「こ…こいつ…ッッ! ガキだと思って手加減してやってりゃ…いい気になりやがって!!」
そう叫ぶ異形の男の周囲には、すでに数人が地面に倒れ伏していた。残った男たちの顔にも、微かに焦りが浮かんでいる。その彼らがぐるりと取り囲んだ中心にいるのは、まだ10歳にも満たない、見るからに生意気そうな黒髪の少年だった。
「…へぇ、だったら本気でかかってきなよ。ま、ムダだと思うけど…」
「な……舐めやがってクソガキが……! おぉおおおおおっ!!!」
「……うおぉぉぉぉぉッッ!!!」
ドゥンッ!! ドゥゥンンッ!!
次々とエネルギーを開放し、一気に男たちが少年に迫る。しかしそれらを軽々と捌きながら一人、また一人を少年が倒していく。だが。
「……ハハッハァっっ…! バカがっ!」
「………ッッ……ッ??!!」
倒れていた男の一人が突然立ち上がり、口から血泡をこぼしながら凄まじい形相で少年を後ろから羽交い絞めにした。予想外の出来事にあわてる少年だったが、万力のような腕に締め上げられ、身動き一つもままならない。
「くっ…くそっ!! は…離せよっ!! ……ッッ!」
そう毒づくのが精一杯の抵抗だった。そして、残った男たちがぞろぞろと近づいてくると、さすがに少年の顔に恐怖の色が浮かび上がる。
「へっへっへっ…調子に乗りやがって……。でもこれでおしまいだな! ボウズ……!!」
にやにやと哂いながら少年の顔面にごっ、ごっと拳を叩きつける。何度目かのそれで唇が切れ、鮮血が溢れ出す。悔しそうに男を睨みつける少年だったが、ふと見たその背後に表情が変る。
「…………っっ!!」
「あぁ………?」
どこか怯えたような表情を浮かべる少年の様子…異変に気づいた男たちも訝しげに振り向く。そこには一人の女性が立っていた。
「………あぁん? なんだテメェは……」
そこに立っていたのは、男たちの種族ではないが、その彼らからしても充分に美しいと感じられる女性だった。小柄だが均整の取れた引き締まった身体。そして腰まで伸ばしたプラチナブロンドが風にたなびくように揺れていた。
「くっくっ…、しかし…悪くねぇ女だ。お頭もお喜びになるかもしれん…」
ぺろり、と異形の男が舌なめずりをした。しかしそんな男たちの下卑た言葉など無視するように、さらに女性が近づく。
「お……おかあさんっ……」
「…こんなことだろうとは思っていたが…。しかしこの程度の雑魚どもを相手に後れを取るとは…。わたしは情けないぞ、シルフ…」
シルフ、それが少年の名前のようであった。そう呼ばれた少年は母親と思しき女性の辛辣な言葉に、羽交い絞めされたまま顔を伏せ、しょんぼりとしていた。
「………な……にぃ……?」
一方、自分たちをまったく恐れていないかのように歩を進める女性に、さしもの男たちも何かの異変、異様を感じ始めた。宇宙を股にかけ、星々を荒らして回る自分たち「ゴート団』といえば、泣く子も黙る最凶最悪の宇宙海賊なのだ。
そしてフリーザ亡き今、解放され、復興の途につき始めたこの星…かつての惑星マリーンを、今まさにこのゴート団が襲っていた。
「…な…何なんだっ!! てめぇはっ!! 邪魔するならてめぇも……」
自分たちが何者なのか、この星の人間が知らないはずがない。なのに目の前の女性の振る舞いからは、自分たちを蚊ほどの脅威とも感じていないようにさえ男たちには思えた。その異様な光景に男たちに動揺が走る。
半ば虚勢めいた心持ちで男の一人が威嚇しかけたが、さくさくと女性が近づくにつれ、その言葉が止まる。
「…!? ……ま…まさか…、お前……あ…あのマーリ……」
「ほう…。貴様らのような三下の盗賊にまで知られているとは光栄だ。だが少し気がつくのが遅かったな……」
ズァヴォゥッッッ!!!
