「おいっ!! マーリン! 大丈夫かっ!?」
息せき切って、ヤムチャがマーリンに遅れること5分ほどで、精神と時の部屋に入室した。しかし、焦る男の目に飛び込んできたものは…作り付けのベッドですやすやとのんきに寝息を立てている少女の姿だった。
「……はぁ。……心配して損した…」
「………ん……んん……?」
思わずそう呟いてしまった男の声に反応したのか、ふとマーリンが目を覚ました。単に昼寝だったのか、いつものような寝起きの悪さは見られず、起きて真っ先にヤムチャの存在に気がついたかと思うと、猛烈な勢いで食ってかかった。
「ヤムチャ!! いきなりこんな所に押し込んで、しかも丸一日も放っておくなんて…いくら何でもあんまりだろうっ…!!」
「悪い悪い…。でも、外じゃほんの5分ほどだったんだ。ほら」
そう言ってヤムチャが時計を見せる。確かに洞窟を出たのが5時前で、ここに着いたのがそれから1時間後で、実際に時計は6時を少し過ぎた辺りを指していた。
それに対してマーリンのスカウターに内蔵された時計は、あれから27時間が経過していた事を示していた。
「なるほど…本当にここの空間は、外界とは時間の経過速度が違うんだな…」
改めてマーリンが納得する。そして、薄々はヤムチャの意図に気がついてはいたが、それも改めて説明してもらった。たったの一日で修行を終え、悟空と戦い、そして惑星ドーバをも救うという離れ業の計画を。
「…でも、こんなすごい場所があるなら、もっと早くに来ればよかったんじゃないのか…」
そうマーリンがぶつぶつと不平を口にする。一応納得はしたものの、やはり丸一日放置された事を相当根に持っているようだ。
「そう言うなって。ここは神様の住んでるところなんだぜ? 俺やお前みたいなのが気軽に来ていいような場所じゃないんだよ。これしか方法が無いからやむを得ず、なんだよ」
「…………」
まだ何か言いたそうなマーリンだったが、とりあえずはそれで収まったようだった。ヤムチャがやれやれと胸をなでおろす。
「……それで、一日ここで過ごした感想はどうだ?」
「…ん、確かに環境としては楽ではないな。それでも、ここがマシに思える星などいくらでもある。お前が言っていたほど厳しいとは感じないが」
「まぁ…昔入った時は、俺も今より全然弱かったからな…。確かにあの頃よりはキツくは感じないけど…」
そう言いつつも、入って真っ先に見た少女の寝姿をヤムチャが思い出す。冷静に考えてみると、こんな環境の中で、それでも昼寝が出来るほどにリラックスできるのは尋常の神経では無い。少女のこれまでの人生がどれほどのものだったのか、ヤムチャには想像する事すら許されていない気がした。
「そ…そっか…。それじゃ、その辺は修行にはあんまり有効じゃ無いかもな。あくまで時間のメリットだけって考えた方がいいか…」
少しあてが外れはしたが、しかしおおむね問題は無い。それに、効果が無いと決まった訳でもない。少なくとも外界で修行するよりは負荷が大きい事に変わりは無いのだ。
「…よし。それじゃさっそく修行に入るぞ。時間が惜しいからな」
そう宣言して、ヤムチャは荷袋を漁ると、そこからいろいろと取り出した。