Saiyan killer   作:北江

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51話、初めての…2

 

 ちゅっ……

 

 くちびるに触れるだけの、軽いキスだった。

 

「………?…」

 ぽかんとした顔でマーリンが不思議そうにヤムチャを見つめる。

「…やれやれ、キスも知らないのか…?」

 からかうように問いかけられたヤムチャの言葉に、むっとしながらマーリンが反応する。

「……そ…それぐらい知ってる…。バカにするな……」

 

 そう言うと今度はマーリンの方から、お返しとばかりにぐっと唇を突き出して、ヤムチャの唇にぶつける。不器用でぎこちないキス。抱き合ったまま、何度も何度も気持ちをぶつけるような、そんな拙い少女のキスをヤムチャが受け止めていた。

 

 もう言葉は要らなかった。無言のまま、ヤムチャがマーリンの背中をまさぐる。だが、あるべきはずのホックやファスナーなどが見つからないことにわずかに焦る。

 

『…そういや宇宙製の戦闘服だもんな……』

 心の中で男がそう苦笑する。そしてわずかに身体を離し、マーリンに目で訴えかけた。

「え…、…ぬ…脱ぐ…のか……?」

 ヤムチャの意図は理解したものの、少女は戸惑いを隠せない。しかし、しばらくの逡巡の後、戦闘服のセパレートを始めた。

 

 

 

 

 

「これで…いいの…か…?」

 この白い空間にも負けないほどの、少女の白い身体があらわになっていく。以前に露天風呂でヤムチャが見た時よりも、はるかに女らしい体つきになっていた。マーリン自身は少々困惑していたが、今や胸のサイズは平均よりもやや大きい程だ。

 そんな少女が顔を赤らめ、所在無さげにあっちを見たりこっちを見たりしている。

 

「…裸を見られるぐらい、平気なんじゃなかったのか……?」

 少女の反応をからかうようにヤムチャがささやく。

「……こんな戦士らしくない身体を見せるのは……恥ずかしい……」

 

 …恥ずかしがるポイントがズレてるだろ、と心の中で苦笑しつつ、ヤムチャが改めてマーリンの裸に見入る。不思議とここまで来れば鼻血など出ない。

「でもまぁ、前はほんとに細かったからなぁ…今ぐらいがちょうどいいんじゃないかって俺は思うぜ? もっともブルマに比べ……っと…」

 

 …余計な事を口走った。そう思ったヤムチャがあわてて口を閉じた。案の定、マーリンが怪訝そうな顔をしてヤムチャを見つめる。そして。

 

「ブル…マ…。それは以前言っていた……おまえの恋人…か…?」

 

「…………っ……」

「…その…、わたしは…こういう事の知識は…あまり無いから、よく判らないが…いいのか……? ヤムチャ……」

 

「……………」

 少女の問いにヤムチャは答えない。答えられなかった。その代わり、無言のままもう一度少女にキスをする。軽くつつき合うキスではなく、少し大人のキスを。

 

 そしてふたりだけの時間が優しく、かすかにほろ苦く過ぎていった……。

 

 

 

 

 …数時間後、寝室に作り付けの、明らかに二人は定員オーバーのベッドに、ヤムチャとマーリンが並んで横になっていた。気持ちよさそうに腕枕してもらっているマーリンと、それを優しげに見つめるヤムチャだったが、内心ではブルマへの罪悪感が無い訳ではない。しかし終わってしまった事を今更悔やんでも仕方が無いのだ。

 

 そして罪悪感といえばもう一つ。これも今更ではあるが、未成年者に手を出してしまったのではないか…という恐れだ。しかしふと以前にも心に引っかかった『ある事』をヤムチャが思い出す。

 その時に覚えた違和感……相当な数の戦場を渡り歩いたと以前マーリンは言っていたが、5年や6年でそこまでの場数が踏めるものなのだろうか、というものだ。

 

 それにさっきのマーリンの話からすれば、彼女は惑星ベジータの崩壊より以前に生まれている。という事は、少なくとも丁度その前後に生まれたらしい悟空よりも年上ということになる。しかしそれでは外見や性格の幼さに説明がつかないのだ。

 

「そういえば…マーリン…。お前って今いくつなんだ?」

 考えれば考えるほど、訳が分からなくなっていく。思わずヤムチャは心に浮かんだ疑問を率直に問うた。

 

「いくつ…とは、年齢の事か? ふむ…ちょっと待ってくれ」

 急に思っても見なかった話を振られ、少し驚いた風なマーリンだったが、少し考えるような仕草のあと、スカウターを取り出して何やら操作を始めた。

 