…男の言葉は、最後まで発せられる事は叶わなかった。
「……ご、ごめんなさい…、おかあさん…」
「…だから言っただろう。それなのに勝手に一人で出ていくから、こういうことになるんだ」
「で、でも! あ…あんな連中…ほんとうは僕ひとりでもやっつけられたんだからね!」
唇の傷の手当てを受けながら、そうシルフがぼやく。助けられた事を面白く思ってはいないようだったが、母親も息子を助ける事が出来たのを素直に喜んではいない風だった。
「まったく…あの程度の連中に足元をすくわれるなど…まったく不甲斐ない…。もっとも…そんな所もヤムチャ譲りなのかもしれないが…」
はぁぁ、と母親が、いや、かつて地球という星を訪れた、マーリンと言う名の女性がため息をつく。だがそんな母親の口をついて出たヤムチャという単語に、息子がぴくん、と反応する。
「そうなの!? おとうさんも僕みたいだったの? ねぇ! またおとうさんのお話してよ、おかあさん!!」
目を輝かせながら父の話をせがむ我が子に苦笑しつつも、マーリンがいつものようにヤムチャとの思い出を語る。共に過ごした時間はさほど長いものでは無かったが、彼女の人生において最も密度の濃い、充実した日々だった。
もう一体何度同じ事を話したのかも判らないが、飽きる事なく少年は満足そうに、いつもいつもそれに聞き入っていた。
「…ねぇ、おかあさん…。それでいつになったらお父さんは…僕たちのところにきてくれるの? 僕たちから会いにいくのはできないの…?」
「…………っ……」
我が子の素朴な疑問に、わずかに母親の表情が曇る。だがその時。
…ズゥゥゥンンンッッッ!!!!
「貴様らかァァァっっ!! オレたちを狩ってるって奴らはァァァ!!!」
身の丈は10メートルを軽く超える巨躯がそびえ立っていた。足元には先ほどあわてて逃げ出した男たちの生き残りがいた。
「なんだァァァッ!! 女とガキの二人じゃねェかァァァッッ!! こんな奴らに尻尾巻いて逃げてきたってのかァァ! てめぇらはァァァッ!!」
「い…いぇッ! お頭…、あ…あいつは…あの有名な『銀光のマーリン』で……ッ!?」
その言葉を言い終える前に、部下の男は巨大な岩の塊のような拳を真上から叩きつけられ、ぺしゃんこになった。
「ふん…ようやくボスのお出ましか…。下がっていろ、シルフ……!」
カチカチとスカウターを操作し、マーリンが『敵』の戦闘力を測る。今の彼女にとって、もはやそれは大した意味など持たない行為ではあったが、染み付いた習慣はなかなか抜けるものではない。そして、一瞬だけ険しい表情を浮かべたものの、すぐにそれは消えていつも通りの余裕の笑みが浮かぶ。
「…シルフ…、ヤムチャに…父さんに会いたいか…?」
こんな時に急に何を言い出すのかと、びっくりした表情のシルフだったが、答えは決まっている。会いたい、はっきりとそう叫ぶ。
「なら…強くなるんだ。こいつよりも……わたしよりも! その日がいつ来てもいいように…あの人の子供である事に恥じないようにな……!」
ヴォウッッッ!!!
「……次の予定もあるんでな…。悪いが一瞬で終わらせてもらう…。海! 皇!! 拳ーーーーーッッ!!!」
~Saiyan Killer~ 完
ちなみにですが、シルフの名前は海の「SEA」と狼の「WOLF」からです。
悟空との決戦の最後で、悟空が感じた『か弱い気』の正体がシルフです。
くぅ~疲れましたw これにて完結です!
実は、例のコロナ騒ぎで自分にも何かできることはないかなと考えたのが始まりでした
本当はここまで加筆するつもりはなかったのですが←
仕事も暇だし、どうせならやれるだけやってみようと思ってリメイクした所存ですw
以下、悟空達のみんなへのメッセジをどぞ
悟空「みんな、見てくれてありがとな!
ちょっと腹黒なところも見えちゃったけど・・・気にすんな! ぶっ殺すぞ!」
ヤムチャ「いやーありがと!
俺のカッコよさは二十分に伝わったかな?」
ベジータ「見てくれたのは嬉しいがちょっと恥ずかしいな・・・」
ピッコロ「見てくれありがと…などと言うとでも思ったか!
しかし作中で言ったオレの気持ちは本当だ!」
マーリン「・・・ありがとう」ファサ
では、
悟空、ヤムチャ、ベジータ、ピッコロ、マーリン、俺「皆さんありがとうございました!」
終
悟空、ヤムチャ、ベジータ、ピッコロ、マーリン、「って、なんで俺くんが!?
改めまして、ありがとうございました!」
本当の本当に終わり