「……っく!! ご、悟空ッ! マーリン…ッッ!!」
「爆心地」から大きく離れた場所にいたヤムチャのところにも、熱波を伴った爆風……マーリンの放った技の余波が届いた。
いかに悟空といえども、素のままで受ければタダでは済まない。それほどの威力だった。そして完全にマーリンの実力を見切っていた悟空は、界王拳すら使っていなかったのだ。
余波からでも察せざるをえない威力に、かすかにヤムチャの顔色が変わる。
一方で「爆心地」では、フィールド形成と技の発動の余波の高熱で、周囲の砂がガラス化し、それが風に舞う砂塵の中に浮かび上がり、きらきらと輝いていた。先程まで命を賭けた死闘の舞台だったとは思えない、どこか幻想的な風景である。
そこへ、さあっ…とわずかに強く吹いた風に、それまで砂塵に覆われていた舞台に立つ人影が露わになった。
現れた人影は……ヒジの少し上から腕が無かった。わずかに欠けた月の光の下、どこか呆けたような様子で、長い髪を風と砂に遊ばれながら荒野にたたずんでいる。
異様だが、しかしこれもまるで絵画のような光景だった。
どさり、と不意にその人影が。完全に力を使い果たしたマーリンが地面に崩れ落ちた。もはや立つ事もままならない程に消耗し、その上、両腕は機能していないどころか、ほぼ存在すらしていない有様だった。だがその表情には満足そうな色が浮かんでいる。
…なぜなら。
これで宇宙からすべてのサイヤ人は消えたのだから。
その悲願を達成した今、何も思い残すこともない。
腕の一本や二本など惜しいはずもない。
そう少女は思っていた。
しかし。
「…今のはやばかったかもな。変身するのが遅れてたら、痛いじゃ済まなかったかもしれねぇ」
「………?……」
ふいに聞こえてきた声を、マーリンは幻聴だと思った。じわじわと襲ってきた腕の痛みと、エネルギーを使いすぎたせいか、吐き気すら感じる体調が、ありえない声を聞かせているのだと。
確実に手応えはあった。間違いなく自分の奥義は避けられてはいなかった。
ただ、そう言えば技の発動の瞬間、自分のものではない、金色の光を見た気もする。あれはいったいなんだったのか…?
とりとめのない思考、疑問が、ただでさえ朦朧としているマーリンの頭に浮かんでは消えていく。
「ぐ………っっ……?」
少女がとっさに霞む目に必死で意識を集中し、自分のものではない、別の知らない人間の身体を無理やり操るように、ぎこちなく首を声の聞こえた方に向ける。果たしてそこに居たものは、金色の光に包まれた男だった。
……綺麗だ、と少女はぼんやりと思った。誰なのかは判らないが、さっきまでのサイヤ人ではなさそうだ。サイヤ人は全員黒髪のはず。金髪のサイヤ人など、見たことも聞いた事が無いのだから。
「…さっきの言葉は取り消す。お前は立派な戦士だ。もっと腕を磨いてからまた来い……。…楽しみにしてるぞ」
「………?……??……」
何を言っているのか、マーリンにはよく理解できなかった。さっきまで戦っていたのはサイヤ人で、この男ではないはずなのに。
またしても思考がぐるぐると頭の中を回るが、答えなど見つかるはずもなかった。そうしているうちに、ゆっくりと意識が途切れ始めた。
…それは深い深い闇に、どこまでも落ち込んでいく感覚だった。
……遠くでまた別の声が聞こえたような気がした。自分の名を呼ぶ声が…。
「おいっ!! マーリン! しっかりしろマーリン!! そ、そうだ仙豆!! 仙豆どこだっけ!?」