Saiyan killer   作:北江

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32話、決断

「……わたしは…地球に残る。残って、ソン・ゴクウと戦う…」

 

 そう小さく、感情を押し殺したような口調で少女の口から出た言葉を、ヤムチャはただ、そうか、とだけ受け止めた。それが意外だったのか、あるいは予想通りだったのかは、男の表情からは読み取る事は出来なかった。

 

「…それじゃ、明日もまた修行だな。ちょっと夜更かしが過ぎちまった…。いい加減に寝ないと明日が辛いぞ」

 そう言ってヤムチャが寝る準備を始めた。自分の決断を否定も肯定もしないヤムチャに不満を感じながらも、マーリンも丸めてあった寝袋を広げた。

 昼間の過酷な修行により、疲労は身体の芯にさえきている。身体は正直に睡眠を欲していた。しかし気持ちが治まらない。寝袋に入り、横になっても少しも眠くはならなかった。

 

 うとうともせずに、思考がぐるぐると頭の中を回る。もう終わった事なのに、マーリンは何度も何度もさっきの決断をなぞっていた。

 

 

 

 

 やがて、1時間ほどが過ぎた。少女が寝袋から顔だけを出して、ふとヤムチャを見た。

 ……驚いた事に、ヤムチャも眠ってはいなかった。毛布に包まりながらも、目だけははっきりと開いて中空を見つめているのが、熾になりつつある焚き火の炎に照らされ、見えた。

 

「ヤムチャ…眠れないのか…?」

 思わずマーリンがそう小さく声を掛ける。

 

「…………」

 しかし返事は無い。一瞬だけマーリンの方をちらりと見て、すぐにまた男の視線が何も無い空間に戻る。

 

 

「……っ…!!」

 

 何かが…叫びのような声が喉から出掛かったが、それをぐっ、と抑える。すると、今度はヤムチャの方から声がかけられた。

「……早く寝ろって言っただろ…。それとも何か、眠れない理由でもあるのか…?」

 

「………ッッ……!!」

 当たり前だ、とマーリンは思う。自分はエゴのために一つの星を見捨てたのだ。それが心にのしかからない方がどうかしている。それが理解出来ないヤムチャではあるまいに、と。

 ともすればそのことを大声で叫びだしたくなる気持ちを抑えて、どうにか少女は冷静に、逆にヤムチャに問うた。

 

「…お前こそ、どうして眠らない…。…わたしが眠れないのは判ってるくせに…」

 

 そうぽつりとだけ返す。

 

「何でだよ。お前が決めた事なんじゃないのか。…たったの1時間で後悔するような決意なんかするんじゃねぇっての」

「……っ!! こっ…後悔なんてしてないっ! でも…、でも…わたしは…」

 思わずマーリンが顔をくしゃくしゃにして、ヤムチャに反論する。

 

「…大きな声出すなよ。ご近所迷惑じゃねぇか」

 そう言うとヤムチャはようやくマーリンに向きなおり、にっ、と笑う。

 

「……お前、本当はその星の人たちも助けたいんだろ? でも悟空とも戦いたいと。まったく欲張りな…まるでどこぞのお姫様みたいだな、お前は…」

「………」

 

 確かにそれが出来れば、どんなにいいかと少女は思う。しかし、それは絶対に不可能だと判っているのだ。だからこその苦渋の決断だったのだ。そんな事を今更言い立てるヤムチャの気が知れない。

 

「ヤム……」

 だからそれ以上は何も言わないで欲しい、そう思って口を開きかけた瞬間、ヤムチャが再び毛布を被り直し、少女に告げる。

「ま……何とかしてみようじゃねぇか、そいつをさ。とにかくさっさと寝ろ。明日は日が昇ったらすぐに出るんだからな」

「え…? そ…それはどういう…」

 

 ヤムチャの言葉の意味がつかめず、何度も問い掛けるマーリンだったが、やがて聞こえてきた男のいびきに、諦めるしかなかった。

 

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