悪堕ちなえちゃんは諸悪の根源の補佐をするようです   作:日差丸

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初っ端からの大激闘

『さあとうとうこの日がやって参りました! 場所はここコンドルスタジアム! Aグループ最強と名高い二つのチームが、今日激突します!』

 

「総帥。今日の試合、見ててよね」

「無論だ。イナズマジャパンを粉砕してくるがいい」

 

 ベンチに腰掛けている総帥は平常運転だ。いや粉砕って、相変わらず物騒だなぁ。

 でも今回は世宇子の時みたいな寄り道はしない。というかそんな余裕ない。今の円堂君、それくらい強くなってるんだから。

 

 まあなんでもいいや。

 この試合を見てさえいれば、総帥の目は嫌でも覚めるだろう。

 今日ばかりは命令違反させてもらうよ。

 

 主審に呼ばれたので、センターサークルに両チームは二列で向き合いながら並んだ。

 私の位置は先頭から二番目、つまりはキャプテンであるフィディオの隣だ。つまり円堂君からやや斜めの位置でもある。

 

「天空にそびえ立つ塔。決戦には相応しい場所だと思わない?」

「俺はお前らと戦えるならどこだって大歓迎だ!」

 

 ここコンドルスタジアムはコロッセオを意識したような馬鹿みたいに高い塔だ。たぶん八階か九階ぐらいあるんじゃないかな。

 ガルシルドめ、本当に無駄なところだけは金かけるねあのジジイ。

 なんて最初は思ってたけど、今日の試合の場所がここだと聞いてその評価を改めた。

 

 空を見上げる。

 雲が私が全力でジャンプすれば届きそうなほど近い。

 どことなく懐かしい空気だ。

 そう、ここコンドルスタジアムを見てゼウススタジアムを私は連想していた。

 

 だからだろうね。初めてのはずのこの場所を気に入っちゃってるのは。

 

「思い出さない? FFの決勝戦。私はあなたたちに負けたことで諦めないことの大切さを学んだ」

「ああ、お前のあのスッゲェシュートは今でも覚えてるぜ」

「だから今日はそのお返しに……敗北を贈ってあげる」

 

 そう宣言すると、突如突風とともに体中から桃色のオーラが溢れる。

 どうやら感情が高まりすぎてしまったようだ。

 だけど彼はそれを挑発と捉えたのか、彼からも金色のオーラが噴出された。

 

「ビリビリきたぜ! でも俺たちだって日本のみんなの思いを背負ってるんだ。絶対に勝ってやる!」

「なえ、俺は今日お前を倒す。そして影山との因縁を断ち切ってみせる……!」

「マモル、キドウ、今日は手加減なしだ! 最高の試合をしよう!」

 

 言いたいことは言った。

 私たちは互いに握手し合い、それぞれのポジションにつく。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 今日は私とフィディオのツートップだ。

 円堂君を突破するには相当な攻撃力が必要となる。言っちゃ悪いがラファエレでは力不足なのだ。そのことは彼自身も自覚しており、大嫌いな私のために席を譲ってくれた。

 やっぱりこのチームはプロだ。

 全員が勝利のために意識を統一できている。

 大好きだよ、みんな。

 

 ——そして、ホイッスルが鳴った。

 

 フィディオからボールが私に転がされたとたん、煙を巻き上げる勢いで加速する。相手側のフォワードには目もくれない。

 私が目指すのはさんざん世話になった人物——鬼道君のところだ。あとついでに不動も。

 

 ジャパンコートの真ん中で、激しいボールの争奪戦に突入する。

 

「さあ、遊ぼうよ!」

「挨拶代わりのつもりか? 面白い」

「ぶっ潰してやるよ!」

 

 たぶんこれは避けられた争いだろうが、私はどうしても一度彼と対峙したかった。

 鬼道君は東京で最も古い友人だ。私たちは昔から競い、お互いを高め合ってきた。いわばもう一人のライバルのようなもの。

 だったらそれを超えたいと思うのは、サッカー選手の性だとは思わない?

 

 不動の激しいタックルが私の肩に当たった。

 っ、相変わらずっ乱暴なやつだ。でもラフプレーならこっちも負けない。腰に力を入れ、逆に弾き返してやる。

 しかしそれに集中してたせいで体勢が少し崩れた。

 そこに、針のように鋭い鬼道君の足が飛んでくる。

 体を強引に捻り、なんとかそれを避けた。

 

「っ、二人とも仲悪いんじゃないのっ? 予想以上にいいコンビじゃん……!」

「へっ、誰がコンビだ!」

「同感だなっ!」

 

 不動のタックルを受け止めながら、鬼道君の蹴りを捌いていく。

 性格は真反対だけど、それゆえにお互いの不足部分を補ってくる。

 でも……これくらい突破できなくちゃエースじゃないんだよ!

