Saiyan killer   作:北江

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73話、進化

 

 ……カッッッ………!!!!

 

 

 やや日の落ちかけてきた荒野に閃光が走る。だがそれは。

 

「あ……あい…つ…っ…、まさか……!!」

 ヤムチャが恐れていた事態……海皇拳とメガスピアードの同時使用による気の暴走……、そしてそれからの自滅はなく、なんとマーリンは見事にファイナル・メガスピアードを発動させていた。

 悟空の拳とマーリンのファイナル・メガスピアードがぶつかりあうスパークが、荒野を淡く照らし出していた。

 

 今朝までの少女だったならば、間違いなく、確実に失敗していただろう。しかし悟空との戦いの中で、力と技をさらに練り上げ、研ぎ澄ましてきたマーリンは、やはり進化していた。

 そして少女は、その己の進化に賭けた。今の自分になら出来る。そう信じて放った、文字通り最後のメガスピアードだったのだ。

 

「ぎぎぎぎぎッッ……!!!!」

「お……ぉおおおおおッッ!!!」

 だが、一点集中による驚異的な威力を誇るマーリンのファイナル・グランスピアード、それをさらに改良したメガスピアードだったが、悟空の拳もまた限界まで気を集中し、その威力を受け止めていた。

 状況はほぼ互角。だが、ただの拳と気功技とでは持続させられる時間が違う。それでなくとも海皇拳を使っているマーリンの疲労は、肉体、精神ともに、すでに限界を超えているのだ。

 

 

「ぐぐっ……ッッ……」

 そして、やはり徐々に均衡は破られ始めていた。当然押しているのは悟空である。技を形成するマーリンの腕はぶるぶると震え、少しづつ身体も後ろに押されていた。

 …いける。そう確信した悟空が、さらに拳に力を…気を込める。ここを超えれば少女に残る手立てはもはやゼロである事は疑う余地も無い。自分の余力など考える必要も無いとばかりに、全身から残された気の全てを拳に送り込む。

 そしてついに……。

 

 ッヴァァァァンンンンッッッ!!!!

 

 少女のファイナル・メガスピアードが…木っ端微塵に吹き飛んだ。いや、悟空の、超サイヤ人の凄まじい力にかき消された。

 

「……ッッッ!!!???」

 その光景に目を疑うマーリン。それとは対照的に、悟空の口元に薄く笑みが浮かぶ。

 勝った。そう悟空は今度こそ確信する。後はこのままこの拳を少女に叩き込めば、それで全てが終わる。最後の力を振り絞り、一気にマーリンに肉薄する。

 

「……っお……ぉおおおおおッッッッ!!!」

 マーリンの拳も、とっさにそれを迎え撃つべく動いた。メガスピアードを破られた今、彼女に残された力などほとんど無い。ただ、このまま倒されるのを待つだけなど、少女には断じて耐えられなかった。その気持ちだけが拳を振るわせる。

 

 

 

 

 

 

 ……………まるで水の中のように、意識と視界全てのものがゆっくりと動いていくようにマーリンには見えていた。ゆえに悟空の拳もゆっくりと、しかし確実に自身に迫るのが見えていた。

 むろん自分の拳も悟空に迫ってはいる。だが届かないのも判っていた。悟空もそれが判っていると言わんばかりに、少女の拳など見ることも意識もしていない。ただ己の一撃に全てを集中していた。

 

 

 

 

 …やはり終わりか。そう少女が諦めかけ、悟空が確実なる勝利を確信した、その時だった。

 

 

「ッ………!!!??」

 ふいに、唐突に、悟空の卓越した武道家としての勘…、いや、感覚が、にわかには信じがたいものを捉えた。

 

『……気が…、2つ……??!!』

 

 目の前の少女から、悟空は突然気を二つ感じた。だがそんな事は有り得ない、とも悟空の理性が叫んだ。

 ゆえにとっさに頭に浮かんだのは、さっきまでの操気弾トラップの数々だ。この土壇場でまた罠を仕掛けてきたのかと悟空は思った。事実、海皇拳を繰り出す前には、確か一つだけ気弾は残っていたのだ。

 だがそのもう一つの気は、マーリンに比べれば途方も無く弱く、か細い気だった。まるで理解不能の状況に直面し、混乱した悟空の拳が一瞬迷う。その刹那。

 

 …バァキィィッッ!!!!

 

 当たるはずなど無かった、マーリンの拳が悟空の顔面を捉えた。

 

「~~~~~ッッ……!!!???」

 まるで注意など払っていなかったマーリンのパンチの直撃を受け、悟空が吹き飛んでいく。

 …それは本来ならば、決して当たるはずのないパンチだった。それが悟空に生まれた一瞬の隙と、わずかな意識の空白が、足りなかった時間を埋めたのだ。

 

 凄まじい自身のパンチの威力を乗せられたそのカウンターパンチに吹き飛ばされながらも、いったい何が起きたのかすら、この時の悟空には判らなかった。

 

 

 …ドガァァァァッッ!!!!

 

 マーリンの起こした地割れによって出来た岩山に、激しく悟空が叩きつけられる。粉々に崩れていく岩に悟空が埋もれていく……。

 

 

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