Saiyan killer   作:北江

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34話、神域

 

「精…神と…、時の…部屋……?」

 

「そうだ。以前、サイヤ人が地球に来たって話はしただろ? その時に俺や他の仲間はここ、神様の神殿で修行したんだ。その時にこの部屋の事も知ったし、一度だけ入った事もあったんだけど…」

 オウム返しに発した少女の声に答えるように、そこまで言いかけたものの、ふと男の口が閉じられた。

 

「…いや、細かいことはいいだろ。…まぁ、とにかく中に入れば判るさ」

 がちゃり、とヤムチャが扉を開くと、マーリンが中を恐る恐る覗き込んだ。が。

 

「…っ……、な…なんだ…、ここは…」

 

 扉の向こうのすぐにあったのは、ベッドやテーブルが置いてある、どうやら生活のためのスペースのようだったが、その先…奥に見えた異様な世界に、マーリンは呆然とした。

 

 …真っ白な、ただただ白く、そして広大な空間が、そこには広がっていた。

 

 そして何よりも、その光景にマーリンは混乱し、絶句していた。扉の向こうは外から見たこの建造物の大きさからは、絶対にあり得ない広さだったからだ。

 

「………?! …………?…?」

 一瞬、少女はまだ自分が夢を見ているのかと思った。それほどこの眼前の光景は、少女からすれば常軌を逸していた。だが、さらにヤムチャが信じがたい事を口にした。

 

「さぁて……、じゃ入るぞ」

「は……? 入……る? ど…どこにだ…」

「…今更なに言ってるんだ? ここに決まってるだろ」

 

「…ま、待てヤムチャ。ちょっと……待て。さっきから…何を言ってるのか…、いや、何もかもがよく理解できない。まず…、ここは…何なのだ?」

「何って……ここは神様の神殿で、そんでこれが精神と時の……」

 

「だ!か!ら! 何をさらっと言っている! カミサマ…だと? カミとは……いわゆる『神』のことを言っているのか?!」

「…いや、さっきからそう言ってるんだけどな……」

 

 この建造物の異様さ、そして覗き見た精神と時の部屋なる、さらなる異様な空間、おまけに、とどめとばかりに『神』の実在を告げられ、マーリンの頭はもう爆発寸前だった。

 

「…頼む、ヤムチャ。頼むからちゃんとした説明をしてくれ……!」 

 

 あまりその手の事に詳しくないマーリンの持つイメージの神とは、すなわちこの世の造物主であり、ある種の真理である。そんなものがそうおいそれと居る訳が無いのだ。とにかくちゃんと説明しろと男に詰め寄るが、それに対するヤムチャの答えも要領を得なかった。よくは判らんけど、とにかく偉い人(人?)、という程度の認識で、まったく話は噛み合わない。

 

 結局最後までマーリンは半信半疑だったのだが、しかしそれでもこの神殿の雰囲気からすれば、あながち眉唾とも思えなかった。

 

「…で、だ。正直俺も理屈とかはよく判らないけど、そこはなんか俺らが普段いるのとは違う世界らしい。空気も薄いし、重力もやたらと大きい。昔、俺も入ったけど、あの時は1日も居られなかったぐらいでさ」

 

「………そう…、…なのか……」

 『神』の実在がどうのこうのはさておき、ヤムチャほどの男でさえ、1日も持たないほどの空間。それが目の前に広がる白い世界だと認識すると、わずかに身体が震えた。

 

「おまけに、ここの売りはもうひとつある。と言うか、こっちが本命だな…。ここは中と外では時間の進み方が違うんだ。中での1年が、外ではたったの1日に過ぎないのさ」

「な…なんだと……っ!?」

 

 続く男の言葉に、驚く…どころではなく、マーリンは度肝を抜かれた。そんなモノを作る技術など。見た事も聞いた事すらも無い。また、自分たちの業界にはあまり関わりはないが、確か銀河パトロールとやらが定めた銀河法…とかいう法律にも、時間の制御や関与は禁止されている、と聞いたこともあるのだ。

 

「……………」

 ……だとすれば。ヤムチャの言っていることが本当の話ならば、まさに『ここ』は宇宙の、世界の、現世のルールを超越していることになる。

 …やはり神が住まうという『神殿』を名乗っているのは伊達ではない、と言う事なのか、と、マーリンが息を呑む。

 そして、にわかには信じられないが、もしそれが本当の話ならば、ヤムチャの昨日の言葉の謎が解ける。同時に、ここに自分を連れてきた理由をマーリンは理解した。

 

 今からヤムチャはこの白い闇の世界で、自分に修行をさせるつもりなのだと。

 

「ま、百聞は一見にしかずってな。とりあえず入ってみ……ッ!?」

「きゃうッ……!! ヤ…ヤムチャ……ッッ! な…何を……っ??!!」

 と、そこまで言いかけたヤムチャが、何を思ったか、マーリンをいきなり蹴り飛ばして部屋に放り込んだ。そして有無を言わせず扉を閉め、後ろ手にノブを握りながら……振り向いた。

 

 

「…よ…よう……、ずいぶんと早起きなんだな…」

「ミスターポポ、いつもはもっと早い。それよりヤムチャ、お前はここで何をやってる?」

 

 

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