 

 不動のタックルを逆サイドに回り込むようにして避け、反撃にタックルをかます。重心が崩れていた彼はそれだけでさらにバランスを崩し、転倒した。

 これで残るは鬼道君。

 不意を突くように足を伸ばしてきたけど……遅い。

 私は彼の頭上を飛び越え、二人を突破してみせた。

 

「ラファエレ!」

 

 すぐさま踵を返してバックパス。

 

スノーエンジェル

 

 その次の瞬間、手前の地面から人間一人を包めそうなほどの氷柱が伸びてきた。

 危ない危ない。もしあのまま進んでたら氷漬けになってたよ。

 

 空気が冷えたことで発生していた霧が晴れ、私をそんな風にしようとした下手人が現れる。

 

「さすがだね、なえちゃん。簡単にボールを取らせてくれない」

 

 そういってニッコリと笑うのは『雪原のプリンス』吹雪士郎。

 まだ私が捨てられる前からの幼馴染である。

 にしても、ずいぶんと腕を上げている。さっきのも空気が冷えているのに気がつかなかったら避けれなかった。

 スノーエンジェル。

 それが世界で身につけた彼のディフェンス技だ。

 

「アンジェロ!」

「ダンテ!」

「ジャンルカ!」

「ラファエレ!」

 

 まるでピンボールのようにパスが次々と繋がっていく。

 彼らは相手を見ずに、ノータイムでパスを回している。だから速い。

 あの特訓のおかげで空間把握能力が上がったからできたことだ。

 

「なえっ!」

 

 ラファエレの高速パスが選手たちの間を縫うように通り過ぎた。

 そのコースは左サイドのゴール前。いい位置だよ!

 すぐに綱海が立ちはだかってくる。

 

「抜かせるかよ! ……って、速ぇっ!?」

「失礼ごめんあそばせっと」

 

 軽く加速して抜かせば、そこはもうゴール前。

 私はシュートを繰り出した。ボールは一瞬ブーメラン状に歪んだあと、矢のように空気を切り裂き、飛んでいく。

 

「やらせないッスよ! ザ・マウンテン!!」

 

 しかし矢の先に巨大な山が出現した。

 成長しているのはシロウだけじゃない。これは壁山の新たな必殺技だ。その大きさと頑丈さはザ・ウォールの比ではない。

 ボールは山にぶつかり、すぐに弾かれてしまった。——その真横へと。

 

「えっ!?」

『おおっ!? トラップミスか!?』

『いえ、違います! 回転がかけられてたんです! そしてその先には……フィディオだ!』

 

 ふっ、これぞチームプレイ。

 シュートを撃たれれば、壁山が体を盾にして止めようとすることは分かりきっていた。だから回転をかけて狙った方向にわざと弾かれるようにしていたのだ。

 フィディオの足元の地面に魔法陣が浮かび上がる。

 

オーディンソードッ!!」

 

 出た。伝家の宝刀オーディンソード。

 その威力はアメリカのユニコーンブーストなんかよりも上だ。今の円堂君じゃ止められるわけ……。

 

イジゲン・ザ・ハンド改!!」

 

 ……うん、なんとなーく予想ついてたよ?

 彼のイジゲン・ザ・ハンドは最後にアメリカ戦のビデオを見た時よりもさらに分厚くなっている。改って言ってるし、進化してしまったのだろう。

 だけどさ!? そういうのって試合中に成長していくものじゃないの!? なんで今までと違って初っ端から進化してるのさ!

 

 フィディオのオーディンソードは案の定、結界を突き破れず、上に逸らされてバーに激突した。跳ね返ったボールを円堂君が回収する。

 

「どーだフィディオ!」

「なに、まだまだ序の口さ。今日の試合はオルフェウスが勝つ!」

 

 円堂君がボールを蹴り上げ、ジャパンの反撃が始まる。

 

「よし、今だ! カテナチオカウンターを試すぞ!」

「お、おうっ!」

 

 みんなは戸惑いながらも、なんとか形になるよう動き出す。

 えーと…… ボールを中心に、フォーメーションを崩さないままみんなで近づき、一瞬で包囲をする……だっけ?

 みんなもそれをやってみようとボールを持っている鬼道君を包囲しようとしてるが……だめだ。隙間ができてるし、タイミングが合ってない。

 

「……? 風丸!」

 

 鬼道君は訝しげな顔をしながらも、パスを出す。

 

風神の舞!」

「うわぁぁぁっ!!」

「マルコ!」

 

 右サイドのマルコが抜かれた。

 風丸はフォワードに繋げようと辺りを見渡す。が……。

 

「パスコースが見つからない……!?」

 

 不幸中の幸いというべきか、カテナチオカウンターをしようと多人数が集まったおかげでディフェンスがガッチガチになっていた。その人数差を利用して豪炎寺君、染岡君、グラン……じゃなくてヒロトを完全にマークをしている。

 

「自慢の足が止まってるよ!」

「がっ、しまった!」

 

 戸惑っている間に後ろに戻り、槍を突き出すような勢いでスライディングをくらわしてやった。

 すぐさまボールをフィディオに渡す。

 

「いくぞナエ!」

「遅れないでよね!」

 

『フィディオ、ナエ、華麗なパス回しだ! 二人だけでグングン中央を突破していく!』

『組んでまだ数試合しか経ってないのに、素晴らしいコンビネーションですね。普段の二人の仲が伺えます』

 

 そこ実況、恥ずかしいこと言うなし!

