Saiyan killer   作:北江

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68話、絶技

 

『…それで…結論は出たのか?』

 

 いまだ不機嫌そうな態度のまま、マーリンが落下地点でぴくぴくしているヤチャをつま先でつつきながら再び問う。

『……いてて…ムチャしやがる……。ま…まぁさっきのは冗談として、つまりはだな……悟空にはオリジナリティってのが欠けてるんじゃないかな…』

 

『…オリジナリティ…独創性…か…。……って、オリジナルの技を持ってないなら当たり前じゃないか!!』

 

 やはり結論とは到底言えないような言葉遊びを投げ掛けられ、またも激昂しそうになるマーリンに、あわててヤムチャが説明を続ける。

 

『ま…待て待て! 最後まで聞け! ……俺の見たところ、悟空は元々技に対するこだわりは無いっぽい。技を開発するヒマがあったら力を鍛えるってタイプだ』

『……だから…なんだ!』

『…独創性…創造力ってのは想像力でもある。要するに悟空には想像力というか、発想力が弱いんじゃないかって事。つまり意外性のある攻撃が有効と見るな。俺は』

『……………ふむ……む…?』

 

 ヤムチャの説明にマーリンも一応は納得したようだが、いまひとつピンと来ない様子だ。むむむ…、と腕を組んで、難しい顔をしている。それを見て、やれやれと言った表情でヤムチャが助け舟を出す。

 

『…例えば、あいつは俺の繰気弾の事は知ってるはずだ。でも、知っているからこそ、想像の幅が狭められるとも考えられるのさ。なら、そいつを逆手にとって、一見同じに見えても突飛な発想の技を編み出せば…』

『…普通の繰気弾だと思って油断して、上手く食らってくれるかもしれない、と。なるほど…そういう事か……』

 

 ようやく納得できたのか、うんうんと首を振ってマーリンが感心していた。

 

『まぁ、実際そう上手くいくかどうかは判らんけどな。ただ作戦と言うか、そういう方向性はかなりアリだと思うぜ?』

『…なるほど…。ではさっそく今日から新しい繰気弾の開発を頼む。わたしは別の技の修行で忙しいからな』

 

『…………は…?』

 まさかそう返されるとは思っていなかったヤムチャが、思わず抗議の声を上げる。しかしマーリンは一向に取り合わない。

 

『…フルパワーのわたしと組み手の修行をするか、新しい技を編み出すか、どっちがいい?』

 にっこりと微笑みながらマーリンが問う。余計な事いうんじゃなかった…。そう密かにヤムチャは後悔したのだった…。

 

 

 ……そんな2ヶ月前の記憶が、ふと少女の脳裏に走馬灯のように蘇っていた。

あの日以来、(主にヤムチャが)苦心して編み出した、一ノ牙『繰気連弾』に続いて、ニノ牙『狼牙繰気拳』が悟空にヒットしたのだ。

 これらの新技は、彼の狙い通りの効果を発揮しているとマーリンは確信した。

 

『確かに…ヤムチャの言う通りだった。ソン・ゴクウ…この男の技術やパワーは凄まじいが…、…しかし完全無欠という訳ではない…!!』

 

 しかも先ほどまでのように不意打ちではなく、狼牙繰気拳で正面からダメージを与えた事の意味は大きい。もちろんいまだに力の差は歴然だが、しかし自分のこれまでと修行の全てに自信と確信と……そして勝利への信念が深まっていく。

 

「はぁぁぁぁぁっっ!!!」

 

 ボゥッッッ!!