 

 

「……単純にわたしが誕生してからの絶対時間で言うなら、この星の公転周期を基準にすると…、約38年…ほどのようだな」

 

「な……なぁっ!? さ…38年…38歳って…、お…おまえ…お…俺より年上なのかよっ…!?」

 

 マーリンの『告白』に、さすがにヤムチャも驚いた。思わず起き上がりそうになり、勢い余ってマーリンはベッドから転げ出されるところだった。

 せっかくの腕枕をふいにされ、少しご機嫌ななめになった少女(?)が意地悪い笑みを浮かべながらヤムチャに迫る。

 

「…そうだ。だから以前にも言っただろう? 子供扱いするな、と。…だがおまえよりも年上だったとは知らなかったな。今度からはもう少しわたしに敬意を払ってもらおうか…ふふふっ」

「え……あ……、ぐ………」

 

 くすくすと笑いながら、とても複雑な表情で目を白黒させているヤムチャに顔を近づける。だが、余りに男の表情がおかしかったのか、とうとう声を上げて大笑いを始めてしまう。

 

「くくくっ…あ…はははは! 今のは…半分本当だが半分はウソだ…。確かに生まれてからはそれぐらいは経ってるが、実際に活動していた時間は…その半分にも満たないだろう」

「………? え……え……ぇ……??」

 

「…星間移動の際、わたしは常に人工冬眠を行ってきた。だからわたしの肉体年齢は…おそらく17歳から18歳前後だと思う…」

「……? ………??」

 

 まだいまいち要領を得ない、という顔のヤムチャに、くっくっといまだにおかしそうに笑うマーリンが続けて説明する。

 少女の請け負う仕事は、先日連絡してきたような急な飛び込みの仕事のように宇宙の多岐に渡っている。なのでマーリンは星から星へ、戦士になってからの人生の大半を、宇宙船で飛び回って過ごしていたのである。そしてその移動の際には、例え数日と言えども人工冬眠…コールドスリープ状態にしていたのだった。

 

 つまり、移動の間はマーリンは歳を取る事はなく、純粋に戦っている間だけしか、歳を取る事は無かったというのだ。

 

 最初はぽかんとしていたものの、ヤムチャにもようやく事情が飲み込めてきた。

 同時に、この少女から『私生活』というものの匂いがまったくしないこと、世俗的な知識がほとんどないことにも合点がいったのだった。

 

 …そして自分がからかわれていた、ということにも。

 

 

「ッ!…てめっ! 大人をからかいやがって!!」

 憮然とした表情で、今度はヤムチャがマーリンに覆いかぶさるように迫る。

「子供扱いするなと言っただろう! …っ! あっ! ちょっ…そ…そこは…! やっ……ヤム…」

 ヤムチャの手がマーリンの尾てい骨の辺りをまさぐる。確かサイヤ人は尻尾が弱点だったと聞いたことがあった男の、起死回生の攻勢である。少女の本来尻尾があるはずの場所はわずかに盛り上がっていて、ヤムチャの指にその位置を控えめに教える。

 

 

「ひゃぅっ…! や…ヤムチャ…っ! そこはっ…だ…だめっ…!」

 見る見るうちに力を失い、マーリンがへなへなとヤムチャの腕に翻弄される。

 

「へぇ、尻尾が無くてもここはやっぱり弱いのか…。ていうか、お前、尻尾はどうしてたんだ?」

「…うぅぅ……尻尾は…子供の頃からずっと…生えてきたら自分で…切ってきた………ひっ! ひゃふっ!」

 

 びくびくと体を震わせながら、マーリンが涙目で答える。すっぽりとヤムチャに身体を包まれるようになりながら、ひたすら目で抵抗する。だが、そんなマーリンの表情に、いったん火のついたヤムチャの嗜虐心が止まらない。弄ぶようにポイントを変えてみたり、力の加減を変えたりでその度に少女の白い身体が狭いベッドの中で跳ねる。

 

「やっ…! ヤムチャぁぁぁっ! も…う…許してっ…!!!」

 

 

 ……ふたりの時間はまだまだ終わりそうに無かった。

 




ちなみにですが、マーリンの戦闘服はだいたいフリーザ軍のそれと同じです。細かい意匠に違いはありますが、現実世界の軍服もだいたいどこの国も似たようなもの、というのに近い、というか、機能を追求すると、同じような形に収斂していくというアレです。
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