 っ! と、あっぶないっ! 不動のやつ、私がちょっと動揺したのわかっててでスライディング出したでしょ! ホント嫌なやつだなあいつ!

 

 しかしその甲斐あってペナルティエリアにようやく侵入。

 私は口笛を吹き、回転しながら空中に躍り出る。

 

皇帝ペンギン零式!!」

 

 ペンギンたちと魔法陣を通過し、桃色の閃光を七つ放つ。

 私のシュート力はフィディオよりも上だ。これならたぶん、あの技を突破できる。

 と思ってたら、シュートコース上に変なリーゼントしてる男が飛び出してきた。

 

真空魔!」

「ナイスだ飛鷹! イジゲン・ザ・ハンド改!!」

 

 ゲェッ、シュートブロックだ!

 不良風の男——飛鷹が足を振るうと空間が切り裂かれ、そこに閃光たちが吸い込まれていく。その数秒後に彼の後ろの空間がひび割れて閃光が飛び出すも、その威力は明らかに弱まっていた。

 そんな状態で円堂君を突破できるわけがなく、私の閃光は向きを逸らされてバーに激突した。円堂君が落ちてくるボールをキャッチする。

 

「やっぱり強えや……! 飛鷹がいなかったら止められなかったぜ」

「ウッス。キーパーを支えるのが俺たちの役目っすから」

「これからもドンドンシュートを削ってくッスよ!」

 

 スッススッスうっさいわ!

 それにしても、円堂君前のディフェンス二人が厄介だ。

 この二人はシュートブロックのプロと言ってもいい。壁山は言わずもがな、飛鷹は韓国戦から何回も強力なシュートを削って円堂君を助けてきている。

 片方を引きつけて撃っても、もう片方が対処する。おまけにキーパーは最強クラス。

 鉄壁すぎやしませんかイナズマジャパン。

 

 けどそれはうちだって同じことだ。

 防御寄りのチームなだけあって、今でも完全にフォワードをマークして潰している。得点源になり得そうな皇帝ペンギン3号も、佐久間がフィールドにいないから撃てない。

 

 現にボールは中盤に渡ったが、攻撃の起点がいないせいでひたすらボールを回すだけになっている。

 両者千日手。なら先に突破口を見つけた方が有利になる。

 そしてそれは私——ではなく、彼だった。

 

『ここで吹雪が動き出した! ディフェンスラインからぐんぐん上がっていく!』

『オルフェウス完全に虚を突かれました!』

 

 そっちからきたか!

 シロウは本来フォワードだ。それも豪炎寺君に並ぶほどのキック力を持っている。ディフェンスに置いていたのはこういう時のためか。

 でもそんなの前から知ってたことだ。動揺もなく走り出す。オルフェウスのみんなが置き去りになる中、私一人だけが追いつくことができた。

 彼の道を塞ぐように立つ。

 

「こうして対峙してるとあの雪原の勝負を思い出さない?」

「あれは引き分けだったっけなぁ」

「でもさっきのやり合いをカウントすると、今のところ私が1点リード。そしてここであなたを止めれば、私の勝ちってわけ!」

「なるほど。じゃあなんとしても、また引き分けに持ち込まないとね」

 

 私の足に紫色の炎が宿る。それを振るい、巨大な炎の壁を発生させる。

 

デーモンカットV2!」

 

 紫の炎が視界を覆う。

 手応え……なしっ。

 シロウは壁よりも高くジャンプしていた。

 

オーロラドリブル

「なっ……目が……!」

 

 オーロラが空に浮かんだと思うと、それは目も開けられないほど眩い光を発した。それを直視してしまい、私の視界は白一色に染められてしまう。

 ようやく回復したころには、シロウはもう私の後ろにいた。

 

「やらせるか!」

 

 あっ、バカ!

 迫りくるシロウのプレッシャーに負けて、豪炎寺君をマークしていたアントンが飛び出してしまった。

 そこを二人は見逃さない。鮮やかなワンツーでアントンを避け、ゴール前にたどり着く。

 

 

「ハァァァッ!!」

「オォォォッ!!」

 

 豪炎寺君は炎を。

 シロウは吹雪を。

 それぞれ纏って、二人は走り出す。

 その光景に私は見覚えがある。あれは……アスタリスクヘブンの……。

 

 炎のと氷が交差し、新たなる力が生み出される。

 

クロスファイア!!』

 

 それはまさしく氷炎の螺旋。二匹の蛇のように互いに絡み合うそれは地面を、空気を焦がし、冷やし、突き進んでいく。

 

コロッセオガード改! ぐあぁぁっ!!」

 

 コロッセオの壁もそれには意味をなさず、あっという間に巨大な穴が空く。そして奥にいるブラージを巻き込みながら、氷炎はゴールを抉るように突き刺さった。

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