 

 マーリンの身体から、さらに赤い赤いオーラが立ち昇る。真っ赤なそれは、あるいは彼女自身の心の炎なのかもしれない。そしてマーリンが大きく大地を蹴る。赤き炎を纏って。

 

「……ちっ…ィィっッ……!!」

 べったりと手についた血を振り払い、迫るマーリンに悟空が構えた。しかしそれは防御のためではない、あくまで攻撃中心の構えだった。

 ここまでの流れは、自分にとっては決していいとは言えないものだと悟空は感じていた。依然として少女と自分との力の差は圧倒的ではあるが、しかしこれまでの流れから、何か不穏…不吉なものを感じるのだ。

 

 この流れを変えるには、絶対に守勢に回ってはいけない。そう悟空は直感する。今のこの少女の勢いは止めなければならない。絶対に。

 

「つぁららららーーッッ!!」

 マーリンの牙が鋭く疾る。そして気弾がその動きにシンクロし、5方向から悟空を容赦なく襲う。拳をかわしたところを気弾が狙い、またその気弾をかわせばまた別の気弾や拳が降り注ぐ。そしてこれこそがまさに、狼牙風風拳と繰気弾を組み合わせた、狼牙繰気拳の真骨頂だった。

 

「ぐく……ッッ!! く…そッッ……!!!」

 流れを変えるべく、攻撃主体の構えを取っていた悟空だったが、その攻撃は気弾たちに阻まれ、手を出したとしても弱い手打ちにしかならなかった。悟空の焦りが、またも裏目に出てしまっていた。

 

 

「はいはいはい~~!!! つあぁぁぁぁーーーッッ!!」

 

 バキィッ!! ズバアァッッ!! ガギィッッッ!!!

 

「ぐっっ!! っぁが……ッ!! ぎ……っぃ!!」

 

 ……伝説とまで称された超サイヤ人が、今や滅多打ちだった。だが、いかに今の悟空と言えども、上下左右、あらゆる方向から繰り出される攻撃を受け切る事など不可能だった。

 

 

「……っ……ふ……!」

 ふいにとんとん、とマーリンが軽くバックステップを踏み、そこから一気に悟空の懐へ飛び込んだ。その身体ごとの拳は、悟空の顔面に狙いを定めていた。

 

「はぁぁぁぁぁぁっっッッ!!」

「…ずぁりゃあああッッッ~~~~~~ッッ!!!」

 しかしそのマーリンのパンチに、悟空が渾身のカウンターを放った。これまでの戦いでは見られなかった大ぶりな、雑とも取れる少女のパンチに、悟空が勝機とばかりに放った起死回生の一撃だった。

 

 だが。

 

 ヴォゥアッッッ!!!

 

「………ッッ?!」

 悟空に突っ込んでいくマーリンの身体が、直前でギリギリに沈み込んだ。瞬間、悟空の恐るべき拳が、少女のプラチナブロンドの髪を掠めながら虚空を引き裂いていく。そして視界から消え行く少女の頭の代わりに、悟空の目に飛び込んできたものは…あの白い気弾だった。

 

「な…っ…頭の…影…に…ッ…!!??」

 

 眼前に突如として現れた気弾に、悟空が焦る。そう、マーリンは自らの身体を囮として、悟空からは見えない位置…つまり自らの頭のすぐ後ろに気弾を置いていたのだ。雑に見えた少女のパンチも、カウンターの誘いだった。悟空にカウンターを撃たせて、更なるカウンターを自分が取るための。

 刹那の間にそこまでを悟空が理解した。そしてもはや回避が不可能だということも。

 

 

 …ベギィィィィッッッ!!!!!

 

 数瞬の後、カウンターのカウンターによる、凄まじい威力の気弾が悟空の顔面を激しく襲った。あまりの衝撃に耐え切れず、わずかの間の後、気弾そのものも木っ端微塵に破裂したのを見届けたマーリンが、誰に聞かせるともなく呟いた。

 

「……繰気弾…三之牙。『影狼(かげろう)』……!!」

 

 

 

 

「が…は………っ」

 ぶすぶすと顔面から煙を上げながら、よろ、よろ、と悟空の足が二歩三歩を踏む。そして…ゆっくりと男のヒザが、地面に吸い込まれるように落ちていった…。

 

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