それを一度押して起動、2回押すと測定が始まる」

 

「なるほど…こうかな…?」

 

 ピピピ………

 

 

 

 …スカウターがマーリンの戦闘力を測定していく…。

 

 

 ピーッ、ピーッ…

 

「……こ、これは………」

 測定が完了したことを知らせるアラームが鳴った。表示された数値を見てヤムチャが唸る。

「………ヤ…ヤムチャ…、…どうだ?」

 恐る恐るたずねるマーリン。この頃にはマーリンは地球語もある程度覚え、日常会話程度ならば、翻訳機の助けもなくヤムチャの言葉を理解できるようになっていた。

 

 

「…って言うか、なんて書いてるか読めねぇよ…」

「………ッッ…!!」

 思わずがくっと力が抜けそうになるマーリンだったが、スカウターをヤムチャから奪うように取り返し、自分でその数値を確かめた。しかし。

 

「……!! せ…戦闘力………81374……!!!???」

 

 …表示されている数値に。信じられないほどの戦闘力に、マーリンは己の目を疑った。たったの2週間ほどの訓練で、これほどの成果があるとは思っても見なかったのだ。

 半信半疑のまま従っていただけで、そもそも本当に成果がある事すら不安に思っていただけに、2倍以上のパワーアップとは、にわかには信じられないほどだ。

 

「こんな…こんな事があるなんて…。…あ…あんな訓練が…」

「…ふん。だから言っただろ。俺も悟空もこうやって強くなってきたってさ」

 一方、想像以上のパワーアップを果たした少女を前に、ヤムチャは少し得意げに鼻を鳴らす。

 

「これも前に言ったことだけどな、要するにお前は身体と精神のバランスが異常に悪かったんだ。それが少し良くなったから、これだけの力が引き出せるようになったのさ。逆に言えば、これぐらいの力は元々あったと言えるな」

 

「…わたしに…これほどの力があったなんて…。ふふ……ふふふッ…」

 圧倒的とも言える力を身につけ、少女は完全に舞い上がっていた。戦闘力8万以上など、広い宇宙でもそうはいない。地球を例外とするならば、おそらくフリーザ、ギニュー亡き今、宇宙最強を名乗っても許されるほどだろう。だが。

 

「いや、俺の見たところ、まだまだこんなもんでも無い。お前はまだまだ強くなる。俺よりも……悟空よりもな…!」

「………ッッ……!」

 男が口にした、悟空の名を耳にして、はっと少女が我に返る。

 確かに飛躍的に力は増したものの、それでも500万以上と言う超サイヤ人に比べれば、今だにその差は虫けらと恐竜以上だ。その隔たりを想像するだけで、高ぶっていた心が冷えていく。

 

「…それで…次の段階とは、どういう訓練なんだ…?」

 しかし、心は冷えても闘志までは失わない。冷静になったマーリンがヤムチャに問う。少なくともこの2週間でパワーが2倍以上になった事は確かなのだ。ならば一歩一歩、着実にその差を埋めていくまでだ。

 わずかに残っていた少女のヤムチャへの不信感も、これだけの成果をもたらせてくれた事で完全に消えた。今まで以上に修行に、そしてヤムチャに期待しているマーリンの目には、何の迷いもなかった。

 

「…ふん。やる気は充分みたいだな。次の修行は組み手だ。いよいよ……お待ちかねの実戦形式でな…!」

 

 




紛らわしいかもしれないので、少し補足をしますと、「気のコントロール」と「戦闘力のコントロール」は別物です。
分かりやすいところで言うと、「気のコントロール」はナッパがしていたアレです。
気を入れる、というのと同じです。ですが気を上げようが下げようが、惑星戦士は「戦闘力」は変わらないのです。
つまり戦闘力と気は似て非なるもので、よく混同されていますが、概念的には違うものと言えるのではないか、というのが私の考えです。
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